2019年度  101本目の劇場鑑賞


2005年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したリュック・ダルデンヌとジャン=ピエール・ダルデンヌ兄弟の演出によるベルギー映画。

「イゴールの約束」、「ロゼッタ」、「息子のまなざし」に続く子供を題材にした貧困をテーマにした作品。今回は大人になり切れない青年が主役の青春映画。

子供ができた若いカップルは追いかけっこを楽しむような幼さを持っている。定職を持たず子供を使った窃盗団のリーダーをしている父親のブリュノは安定した生活どころか親の自覚も無い。母親のソフィアはブリュノにまともな仕事に就くよう訴えるが彼は聞く耳を持たない。

ある日ブリュノはソフィアが職業斡旋所の受付を待つ間に自分の子供を売ってしまう。それを知ったソフィアは・・・。

何が悪いことなのかも分からない子供だったブリュノはソフィアの反応から大切なものとは、を学ぶ。

BGMはエンドロールの時も含め全く無し。しかしながらスカスカ感がなく、95分の詰まった作品になっている。

子供の受け渡し方法(プロの人身売買の手法)、品の無い食べ方(決して過剰演技ではない)、紐の解けたスニーカー、細かいところまでもが演出されていてリアリティーが高い。

ダルデンヌ兄弟演出の作品はハリウッドのエンターテインメント作品とは対極的だ。大きな山場が無く、劇的な結末も無い。人生のある時期を切り取った「A day in the life」ならぬ「Sometime in the life」だ。

しかしながらこの作品の静かで期待通りの最後のシーンには大満足。これぞ芸術作品のラストシーン。

起承転結が面白い作品、新しいアイデアいっぱいの作品、映像が美しい、または衝撃的な作品、役者の演技が素晴らしい、または存在だけでも価値のある作品、色々な素晴らしい作品があるがダルデンヌ兄弟の演出による作品はそのどれとも異なる素晴らしさだ。

観る人によって解釈が多様で評価も色々だと思う。


評点・・・★★★★☆  4.5