IT投資評価の実態調査結果について | インタープレイ コンサルティング 株式会社  Blog

IT投資評価の実態調査結果について

 

昨日に引き続き、経済産業省から発表された「平成18年
情報処理実態調査結果報告書」というレポートから気になる
調査結果を取り上げてみたいと思います。

 
本日は、IT投資評価の実施状況についてです。(資料41ページ)

 
このブログでも以前に取り上げていますが、IT投資評価には
投資前の事前評価と投資後の事後評価があります。それぞれの
実施状況の調査結果を見ると、以下の通りです。

 

 事前評価実施企業割合 87.8%
 事後評価実施企業割合 57.9%

 事後評価を継続的に実施している企業の割合 22.6%

 
事前、事後、それぞれの評価項目については、以下の通り
です。


【事前評価】
費用            77.0%
投資目的         62.2%
必要十分性        56.5%
経営層の理解と承認  51.2%
緊急性          49.4%
定性的効果        45.6%
定量的効果        44.4%
想定されるリスク     33.1%
回収年数         27.0%
特に検討していない   12.2%


【事後評価】
内容の改善              42.0%
定量的効果              34.6%
定性的効果              30.6%
費用                  27.2%
経営層への報告と承認       20.6%
続行の是非              18.0%
想定されるリスク           11.4%
回収年数               9.2%
特に評価・検討を行っていない   42.1%

 

 

また、事後評価の最初の実施時期については、


半年以内      14.5%
1年以内      25.6%
3年以内      6.9%
3年超        1.2%
行っていない    51.8%

 
というような調査結果になっています。

 

この調査結果を見てまず思うことは、事後評価の実施割合が
思ったよりも多いように感じます。ただ、事後評価を継続的に

実施している企業の割合が22.6%ということから見ると、事後

評価の実施企業数の割合として、感覚と合っているように思い

ます。J-SOXへの対応などガバナンス体制の整備が急ピッチで

進んでおり、その一環でIT投資評価を実施する企業が増加して

きているのだと思います。

 

また、投資評価は「やればよい」ということではなく、当たり前

ですが、「何を評価するのか」が大切です。この点については、

調査結果を見る限り、まだまだ改善の余地が多いように感じ

ます。前述した率は、資料の中でグラフとして表示されている

ものを抜き出し、実施割合の高い順に並び替えたものです。

 

事前評価の目的は、IT投資の実施是非の判断が主であるため、
費用対効果の評価が中心になると想定されます。しかし、事前

評価項目の上位5つは、「費用」「投資目的」「必要十分性」「経

営層の理解と承認」「緊急性」となっており、効果については6位

以下になっています。これを見る限り、実現を図る効果を明確に

して費用対効果をベースに投資の是非を評価しているという

よりは、「とにかく必要」「ないと困る」といった非常にあいまいな

表現の中で、投資の実施を経営者に迫っているような印象を

受けます。


このような背景には、IT投資評価を実施するための情報を

整備する人材の不足があるように感じます。


大規模投資を行う場合、実施内容、手順、スケジュール、期待

効果、投資費用などのプロジェクト計画案の立案支援をコン

サルティング会社へ依頼することは少なくありません。事前

段階で効果を明確にするためには、その実施後の状態を達成

水準を含めて具体的にイメージできなければなりません。また、

それは直接的なITの効果だけでなく、ITを活用することで得ら

れるビジネス上の効果が評価の対象となることから、投資後の

ビジネスのイメージを描くことが必要となります。第3者に依頼

することで計画内容の客観性を高めるという目的がありますが、

主には、社内にこのようなプランニングを行うことができる人材が

不足していることが背景にあるように思います。

 

コンサルティング会社に依頼するのは、多くの場合大規模な

投資が想定される場合だけであり、日々発生する多くのIT投資に

ついては社内で行っているはずです。前述したスキルを持った

人材が不足している企業では、客観的に分析・設計した効果では

なく、必要性を経営陣に訴えかけて了承を得るというようなことに

なっている場合が多いのかもしれません。

 

