『松下電器の経営改革』を読んで
「松下電器の経営改革」 伊丹敬之他編著 有斐閣 を読みました。
松下電器の経営改革 (一橋大学日本企業研究センター研究叢書 2)
【目次】
第1章 中村改革の意義
第2章 雇用構造改革
第3章 事業構造改革
第4章 家電営業改革
第5章 管理会計とバランスシート改革
第6章 IT革新
第7章 テレビ事業に見る中村改革
第8章 利益率に見る中村改革
第9章 不変の経営離縁
第10章 中村邦夫会長インタビュー
第11章 歴史は跳ばない、しかし加速できる
この書籍は、松下電器産業が2000年から2006年にわたって
中村社長の下で行った経営改革について、一橋大学の伊丹
教授を中心にしたチームが、調査、分析を行ったものを
まとめられたものです。
各企業の様々な取り組みについて、ビジネス雑誌などで
紹介されることも多々ありますが、一企業の経営改革について、
340ページにも渡り、記載されている読み物は、非常にまれで
あり、また貴重であると思います。
ボリュームが多いだけではなく、中身も非常に濃いもの
になっています。行われた改革について、ヒヤリングした
結果を書き並べているだけではなく、市場データとの突
合せによるその時々の改革の意味や重みなどの分析を
行ったり、戦略論から改革の意味を読み解いたりと、
非常に示唆にとんだ内容になっています。
読んでいて、特に強く感じたのは、次の3点です。
① 改革の成否に、タイミングが非常に大きな影響を与える。
② 改革の成否に、改革力とでもいうべきインタンジブルズの
蓄積が大きな影響を与える。
③ 組織がよって立つ基準(経営理念)の存在
企業なり、ビジネスの仕組みと言うのは、人が作り、人が
動かしているため、人の考え方や意識を変えることが
できるかどうかが、改革の最大の課題となります。しかし、
実際の改革の取り組み、特にその初期段階においては
改革を推進する立場と、現状を肯定し改革に否定的な立場
(改革される側)に分かれることがほとんどです。
誰しもそうですが、それなりに結果が出ているときは、色々
問題があったとしても、現状を変えることには、否定的に
なりがちです。下手に変更することで、現在得ている結果に
悪影響を与えるのではないかというリスクを感じてしまうのは
自分の日常からもよく理解できることです。改革の規模や
影響の大きさが大きいほど、ある程度危機的な状況に
追い詰められなければ、意識改革も起こりえないということが
あるのかもしれません。
中村改革では、大幅な赤字への転落という危機的な状況が
誰の目にも明らかになったこと、及びそれに対して、経営トップが
この状況から抜け出すには、従来タブーであった人員の削減に
まで含みこむ姿勢を見せることで、社内に危機意識が醸成
されらということがあったそうです。
組織を動かすにあたり、期を見る重要性が、この書籍を読むと
よく分かります。
また、この書籍を読むと短期間にこれだけ多くの改革を並行して
実施していることに驚かされます。それを実際に推進した優秀な
人材が数多く存在したことが、中村改革の成功要因の一つで
あろうと感じます。
しかし、これら人材は中村改革で促成栽培的に育成がなされた
わけではなく、それ以前の何年にもわたって様々な改革の取り
組みがなされており、その過程で育成されてきたと感じます。
改革に必要となるスキルは、通常の業務オペレーションで
必要となるスキルとは異なっています。この改革のスキルを、
過去の取り組みでOJT的に習得する機会があり、結果多くの
潜在的改革人材が社内に育成されていたのではないかと
思われます。
無策に現状に肯定し、その結果業績が危機的な状況にまで
落ち込んだということではなく、業績が悪化する過程においても、
改革の努力がなされていたことが、組織の改革力の醸成を実現し、
いざ改革となったときに大きな貢献を果たしていたのだあと
感じました。
また、
中村社長は、大きな意思決定に際して創業者である松下
幸之助であれば、どのように考えただろうかと、いう視点で
何度も自問自答したことが紹介されています。この創業者
の考え方、行動が整理され、まとめられたものが、松下電気の
経営理念になっており、中村社長は、経営理念と改革の方向性を
一致させるということに、心を砕かれていたことが伺われます。
松下電器にとって、経営理念というのは単なるお題目ではなく
社員一人ひとりから見てもよって立つものなのかもしれません。
言い換えれば、松下が松下であるためには、この経営理念と
経営が一致していなければならないということなのかもしれません。
改革によりそこがずれてしまえば、組織・社員の気持ちがバラ
バラになり、松下の再生はありえないということのようです。
だからこそ、中村社長は、自問自答を繰り返し、経営理念と
改革の方向性を一致させることに苦心されたのだろうと
推察します。
経営理念がこれほど重きを成すということに、正直驚きも
しますが、それを感じさせる面白い逸話が書籍の中で
紹介されています。(内容は、書籍をごらんになってください)
また、本書では、経営とITの関係について、色々示唆にとんだ
内容を多く含んでいます。経営に貢献するITとは、経営に貢献する
ITをいかにして実現するかということを考えるに当たって、非常に
参考になります。
おそらく、私が読み取れているのは、この書籍のごく一部のように
感じます。様々な経験を通して少し成長すれば、3年後、5年後に、
また異なる部分が読み取れるようになるのではないかという感じが
します。何度も、読み返したいと思います。
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