おしゃれ
「おしゃれってなんだよ」
サトシは圭吾に聞いた。
「なんでまた。」
圭吾はぶっきらぼうに返す。
サトシは、
灰色の背広を羽織っている圭吾をチラリと見た。
圭吾は、使いそうにないチャックが無数についたジーンズを履き、
その裾を茶色のロングブーツの中に入れていた。
「‥よく分かんねえや。」
サトシは公園の脇にある錆びたブランコを眺めて言った。
「サトシ‥あのな、涼子ちゃんっているじゃん。
彼女がジャニーズっていうの?あれのファンなんだよ。
‥平成グループって言ってたかな、まあ、こんな感じだった。」
圭吾は、顔を赤らめ、恥ずかしそうに微笑みながら
真新しいブーツをサトシに自慢してみせた。
その恥じらいを含んだ笑顔をみて、サトシも笑った。
二人の顔に無数の深いしわが刻まれる。
サトシは、老眼鏡の位置を直し、
圭吾は乱れた髪を頭に撫で付けた。
「‥定年は怖いね。」
サトシの問いかけに、
圭吾はただ、垂れ下がった数十本の髪を
禿げ上がった頭に撫で付けるだけだった。