東京電力福島第1原発から半径20キロ圏内にある自治体庁舎の除染作業に陸上自衛隊を派遣する政府方針が、防衛省内で波紋を呼んでいる。
野田佳彦首 相には来年1月から始まる民間業者の作業に先んじて国の機関が取り組む姿勢を示す狙いがあるようだが、本来は国防を担う自衛隊を政治の「道具」「便利屋」 扱いする姿勢が透けてみえるからだ。

政府は、1月から政府直轄の除染事業にあたる民間企業の作業拠点となる自治体庁舎の除染が必要で、専用資機材と専門的知見を有する陸自部隊の派遣が適切と判断した-としている。

庁舎の除染は環境省が要請する福島県の浪江、富岡、楢葉3町が検討され、
側溝にたまった汚泥の除去や放射性物質を洗い流すなどの活動が見込まれる。
放射線 に対応する陸自化学防護隊など300人程度の派遣が想定され、
12月中の2-3週間程度の短期間で活動を完了する予定だ。

 「これは自衛隊でなくても、民間業者でも十分できる内容だ」

陸自幹部は今回の派遣にこう疑問を示す。

一方、一川保夫防衛相は18日の記者会見で「除染事業開始までに拠点場所(の除染)を早急にやるとすれば自衛隊の能力が期待される。
民間には難しい」と強調したが、これも疑問符がつく。

たとえば環境省は当初、町庁舎以外の除染も要請していたのに、
防衛省側との協議であっさりと町役場庁舎だけの除染で決着した。民間との役割区分があいまいで、自衛隊でなければならない理由は分からない。

首相から指示を受けた一川氏はあっさり派遣を了承したが、防衛省幹部によると、渡辺周防衛副大臣は派遣に不満を漏らした。

渡辺氏は、同省幹部が報告した3町役場庁舎付近の放射線量が記載された資料が約4カ月前の7月時点に計測した数値だったこともあり、
環境省の意向を“安請 け合い”したのではないかとしてと怒ったとされる。

防衛省幹部は「自衛隊を“道具”のように扱うことが許せなかったのでは」と推し量る。

不十分な事前調査で安易に自衛隊を使う手法は、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸自派遣でも同様だった。

政権の都合で軽々に自衛隊を使う構図が浮かび上がる。
陸自幹部は「自衛官は行けといわれれば行く。だが、私たちは便利屋ではない」と嘆いた。