(sheen 新作)

2019年度  64本目の劇場鑑賞

 
パリを舞台にした青年と少女のヒューマンドラマ。
 
ダヴィッドは自身が住むアパートの管理と公園などの木々を剪定するアルバイトをして暮らしている。近所に住む姉とその娘アマンダとは頻繁に行き来して仲が良い。ある日ダヴィッドの管理するアパートに地方(ボルドーだったかな?)から女性ピアノ教師レナが越してきて好意を持つ。
 
ポスターだけを見て内容を全く知らずに鑑賞したので、少し寂しいが穏やかで皆が幸せに暮らしている状況からどのような展開になるのだろうかと思っていたら突然の悲劇で姉は死に、レナも怪我をしてしまう。
この悲惨な事件は2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件から引用していると思うが爆発や銃撃の場面は無く、事件直後の(警察も未だ到着していない)異様なまでに静かな映像として描いているのが大変印象に残った。ちなみにこの作品の季節は夏。
アマンダを引き取り養育しなければならなくなったダヴィッドは途方に暮れる。

 
ほんの少し落ち着いてから二人は元々予定していたウィンブルドンのテニスマッチを見に行く(母親がチケットを入手していてダヴィッドを含め3人で観る予定だった)。アマンダは応援している選手が負けそうになると、「Elvis has left the building」と言い、母親を思い出して泣き出してしまう。
 
この「Elvis has left the building」は生前の母親からその意味を教わった言い回しだ。
<エルビス・プレスリーのコンサート後、一目でもエルビスを見ようと観客が帰らないので「エルビスは既にこの建物から去っています。」とアナウンスしたことから、ショーは終わり、楽しいことはもう無い、チャンスは無いので諦めよ、等の広い意味で使われるようになった>
 
「Elvis has left the building」の諦めの言葉に対してダヴィッドが「頑張れば未だチャンスは有る」とアマンダを慰めたのは決してテニスマッチに対してだけの言葉ではなかったはずだ。
また、事件後諦めかけていたガールフレンドのレナから未だ脈がありそうな手紙が届いたことも観る側からすると救われる。

 
アマンダの演技が凄すぎ。綺麗な瞳に浮かぶ涙にこちらの涙腺も緩んでしまった。悲しいストーリーの作品だが何故か幸せを感じてしまう。
 
気になった点はアマンダの鼻にシーンよって擦り傷があったり、無かったり。「つながリ」を気にしない大らかさ。また、粒子が少し粗いフィルム感を強調した画質は何で?


評定・・・★★★☆  3.5