『食戦記 -壱-』と弱肉強食の出版業界 | 一迅社文庫編集部のブログ

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出版業界とは弱肉強食の世界である。それは同じ編集部にあっても言える。たとえばこういうサイトでの新刊宣伝においても、発売日にトップで一番目立つところをとるための闘争があり、後輩の頑張った更新であろうとも全力で叩き潰すのがノベル編集部の流儀。
ということで、SF業界全般で話題の弱肉強食の一冊『食戦記 -壱-』 について、少しだけ。

文明が崩壊した遠い未来、電気ガス水道が失われた世界で脈々と「食文化」を受け継ぐ「食師」の一族と、そこに生まれついた青年の因果の物語。

食と政治・文化の関わりを描いた漫画といえば中期の『美味しんぼ』だが、本作では政治どころか最低限の秩序すら失われた乱世を舞台に、食とは人間性というべきものを維持するためのものであることが描かれていく。
食師の村を襲った兵士たちは虐殺を繰り広げるが、偶然口にした「パスタ」の味に人間性が一時的取り戻した一人の兵士が、かろうじて息のあった若者を密かに逃がすシーンから幕を開けるのも象徴的だ。
たかがパスタの一切れが、一人の若者の命と兵士の心を救う。

そして何と言っても本作のSF性を象徴するのが「かけうどん」だ。
「かけうどん」は現代日本においても貧乏な社会人一年生や学生の心強い食の友だが、本作でもそれは変わらない。「焼く/蒸す」くらいしか食の技のない村に主人公は「かけうどん」の作り方を伝授し去っていく。
「これは、かけうどんというものです」そう言って差し出されたうどんを食べた村人たちの幸せそうな表情は、冒頭の殺気立ち、弱肉強食/やられる前にやれの世界で生きてきた村人たちの殺気立った顔との見事な対比となる。
衣食住足りて人間性が維持されるというのなら、長引く不況の中、現代日本においてもっとも危機に瀕しているのは「食」であろう。

思うように美味しい食事がとれなくて厳しい社会人一年生、学生のかたもたくさんいるであろう。そんなときこそ本作を読んで、「これは、かけうどんというものです」というこのシーンを思い出し、高級料理でなくとも調理された食事の素晴らしさを再認識し、明日の生活に希望を持って生きてもらいたい。

なに唐突に電波飛ばしてるんだと言われそうな更新ですが、いやね、某所用に準備しといたら知らない間に出番をすっ飛ばされまして、どこにも出さないのももったいないやと。
この漫画、もっと評価されてほしいんですよね。まさに奇想天外な作品ですから。

さて、これでH田君の宣伝は一つ下にいって目立たないわけです。ああ、なんという弱肉強食(T澤)