『事業戦略(計画)の実現に貢献するIT』 2 検討の役割分担
先日のエントリーで、『事業戦略(計画)の実現に貢献するIT』の
検討ステップについて、説明をしました。では、次にこの『事業
戦略(計画)の実現に貢献するIT』の検討を誰が行うのでしょうか。
① 経営者?
② 事業責任者?
③ 事業部門の管理職?
④ 事業部門の各業務担当者?
⑤ 経営企画部門?
⑥ IT部門?
⑦ CIO
基本的には、②や③の方が主体となって事業戦略(計画)の実現策を
検討し、その過程でITへの期待事項を整理、その内容をIT部門へ相談し、
構築すべきIT像をIT部門と事業部門で描き出すというのが、もっとも
一般的でしょう。先日示した作業ステップ毎の役割分担イメージは、
次の通りです。
Step0 事業戦略(計画)の立案 事業部門検討
↓
Step1 事業戦略(計画)の整理 ―
↓
Step2 事業戦略(計画)実現策の検討 事業部門検討
↓
Step3 情報システム要件の立案(概要) 事業部門検討
↓
Step3 情報システム要件の立案(詳細) IT部門検討
↓
Step4 情報システム構成の立案 IT部門検討
↓
Step5 全体推進計画の立案(ITの取組み) IT部門検討
↓
Step5 全体推進計画の立案(すべての取組み) 事業部門検討
この場合のIT部門のスタンスは、いたって受動的です。如何にして
事業戦略(計画)を実現するかは事業部門で検討されており、その結果
事業部門にて「こんなITが必要」という要望が明らかになった場合に
呼ばれるようなイメージです。その呼ばれた後に、事業部門から
出されたリクエストを具体化する作業をIT部門が行います。
一方、もっとIT部門が『事業戦略(計画)の実現に貢献する』という
課題に主体的に取り組む場合はどうでしょう。
事業部門は事業部門で上記の検討を進めているが、それとは別に
IT部門でも事業戦略(計画)の内容を把握し、その実現策を検討し、
その結果を事業部門へ提案するようなイメージになります。
それを上記と同じく役割分担(流れ)を整理すると、次のようになります。
Step0 事業戦略(計画)の立案 事業部門検討
↓
Step1 事業戦略(計画)の整理 IT部門検討
↓
Step2 事業戦略(計画)実現策の検討 IT部門検討
↓
Step3 情報システム要件の立案(概要/リクエスト) IT部門検討
↓
Step3 情報システム要件の立案(詳細) IT部門検討
↓
Step4 情報システム構成の立案 IT部門検討
↓
Step5 全体推進計画の立案(ITの取組み) IT部門検討
↓
StepX IT部門の検討結果を事業部門へ提案、すり合わせ
↓
Step5 全体推進計画の立案(すべての取組み) 事業部門+ IT部門検討
上記について、どちらが優れているとか、どちらが正しいという
ことはありません。事業部門の当件についての取組み状況、
事業部門とIT部門の関係や、人員のスキルなどの状況によって、
どちらの実現方法を取る方が、よい結果を生むかという観点で
決めるべきことです。
事業部門が、事業戦略(計画)の実現に向けて積極的に取組みを
実施しており、またその計画立案、遂行能力が高い、特にITリテ
ラシーも高いような場合は、前者の実施方法を取るべきだと思います。
逆に、事業部門のITリテラシーが低く、戦略(計画)実現策の一つと
してITを積極的に活用するような考え方ができないような場合は、
後者の実施方法を取ることを検討すべきでしょう。
ただ、どちらの場合を取るにせよ、重要なのは、IT部門が完全に
受動的になってしまってはいけないということです。前者の方法を
とる場合であっても、IT部門は、事業部門が提示した情報システム
へのリクエストのみをインプットにすべきではありません。なぜ、
そのようなリクエストが出されたのか、その目的と照らし合わせて
リクエストの内容が妥当なのかどうかに関心を払うべきです。
そのためには、事業部門で行った事業戦略(計画)の内容、および
その実現策の検討内容について確認を行い、その実現に本当に
リクエストされているようなITが必要なのか、有効なのか、要件と
して適切なのかを検証することが必要です。そのためには、
Step1~Step3についても、IT部門で作業、検討、検証ができる
だけの能力、スキルを身につけることが大切になります。
ただし、この場合も、事業部門案、IT部門案のどちらが正しいと
いうことではありません。事業部門側の案は、非IT系の実現方法に
主眼が置かれていることが多く、一方IT部門の案は、ITという手段を
使った解決策の提示に主眼が置かれている場合が多い。その両者を
合わせて議論を重ね、最終的に事業戦略(計画)の実現にもっとも
適切な実現方法を見つけ出すという努力を、事業部門とIT部門が
協力して行う必要がある。その検討の土台に乗るために、IT部門は、
前述したStep1~Step3の検討を自ら行えるという能力、スキルが
必要となります。
まとめとしては、
・事業戦略(計画)の実現のためにどうすべきかの検討の主体は、
事業部門が行う。
・IT部門は、その実現にITがどのような形で貢献できるかという観点で
検討を行う。
・IT部門は、その検討の際には、事業部門からのIT化要望をインプットに
するのではなく、事業戦略(計画)をインプットして検討を行う。
・事業部門の検討と同様の検討をIT部門でも行い、その結果を両者が
すり合わせ、事業戦略(計画)の実現策をまとめる。
・上記を行うために、事業部門とIT部門で共通の検討フレームワークを
用いる。
【補足】
拙書「経営戦略の実効性を高める~情報システム計画の立て方・
活かし方」は、タイトルが情報システム計画となっているので、
IT部門向けのように感じられるかもしれません。
しかし、その記載内容は、事業部門、IT部門双方が、事業戦略(計画)の
実現のために行うべきことを記載しており、対象となる読者は、その
両部門にまたがります。
事業部門の方に対しては、従来から行っている事業戦略(計画)の
実現策の検討の中で、より効果的なITの活用を実現するための
考え方を読み取っていただきたい。
また、IT部門の方へ対しては、ITの範疇を超えて、事業戦略(計画)の
実現に貢献するために、事業戦略(計画)そのものの把握方法と
その実現策について、非IT系の取組みにまで視野を広げ、その上で
ITをどう活用すべきかという観点と、その具体的な検討方法を
読み取っていただきたい。
というのが、私の思いです。
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