突然、40年前にある女の子からかけられた言葉が、脳裏をよぎった。
「ねぇ、〇〇(←自分のこと)。Hちゃん、あんたのことが好きなんだって」
そう言ったのは、中学1~2年の頃に通っていた学習塾の友達、Sちゃんだった。
HちゃんはSちゃんと同じ中学校に通う女の子で、自分とY君を含む4人は、仲良しグループのような関係だった。学習塾が終わるのは21時。帰る方向が同じだったこともあり、塾の後は30分から1時間ほど、4人でおしゃべりをしながら楽しい時間を過ごしていた。
このブログでは、中学時代に酷いいじめに遭っていたことを語っている。だからこそ、彼女たちと語り合う時間は、自分にとってかけがえのないものだった。
中学でのいじめは日増しに酷くなった。殴る、蹴る、金銭を要求する。金など持っていなかったため、暴力はさらに激しくなり、全身の青あざが絶えなかった。ある夜、母親にあざのことを聞かれ、「これね、体育の時間にサッカーをして転んでね。俺、運動音痴だからw」と嘘をついた。その夜は布団をかぶり、声を殺して泣いた。
教科書やノートはカッターで切り裂かれ、文房具もほとんどすべて捨てられた。もはや勉強できる状況ではなかった。心も折れ、自分の殻に閉じこもらなければ自分を保てない日々だった。だからこそ、Y君、Hちゃん、Sちゃんとバカをやっている時間が幸せだった。
「小さな街なのに、こんなにも世界が違うんだな」
そう思ったのも、この頃だった。そんな折、Sちゃんからあの言葉を聞いた。
「Hちゃん、あんたのことが好きなんだって」
女の子に好きだと言われて、嫌だと思うはずがない。けれど当時の自分は、「嬉しい」とか「嫌だ」とか言える状況ではなかった。むしろ「マズい」とさえ思った。
Hちゃんのことは嫌いではなかった。頭が良く、性格も良く、女の子として大好きでもあった。だからこそ、中学でいじめられている自分を知られたくなかったし、気づかれたくもなかった。そのため、自分は何も答えなかった。いや、答えられなかった。
学校ではいじめられっ子で、勉強もできない。弱虫で、泣き虫で、嘘つき。そんな自分なんか、好きになるなよ――そう思った。ほどなくして、学習塾を辞めた。
その後、彼女たちと会うことはなかった。小さな街なのに、今日まで姿を見かけたことすらない。自分が路地裏ばかり歩いてきたから、出会えなかったのだろうか。なぜ今、Sちゃんの言葉を思い出したのか、自分でも分からない。
ただ一つ確かなのは、あの学習塾で出会った3人の友達が、自分にとってかけがえのない存在だったということだ。できることなら、あの夜に帰りたい。