「ITの戦略的活用」におけるEAの位置づけについて
エンタープライズ・アーキテクチャー(EA)とは、直訳すると「企業構造」で
すが、事業を行う上での最適な構造を実現するための設計手法と設計
図のことです。EAが注目を集めるようになった背景には、ITに対する問
題認識、不満が大きくなっていることが上げれます。
例えば、
①システムは硬直的で、事業変化に迅速に追随できない。
②システムが複雑化しており、ちょっとした変更にも多大な費用が
かかる。
③事業上必要な情報をシステムから得ようとしても、その情報が
あるはずなのに見ることができない。 等々
これら多くの不満や問題認識は、次のようなITのしくみに原因が
あります。
・業務最適で構築された情報システム
・アプリケーション毎で異なるデータ体系
・多種多様なITインフラ 等々
歴史的に見ると多くの企業で、ITは現場主導で構築、活用されて
きました。現場での業務要件を整理し、それをシステム化する業務
単位の情報システム化が中心でした。さらにEUCなど一定の設計・
開発を利用部門へ移管する、現場のITオーナー意識を持ってもらう
ためのITリーダーの任命や費用負担を求めるなど、様々な活動を
通じて現場主導の方向性を強化してきました。
この現場主導の考え方は、ITによる業務の効率化、利用の促進など
一定の効果がありました。しかし、ITの利用範囲が拡大し事業におけ
る重要性が以前にまして高まっている現状において、上記の①~③の
ような負の側面の方が大きくなってきています。ITの事業に対する
重要性が高まるにつれ、より事業(ビジネス)視点でのITの貢献の
あり方が必要とされるようになってきています。
EAは、このような個別業務志向的なITから、事業(ビジネス)志向の
ITへの変革を行うための手法です。事業で活用するデータ、アプリ
ケーション、インフラなどIT資産を事業(ビジネス)単位で全体最適化
することを目的としています。これを実現するためにEAでは、この
構造を「ビジネスアーキテクチャ」「データアーキテクチャ」「アプリ
ケーションアーキテクチャ」「テクノロジーアーキテクチャ」の4つの
階層で明らかにします。この4つの階層について、現状(現行EA)と
あるべき姿(将来EA)を描き、現状をあるべき姿へ改善していくことに
より、事業上望まれる最適なビジネス環境を作り出そうというものです。
このような背景から考えるとEAにおいてもっとも重要なのは、事業
戦略から最適な「ビジネスアーキテクチャ」を設計し、それに基づいて
他の3つのレイヤである「データアーキテクチャ」「アプリケーション
アーキテクチャ」「テクノロジーアーキテクチャ」を描き出すことに
あると思います。
この事業戦略から「ビジネスアーキテクチャ」さらに「データアーキ
テクチャ」「アプリケーションアーキテクチャ」「テクノロジーアーキ
テクチャ」をいかにして描き出すかということについては、EA設計の
基本方針に該当する各種参照モデルに沿って検討を進めます。
その参照モデルの中にBRM(Business Reference Model)があり、
事業における達成目標が定義されています。「この達成目標を実現
するためには」という視点にたって、「ビジネスアーキテクチャ」さらに
「データアーキテクチャ」「アプリケーションアーキテクチャ」「テクノ
ロジーアーキテクチャ」の設計を行います。
EAでは、「ビジネスアーキテクチャ」「データアーキテクチャ」「アプリ
ケーションアーキテクチャ」「テクノロジーアーキテクチャ」など設計
すべき内容は非常に詳細に定義されているように感じますが、その
設計をどのような観点に基づいて行うのかという点については、概念
的で具体性に欠けるように感じます。特にBRMの策定と各アーキテ
クチャーの落とし込みの部分について、そのことを顕著に感じます。
一方、拙書「経営戦略の実効性を高める 情報システム計画の立て
方・活かし方」で記載している手法の目的や内容は、非常にEAに似
ています。ただし、拙書で中心的に論じているのが、事業戦略から
IT計画の立案と言う範囲で、EAに当てはめると「BRMの策定」→
「ビジネスアーキテクチャ」→「アプリケーションアーキテクチャ」の
範囲に該当します。「データアーキテクチャ」「テクノロジーアーキテ
クチャ」に該当する部分は、ほとんど考慮がされていません。この
意味では、EAと拙書は補完関係にあり、EAの中で具体的な作業・
検討イメージが分かりにくい「BRMの策定」→「ビジネスアーキテク
チャ」部分の解説書として拙書を使用いただくのもよいかもしれま
せん。
EAというのは、非常に良い考え方であると思います。ビジネスから
IT資産のまで一つの体系の中で検討することで、ビジネスに本当に
寄与する情報システムを実現するという考え方は、「ITの戦略的活
用」と同じであり激しく同意します。
EAが検討対象とするこの幅広い検討領域について、1人で作業を
行うことは不可能で、分業が必要です。経営層、マネジメント層、
業務担当者、IT担当者、コンサルタント、Sierなどが、「ビジネス視
点でITの活用体制の全体最適化」という目的のために役割を果た
すことが必要です。しかし、どうすればそれが実現でき、だれが
どのような役割を果たすべきかということが明確にならないと、役割
分担をすることもできませんし、そのような取り組みを始めることも
できません。EAは、この実現に向けての全体像を明らかにし、具
体的に何を決めるべきかということについて明らかにしていることが、
最大のすぐれた点ではないでしょうか。その意味で、「ITの戦略的
活用」を実現するための包括的な方法論として位置づけられるの
ではないでしょうか。
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