ITマネジメント考察14 -SCNとKPIブレイクダウン-
マネジメントを通じてITの効果を引き出し、「経営に貢献
するIT」を実現するには、マネジメントを行える状況を
作り出す必要があります。
そのためには、
①ITが貢献するべき経営課題を明らかにすること
②その経営課題を実現する施策を明らかにすること
が、必要です。
また、マネジメント=PDCAのポイントは、C(Check)をして、
改善を繰り返すことでP(plan)を実現することにあります。
このP(Plan)とは、上記の①②の経営課題や施策に該当
します。ただし、「何を実現するか」「何を行うか」だけでは
なく、「何を『効果』として実現するか」を具体化することが、
マネジメントを行う上でのP(Plan)としては、重要です。
そして、①における「何を実現するか」をBSC(バランス・
スコアカード)を用いて整理し、各経営課題の実現効果に
ついてKGIとして整理する方法を前述しました。本日は、
②の経営課題を実現する施策についての「何を行うのか」
「何を効果として実現するのか」の整理方法を検討したいと
思います。
昨日の記事で記載したように、この検討には、KPIブレイク
ダウンとSCN(Strategic Capability Network)、シミュレー
ションが有効です。KPIブレイクダウンについては、拙書
「経営戦略の実効性を高める~情報システム計画の立て方・
活かし方」に詳細を記載しております。
一方、SCNは、IBMのワトソン研究所により開発された、
価値(ビジネス戦略上の目的や狙い)を創出するために
必要な企業能力(Capability)と実現手段(Enabler)を洗い出す
ための考え方のことで、当ブログの過去記事(2007年11月07日
Strategic Capability Network )に記載をしています。
検討の手順としては、
SCNを用いて、BSCで整理した経営課題を能力→実現手段に
落とし込みます。具体的にはSCN図の提供価値に、BSCの
経営課題を当てはめます。ここで使用する経営課題は、
BSCの顧客の視点に列挙されている経営課題を中心に
設定します。(必要に応じて、財務の視点、内部プロセスの
視点、成長と学習の視点の経営課題から追記をします)
BSCから転記したSCN図の提供価値を実現するためには、
どのような能力が組織に必要となるかを検討し、その内容を
SCN図の「能力」欄に記載します。その際に、A:価値を実現
するためには、B:能力が必要。そのB:能力を実現するため
には、さらにC:能力、D能力が必要というように、必要となる
能力を詳細化します。
A:価値 必要なときに、商品を手に入れることができる
↓
B:能力 納品リードタイムの短縮
↓
C:能力 精度の高い生産計画
D:能力 製造リードタイムの短縮
E:能力
F:能力
↓
X:実現手段
Y:実現手段
Z:実現手段
SCN図の価値にBSCの顧客の視点の経営課題を当てはめた
場合、能力欄の上位の能力(上記の例であればB:能力に該当)
には、BSCの内部プロセスの視点に列挙されている経営課題
が列挙されることが多いはずです。SCN図では、このBSCの
内部プロセスの視点に列挙された経営課題(能力)を、実現
するための能力の詳細化を行います。この詳細化を進めて
いくと、徐々に能力が詳細化され、その能力を実現するための
方法が明確に見えてくるようになります。その状態にまで、
この詳細化を進めていきます。
また、どのような能力が必要かの詳細化と並行して、経営課題
のKGIについても、詳細化します。この詳細化は、能力の詳細化
とその延長線上にある実現手段まで行います。その詳細化では、
下記の例のように、ITにとらわれず、どうすれば実現可能かを
検討することが可能です。そして、その検討の結果として、
能力が手段にまで詳細化された際に、業務の改善や組織構成、
制度のあり方、必要となる人材像(能力や知識)、そしてITなどの
姿が見えてくることが必要です。
A:価値 必要なときに、商品を手に入れることができる
KGI: 24時間
↓
B:能力 納品リードタイムの短縮
KPI: 3日→24時間
↓
C:能力 精度の高い生産計画 KPI: 欠品率:5%→0%
D:能力 在庫の削減 KPI: 在庫金額:XXX→XXX
E:能力 製造リードタイムの短縮
F:能力 輸送リードタイムの短縮
G:能力
↓
↓
X:実現手段 KPI:
Y:実現手段 KPI:
Z:実現手段 KPI:
詳細化された各能力がKPIで設定された数値を実現できれば、
価値を実現できるというように、あるべき像でよいので、一旦
机上で行います。その上で、シミュレーションを行い、KPIと
KGIの関係について検証を行い、確定を図ります。
作業手順的に検討の進め方を書くと、上記のようになります。
後のマネジメントを有効に機能させるためには、この能力の
詳細化、手段の洗い出しの内容とKPIが適切(達成すれば、
価値(BSC上の経営課題)が実現される)であることが大切
です。特にマネジメントにおいては、KGI/KPIを評価指標に
してPDCAをまわすため、この設定精度が重要になります。
作業手順を示すとだれでも「できそう」と思いがちですが、
SCNもKPIブレイクダウンもシミュレーションも、実は非常に
難しいツールです。SCNにせよ、KPIブレイクダウンにせよ、
考え方を示してはいますが、その設定精度を上げる仕組みを
持っているわけではありません。シミュレーションは、制度を
あげるために有効ですが、難しいのと非常に手間がかかると
いう問題があります。
これらのツールを効率的に、かつ効果を発揮するように的確に
使用するためには、相当な能力が必要です。ここで必要となる
能力とは、熟練した経営者や管理者がもつ事業や組織を
見る目と同じ視点と、有能なコンサルタントが持つ課題実現策の
立案能力の両方をもてるかどうかです。それがないと、往々に
して絵に描いた餅になりがちです。それを回避するためには、
手間はかかりますが、シミュレーションを活用して、設定した
KPIの有効性を確認することが大切です。
その手間が、KGI/KPIの精度を高め、結果マネジメントを機能
させることに繋がります。そして、マネジメントが有効に機能する
ことで、最終の目的である「経営に貢献するIT」の実現が可能に
なります。
つづく
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