「ITの戦略的活用」におけるVal ITの位置づけ
企業は事業運営において種々のIT資産に投資し活用していま
すが、その投資が事業上の価値を生んでいる場合もある一方、
逆の場合もあります。ガートナーの調査では、全IT投資の中の
20%が無駄になっており、その額は全世界で年間6000億ドルに
達するという結果が出ているそうです。つまり、IT投資は、やり方
によっては大きな効果を生み出す一方、不適切な方法では逆に
大きな損失を企業にもたらしかねないということです。
COBITは、適切なITガバナンスの体制を整えることで、状況と投
資内容、それに伴うリスクなどを把握し、適切な意思決定、つまり
「IT投資の効果を獲得できる」体制作りを支援することが目的です。
Val ITは、日本語版の資料では「IT投資の企業価値ガバナンス」
というタイトルになっています。つまり、COBITが対象とするITガバ
ナンスの中で、「価値の提供」部分を強化するためのガバナンス
フレームワークであると位置づけられます。
COBITとVal ITは目的は同じですが、ガバナンスの視点が異なって
います。COBITは実行(方法は正しいかどうか、それらはうまく運用
されているかどうか?)に重点をおいていますが、Val ITは、投資の
決定(決定は正しいかどうか?)と利益の実現(利益を得ているか
どうか?)に重点を置いています。
Val ITでは、ITの投資効果の獲得のためには、「価値ガバナンス」
「ポートフォリオ管理」「投資管理」の3つのプラクティスが重要であ
るとしています。それぞれのプラクティスはさらに詳細化され、合計
40のプラクティスが定義されています。
価値ガバナンス
VG1 情報を与えられ、積極的に参加するリーダーを確保する
VG2 プロセスを定義し実施する
VG3 役割と実行責任を定義する
VG4 適切で承認された説明責任を確保する
VG5 情報の要件を定義する
VG6 報告の要件を確立する
VG7 組織の構成を確立する
VG8 戦略の方向性を確立する
VG9 投資のカテゴリーを定義する
VG10 目標とするポートフォリオの構成を決定する
VG11 カテゴリーごとに評価基準を定義する
ポートフォリオ管理
PM1 人的資源の目録を維持する
PM2 資源の要件を特定する
PM3 ギャップ分析を行う
PM4 リソース割り当て計画を作成する
PM5 資源の要件と使用状況をモニタリングする
PM6 投資の閾値を確立する
PM7 初期プログラムのコンセプトビジネス・ケースを評価する
PM8 プログラムビジネス・ケースを評価し相対的スコアをつける
PM9 ポートフォリオ的視点全体を作成する
PM10 投資決定を下し、それを伝達する
PM11 選択したプログラムをステージゲート(及び資金を調達)する
PM12 ポートフォリオの成果を最大化する
PM13 ポートフォリオの優先順位を見直す
PM14 ポートフォリオの成果をモニタリング及び報告する
投資管理
IM1 投資機会について、上層による定義を開発する
IM2 当初プログラムのコンセプトビジネス・ケースを開発する
IM3 候補となる投資プログラムをより明確に理解する
IM4 代替分析を行う
IM5 プログラム計画を策定する
IM6 利益実現計画を策定する
IM7 ライフサイクル全体のコストと利益を算定する
IM8 詳細なプログラムビジネス・ケースを作成する
IM9 明確な説明責任と所有権の割り当てを行う
IM10 プログラムを着想し、計画し、立ち上げる
IM11 プログラムを管理する
IM12 利益を管理/追跡する
IM13 ビジネス・ケースを更新する
IM14 プログラムの成果をモニタリング及び報告する
IM15 プログラムを終了する
Val ITの原則、プロセスを適用すれば、次のことが実現されると
資料(後述)には記載されています。
・ コスト、リスク及び利益の理解と透明性の向上による、より充実
した情報にもとづく経営者側の決定
・最大の収益を生み出す可能性のある投資を選択する確率の向上
・選択した投資の期待通りの実現、あるいは期待を上回るような、
成功の可能性の向上
・実行すべきでないことの中止、あるいは期待された可能性に
到達することのない投資への是正措置あるいは終了による
コストの削減
・失敗(特に影響の大きい失敗)を犯すリスクの減少
・IT 関連のコストと(価値の)提供に関する予期できない事態の
削減による事業価値の増大、不要コストの削減及びIT への
全体的な信頼度の向上
COBITもVal ITもそうですが、整備すべきプラクティクスや管理の
観点はフレームワークの中で提示されています。しかし、個々の
プラクティスについてどのようにすればよいのかについては、明
確に記載されていません。
例えば、Val ITの「VG8 戦略の方向性を確立する」ついてでは、
「情報化投資にかける支出は事業方針と整合していると理解さ
れていることか確認する。このような方針にはビジネスの展望、
ビジネスの原則、戦略的達成目標と目的、優先順位などが含
まれる。ビジネス戦略にIT が与えうる影響や、企業内でのITの
役割について、企業とIT 機能の間で明確な合意による理解の
一致があり、それが広い範囲に伝達されていることを確認する」
と記載されています。
Val ITを導入するというのは、上記の記載事項を具体化すること
です。どのような資料を作成し、それをどのような手段・場を通
じて説明、確認を行い、その結果を、誰に対して情報を回付する
のか、など一つ一つ決めて実行することが必要です。
このように観点のみを提示し具体的実現方法は検討しなけ
ればならないというのは、企業毎に状況が異なることを考えると
現実的な方法だと思います。しかしその反面、資料を読んで
すぐさま具体的イメージが理解しづらいという状況も生んでいる
と思います。
「ITの戦略的活用」とVal ITの関連については、Val ITがCOBITの
一部を補完するものであると考えると、同様にITプロセス(特に
投資意思決定)や組織のあり方を示す考え方として捉えることが
可能です。
参考資料
IT投資の企業フレームワーク Val ITフレームワーク
IT Governance Institute
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