キヨトがクロスバイクに乗って店の中まで入ってきた。
立ったまま赤のベルモットを飲んでいたハンチング帽子の男
その「連れ」であるシェパードが驚いて立ち上がった。
男がなだめると再び「伏せ」の体勢のように寝転んだ。
そのシェパードに小さな声で謝り、サドルから降りたキヨトは
カウンターに寄りかかり、黒ビールを注文した。
「せわしい奴だな」
カウンター向こうのジョルジュが、
ジョッキから泡を溢れさせながらキヨトの前に置いた。
先にラガービールを飲んでいた俺は、おもむろに
そのジョッキを取り上げ、半分になった自分のジョッキに、
泡ごと注ぎ入れた。
「これでハーフアンドハーフだ」
そう言って、6分目ほどになった黒ビールを、
キヨトの前の、泡の上に置いた。
「ジョルジュ、ボクにも足してくれ」
キヨトが自分の黒ビールをふた口ほど飲んでから
今度はその上にラガービールを足してもらう。
シェパード連れの男は、グラスの中身を飲み干し、
俺達の様子を見て、笑いながらコインを置いた。
そして俺達に「チャオ」と片手を上げて出て行った。
「2杯目はオレのおごりだ」
ジョルジュは淡いピンク色のカクテルを、3つ、カウンターに置いた。
朝からスモークチーズ用の薪を、
キヨトと2人でジョルジュの家から店の裏まで運んでやった
その駄賃というところか
「シーブリーズってカクテルだ、今の季節が一番いい」
そう言って、カウンターの奥の小窓を開けた。
そこからは、鱗のように夕陽を反射させる地中海と、
斜面に並ぶ白い家並みが見える。
小窓から、かすかな潮の香りを含んだ風が、3人の前を通り過ぎ、
店の開け放たれた入り口から、表の通りに抜けて行く。
ふと、棚に置かれた、エキストラバージンの小ビンが目にとまり、
オリーブオイルで炒めた薄味のシーフード料理を無性に食べたくなった。
ジョルジュはシーフード料理が得意なのに、
店のフードメニューはピザとスモークチーズだけなのだ。
俺と眼が合ったキヨトが
「ジョルジュ、ムール貝とイカを買って来るから、何か作ってくれ」
そう言って、マウンテンバイクの向きを変えて、表に出て行った。
店の前からは、港まで下る坂道沿いに、市場が続いている。
written by Poyoman
名前のごとく海に吹く風、と言う意味のカクテル。
海が目の前にあるテラスに、デッキチェアでも出して飲んでみたい。
【シーブリーズ】Sea Breeze
ウォッカ … 30ml
グレープフルーツジュース … 30ml
グランベリージュース … 30ml
1、 大きめのグラスに氷を入れウォッカを注ぐ
2、 グレープフルーツジュース、グランベリージュースを注ぎ軽くステアする。
以前、某サイトに特集で掲載していたものを再編集して掲載してみました。
続きます。
これを長編に編集するか、このままショート集としてか・・・未定
元来、仕事用原稿UPの目的としてこのブログを作って、
ブログは他にも いくつか作ってるけど、このブログは
バーカウンター仕様なので( ̄ー ̄)
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