入試の季節も終わりを告げようとしている。
入試の業務は事務の方にはしていただけない部分があるので、教員はほぼ総動員である。

入試当日。
給料を頂いているのでやむなく試験監督に行く。

入試の日になると、ふだんネクタイをしめないような先生たちが礼節を重んじてしめてきたりする。
小生はむしろしめない。ラフなかっこうの方が受験生も緊張が少しはやわらぐであろうと意図した博愛行動である。

ところが、途中の乗り換え駅のホームで、はたと気づいた。
あろうことか、小生の社会の窓が開いているではないか。

ラフすぎる。

行き過ぎた博愛は変態に等しい、といにしえから伝えられている。

暖冬でマフラーだけで出かけてきたのでコートで前部が隠されてもいない。
ホームは電車を待つ人々が適度にちらばっている。適度な分だけ、ビミョーに人々の視線が隠されてないので、むげに下半身のジッパーに触れることもできない。

このまま何食わぬ顔で放置すべきか。とも思ったが、あらぬものが元気よく飛び出してきて警察のご厄介になれば、入試業務にも支障をきたしてしまう。

どうしよう。

そうだ、ほかのものに周囲の注意を向けさせて、そのスキにしめよう。人の心理を利用した巧妙な作戦だ。すばらしい。

結果は……マフラーを頭上に振り回し、さながらサタデーナイトフィーバー(ふるい?)のジョン・トラボルタがジッパーを上げているかのような幻惑的な世界を周囲の人々に繰り広げたとだけ言っておこう。ただし、それによってより注目を浴びたことだけが誤算だった。

しかし、まあ気づいてよかった。このまま試験監督をしていたら、受験生はリラックスするどころか、窓から何が出てくるか気になって集中できなかったかもしれない。

それにしても、「社会の窓」ってことば、いまでも使うのかな。このことばはふだん見えない社会のさまざまなものをえぐり出すという主旨のラジオ番組の名からきたものらしい。ちなみに、なんでもえぐり出せばいいというものではない。

英語でも、

XYZ!

という言い方がある。

Examine Your Zipper (eXamine Your Zipper)!

だ。

「ジッパー確認して!」って、行動指示型の言い方が英語らしい。
「あぶない!」(描写型)と”Watch out!”(行動指示型)という類型が日英語にはある。

「社会の窓あいてるよ」(描写型)とは言っても「社会の窓チェックしろよ」(行動指示型)とは言わないのだ。

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