  
一方、事後評価については、大きく別けて3つのタイミングでの

実施があります。


 1 投資実施後プロジェクト完了までの間
 2 プロジェクト完了時
 3 プロジェクト完了後(継続的)

 
「投資実施後プロジェクト完了までの間」の事後評価とは、プロ

ジェクトの途中で実施され、投資を継続すべきかどうかの判断を

行うことが主目的の評価です。「プロジェクト完了時」というのは、

プロジェクト完了後、その実施状況を総括するために実施し、スケ

ジュール/予算の遵守状況、効果の獲得状況などが評価の対象と

なります。「プロジェクト完了後(継続的)」というのは、プロジェクト

完了後一定期間継続的に行う評価のことです。IT投資の効果が

最大化するのはプロジェクト完了直後ではなく、その後ビジネスの

中でIT、業務などについて微調整を継続的に行うことで得られる

ものです。事前評価の効果想定は、通常プロジェクト完了時の
効果というよりは、これら事後の改善を継続して達成できる効果

設定になっていることが多く、投資判断時の期待効果を獲得する

ためには、プロジェクト完了後の継続的な改善とそれによる効果の

獲得状況を評価していくことが大切になります。


調査結果では、事後評価と一くくりになっているために、上記の

どのタイミングでの評価をさしているのかが分かりません。実施

タイミングにより評価の観点が異なるため、評価項目も変わります。

事後評価の評価項目についての調査結果も、どう読めばいいのか

判断に迷うところです。


ただ、事後評価では効果の獲得状況に関心が高いことが読み

取ることができます。しかし、事前評価において「効果」が明確に

定義されていない場合、評価基準がないために、事後で期待

した効果が得られているかどうかを評価することはできません。

事後評価を効果の獲得に重きを置いて実施する場合、事前

評価での効果想定を出すことが必須です。それができていない

企業では、意味のある事後評価ができない、やれる状態にない、

やっても盛り上がらないということになっているのではないで

しょうか。

 

J-SOXなど制度から求められるガバナンス強化のためだけに

形式的にIT投資評価を実施するのではなく、それを通じて

IT投資の効果を最大化させるためには、「ITを活用することで

得られるビジネス上の効果」を如何に明確にし、その実現をマネ

ジメントしていくかが重要となります。

これは簡単なことではないのですが、IT投資額が非常に大きな

支出となり、また「ITの戦略的活用」や「経営に貢献するIT」への

関心が高まっている今日においては、取り組むべき今的課題で

あることには間違いはありません。




つづく




昨日に引き続きになりますが
実現イメージについては、拙書「経営戦略の実効性を高める 

情報システム計画の立て方・活かし方」を参照ください。

また、IT投資評価の実施を含む、IT投資マネジメントの体制

整備に関するコンサルティングについてのお問合せは、

インタープレイコンサルティング株式会社(info@ipbc.co.jp )まで

お願いいたします。



このブログの TOPへ


********************************************************

当ブログは、インタープレイコンサルティング株式会社柴崎知己が

主催する「経営に貢献するITのあり方」や「ITの戦略的活用」に関して

検討するブログです。


【過去記事の一覧はこちら】 

当ブログのメインテーマである「経営に貢献するITのあり方」や

「ITの戦略的活用」に関する記事の一覧は、以下を参照ください。

ITの戦略的活用についての検討の軌跡 (掲載記事一覧)

 

日々思うこと、旅行記、グッズ紹介など、その他の記事の一覧は、

以下を参照ください。

その他記事 掲載記事一覧

  

********************************************************

 

当ブログの主テーマである「経営に貢献するITのあり方」や「ITの

戦略的活用」の実現方法について記載した書籍の紹介ページは

こちら 。(目次を全文掲載しています)
 

  

********************************************************

Copyright(C) 2007 Tomomi Shibasaki. All Rights Reserved.