『事業戦略(計画)の実現に貢献するIT』 16 経営課題の抽出-KPI その2
事業戦略情報から経営課題を整理するのと並行して、その経営課題の
達成水準(KPI)を定義することが必要であることを昨日指摘しました。
なぜ、達成水準の定義を行うの事が必要かというと、経営課題の項目
だけでは、何に取り組むか(ベクトルの方向)は理解できますが、
それをどの程度まで取り組むのか(ベクトルの長さ)は分かりません。
課題を実現するためには、何に取り組み、その結果どのような成果を
あげるのか、その2点が課題の取組み責任者に明確に伝得る必要が
あります。
では、このKPIを定義するにあたって、留意すべきことはなんでしょうか。
【形式的には・・・・】
第1に
現状:XXX → ?年後XXX の形式で表現します。
戦略の遂行は、まったくゼロの状態からスタートするわけではなく、
現状を前提に将来に向かって取り組みを行います。つまり、経営課題と
して取り上げられている項目にも現状があります。その現状から、
取組みの結果、どれだけの改善を図るのか、その差(ベクトルの長さ)を
定義する必要があります。
第2に、
数字で表すことが可能な指標を選ぶべきです。
単位は、円でも、%でも、秒、日、なんでもOKです。
現状:これぐらい → ?年後だいたいこれぐらい といった目標設定は
ありえません。明確に現在の位置と、目指すべき位置を定義する
必要があり、そのためには、現状、目標を数字で表すことができる
指標を設定する必要があります。
第3に、
測れることが可能な指標を選ぶべきです。
数字で表すことが可能な指標を設定しても、その指標の現在の状態、
将来の状態を測ることができなければ、意味をなしません。
例えば、顧客の視点で、ブランドの強化を経営課題として定義したと
します。この場合、ブランド力を数値で測れる必要があります。自社で
ブランド力を測るための基準を持っているとか、第3者の調査期間などが
定期的にブランド力評価を行っており、その結果を用いるといったことが
可能であれば、KPIとして使用できるかもしれません。しかし、そのよう
なものがなく、一からブランド力を測る指標を作ろうとすると相当困難を
伴います。あるいは、信頼性が確保できず、評価指標として機能しない
可能性があります。経営課題がブランド力の向上なのですから、
それを測る指標としてはブランド力が最適だと思います。ただ、それが
適切に測ることができないのであれば意味が無く、他の測定可能な
代替する指標を用いるべきです。
【内容的には・・・・】
第1に
これがもっとも重要ですが、経営課題の内容にきちんと整合している
ことが大切です。
例えば、顧客の視点において、顧客が満足する商品品質を提供し
続けることを課題として取り上げ、そのKPIとして顧客満足度を
設定したとします。この企業では、継続的に顧客に対して満足度
調査を実施しており、その調査結果から、満足度を数値で把握する
ことが可能だったとします。この場合、経営課題の内容とKPIの
項目は整合性がとれており、かつ測定可能なので問題無いように
見えますが、この顧客満足度の調査内容は商品別の商品品質に
対する満足度を調査しているのでしょうか。それとも、その企業の
商品/サービスに対する全体的な満足度の調査なのでしょうか。
もし、後者であった場合、顧客満足度の結果が明確に数値で
出てきますが、本来経営課題として意図した内容と整合していないと
いうことになります。
第2に
その経営課題の達成目標期間と一致した、達成目標を設定しなけ
ればなりません。
戦略立案時に、検討している戦略のゴールを10年先に設定していたと
します。その戦略実現に複数の経営課題の実現が必要となる場合、
その経営課題の実現期限は、すべて10年先とは限りません。
多くの場合、経営課題には、実現の順序が想定されており、「まずAを
行い、それを前提に次にBを成し遂げる」といったことがイメージされて
います。このため、10年先が達成期日と考えると100までが可能で
あるが、3年先が達成期日と考えると30までが実現可能というような
ことが起こりえます。立案上は、向こう3年で30までと想定して戦略が
組まれているはずですが、この経営課題の達成期間に整合した
KPIの目標値設定になっているか、留意が必要です。
上記のような内容は、ごくごく当たり前のように思えるかもしれません。
しかし、KPI設定の経験の乏しい人が検討を行った場合、上記の
当たり前のことが考慮されていないことが、多々見受けられます。
財務の視点に列挙される経営課題のKPIの設定は、難しくはないと
思いますが、顧客の視点や学習と成長の視点では、KPIとしてどの
ような指標を用いるべきか、悩ましい場合も多々あります。
内部プロセスの視点では、一つの経営課題に対して複数の指標が
想定されることもありますが、戦略上意図する成果を得るために、
どの指標を選択すべきか、頭を悩ます場合も多いでしょう。
KPI設定は、経営課題の言葉尻だけ捉えて検討を行うと、簡単に
設定できてしまいますが、上記のような留意点を踏まえて考えた
場合に、かなり難しい作業になってきます。
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