経済産業省 平成18年情報処理実態調査を読んで | インタープレイ コンサルティング 株式会社  Blog

経済産業省 平成18年情報処理実態調査を読んで

 

昨日の11月13日に経済産業省から「平成18年情報処理実態
調査結果報告書」というレポートが発表されました。


資料によると、この調査は、「コンピュータを利用している企業等の
情報処理の現状を的確に把握し、情報処理・情報産業振興施策の
拡充をするための基礎資料を得ることを目的としている」とのこと。
特徴的なのは、「ITの全体最適化」という観点を非常に重要視して
おり、CIO やIT 投資評価、情報システムの活用状況が、ITの全体
最適化の実現にどのような影響を与えているかを統計的に明らかに
しようとしています。

 

主な調査項目は、以下の通りです。

 

(01) 情報処理関係支出の状況及び今後の見通し
(02) 業務別情報システムの取組状況
(03) ソフトウェア資産の状況
(04) 情報処理要員の状況
(05) インターネットの接続手段とモバイル端末の利用状況
(06) EC の状況
(07) 電子タグの取組状況
(08) IC カードの導入状況
(09) 情報システムの活用状況
(10) IT 投資効果の状況
(11) 組織と権限
(12) 情報セキュリティの状況

 
資料は、経済産業省のWEBサイトからダウンロードが可能ですので
詳細は資料を参照ください。
URL: http://www.meti.go.jp/press/20071113001/20071113001.html


ざっと見たところ、色々興味深い調査結果も出ているため、いくつか
取り上げてみてみたいと思います。本日は、経営戦略とIT戦略の

状況についてです。(資料39ページ)

 

 

「企業が経営戦略にIT 戦略を結びつけているかどうか」「IT戦略の
策定と全体最適化の関係」などについて調査がなされています。

 

まず、そもそもITビジョン(IT が自社の経営にもたらす変革と価値
に関する明確なビジョン)が策定されているかどうかが調査されて
おり、何らかの組織単位でITビジョンを策定しているのは、61.8%に
上っています。ただし、企業グループなど企業体全体を対象に
ITビジョンが策定されているのは、34.9%にとどまっています。

 

企業グループ全体で有している 22.4%
企業単体で有している(企業グループが存在しない)  12.5%
企業単体で有している(企業グループが存在する) 26.9%
有していない 38.3%

 

  
一方、策定したIT戦略の周知状況については、以下のような
調査結果になっています。

 

経営戦略に盛り込まれている 22.1%
関係者への周知を行っている 35.9%
関係者との共有化は図れていない 38.1%
特に必要とは考えていない 3.9%

 


また、IT戦略の策定状況と全体最適化の関係の調査結果を
見ると、「IT 戦略ビジョン策定企業や企業グループや企業

全体のIT 戦略ビジョンを有する企業、関係者へIT 戦略の

周知を行っている企業、経営戦略にIT 戦略が盛り込まれて

いる企業の方が、それ以外の企業よりも「十分に実現できて

いる」と回答した企業の割合が高い」という調査結果が出て

います。

 

この調査結果から見えてくるのは、この調査におけるITビジョン
(IT が自社の経営にもたらす変革と価値に関する明確なビジ

ョン)というものが、多くの企業で経営戦略の一部になっていな

いという現実です。ITビジョン、IT戦略というものが策定されて

いるが、経営戦略の一部になっていないというのは、ITビジョンや

IT戦略と呼ばれているものが、戦略ではなく、IT部門の部内目標

的な位置づけに留まっているということではないでしょうか。

 

基本的にIT部門も社内の一組織であるわけなので、そもそもで
いえば事業戦略と別ではありえないはずですが、ことITに限って
いうと、長らく別物扱いがなされてきた感があります。


事業側で事業戦略(計画)が検討され、そこから必要なITが要望と

して導き出され、それをIT部門へ伝え、取りまとめられたものが
IT戦略(計画)と呼ばれている企業も多いように感じます。

 

事業側でITに対する要望事項を検討している部分で、事業と

ITの関連は一部取れているとも言えます。しかし、その要望の

抽出が、事業戦略から導き出されたものではなく、業務上の

要望から抽出されている場合などは、それをいくら取りまとめ

ても、その計画に戦略性はありません。

 

また、各事業から提出された要望を単に取りまとめただけでは、
全体最適にはなりません。全体最適には、戦略から企業・企業
グループ全体の将来を見据え、何をどのレベルで実現を図るの

かの調整が必要ですが、部門単位の要望の収集からは、この

将来像を読み取ることはできません。

 

ITビジョン(戦略)と社内で呼ばれているものが、上記のような

ものである場合、IT戦略と呼ばれているが、実は戦略とは社内で

見なされていないという状況にあるのではないでしょうか。

 

 

立案したIT戦略が戦略として機能していない場合、それは戦略や

計画の立て方に問題があるが多いものです。以前の業務効率化の

手段としか見られていなかった時の戦略や計画立案の方法で策定

しても、前述したように、そこに戦略性は生まれません。

 

現在ITの戦略的活用や、経営に貢献するITという側面が期待さ

れていますが、その実現のためには、それに応じた戦略・計画の

立案方法を取る必要があります。ここでいう、戦略・計画というのは、

ITだけに留まるものではなく、事業戦略や事業計画とIT戦略が

一体化したものです。(こららの計画策定の具体的イメージは、

拙書で詳細に記載していますし、このブログでも何度も取り上げて

いるため記載はしません。興味の在る方は、拙書「経営戦略の

実効性を高める 情報システム計画の立て方・活かし方」を参照

してください。)

 

社内では、従来のやり方、考え方が当たり前になっているはず

です。ITの視点から、経営に貢献するITやITの戦略的活用、

あるいは全体最適を実現するために、事業戦略や計画の立て方

から変えることは、非常にハードルが高いものです。戦略と

いいつつ戦略性を付与できないIT戦略のもどかしさ、それを

打破するためのハードルの高さ、そこからくるIT部門の閉塞感

などが、なんとなく感じられる調査結果のように思います。

 

 

つづく


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