「武士の起源を解きあかす
ー混血する古代、
創発される中世」
桃崎有一郎 箸
ちくま新書 2018年刊
こんばんは~
今日は上記を紹介。
以前にも記事にした↓この本。
読み終わるのに、3週間以上かかりました💦
記事にするのにさらに2週間
手にしない日が続いてしまったり、読みながらウトウトしたりで
記事に出来るほど読み込めているか心配ですが。
なんとか書いていきたいと思います
さて、
前回も書きましたが、
著者は古代・中世の
「礼制・法制」の専門家。
自分の研究に支障があるから!と
諸説あるなか
武士の起源が果たして京(都)にあるのか、地方にあるのか、
はっきりさせたくて書き始められたのが本書なのですが。
結論から書くと~
”武士は京を父とし、地方を母とするハイブリッド“だった~
古くからの説、
「武士は草深い地方社会から生まれた」というのは、部分的には正しいそう。
けれど、著者いわく、
その草深い地方社会で生まれた武人たちは、京で武士としてラベリングされなければ、
決して中世の武士とはなり得なかった、といいます。
増えに増えた「王臣家」&「王臣子孫」が地方に下り、
「郡司豪族層」と結合し、
苛烈な開墾競争・荘園収奪闘争を繰り返すことで、
無法地帯と化した地方は、
群盗争乱の時代に突入します。
もともと
京における「王臣家」も
地方に下った「王臣子孫」も
富裕豪農を含んだ「郡司豪族層」も、
特権階級の義務としての
「有閑弓騎」の要素は持っていて。
奈良朝の頃でも全国から広く、騎射する武人たちが集められています。
初期の平安朝において、武人たちは蝦夷討伐などで、朝廷の組織の中で活躍するのですか。
律令制の崩壊とともに
時代はやがて
前述のとおり群盗争乱の時代。
無法地帯と化した地方、特に群盗問題が深刻だった坂東において、
古代からの伝統を維持しながら、
新たなる要素を付け加え、統合し、創発されたのが武士
そこでは婚姻関係が重要な役割を果たしました。
地方の下った「王臣子孫(貴姓)」は、武人要素を内包する伝統的現地豪族「郡司豪族層(卑姓)」と結合。
彼らは争乱の時代において、領地を守るため、あるいは広げるため、
朝廷の制度の外で、個人的に
郎党・一族・門客などを統合して、
「諸家」といわれる
「家」型組織を形成していきました。
この、朝廷の外で派生した地方における新たなる軍閥(平・源・橘・藤など)を、
都周辺で伝統的な武人輩出士族として存続していた軍閥(文室・伴・紀など)とともに、
群盗問題で揺れる京で、
物部氏永の乱を機に、
特に天皇の身辺を守るために
設置されたのが「滝口武士」
滝口武士が設置されたのは宇田朝でした。
菅原道真という希代の儒学者を擁したこの王朝が、礼の精神を浸透させ、律令制を維持しようと、やっきになって地方で傍若無人な振る舞いを止めない「王臣子孫」に、誰も守らない法令(格式)を濫発していたちょうどその頃です。
著者は、文を重んじた宇田朝は、対となる武が、王朝に欠けていることに気付いたのかもしれない、と書いています。
群盗から天皇を守るべく設置された
「滝口」は御所内の場所の名前で。
「令外官」とよばれる、厳密には官でなく「宣旨職」(天皇の命令で置かれる職・太政官を通さない)で。
同じく宣旨職である蔵人頭の配下でした。
地方で勝手に派生した「諸家(王臣子孫)」の兵力は、
滝口武士を通して「摂関家(王臣家)」と再び結びつき、
(両者はもともとひとつ)
制度の外の兵力であるにも関わらず、制度の内で実質的な兵力として、徐々に取り込まれていくようになりました。
乱が起きれば、鎮圧のために動員されたり。
摂関家と私的に主従関係を結んだり。
形骸化して役に立たなかった衛府に官人として入ったり。
(結果的には失敗するけど)
制度の外にあるはずの「諸家」兵力は、やがて都において欠かせない在になっていきます。
そしてやってくる、武士の時代。
兵力を抽出していた地方。
その兵力にラベリングし、取り込もうとした京。
地方で勢力を維持するには、京との結びつき、ラベリングが欠かせませんでした。
(なんせ表向きは律令国家)
「王臣子孫」は「郡司豪族層」がラベリングされるためには有効な存在だったんですね。
結びついた両者は、さらに「諸家」の兵力としてラベリングされ、
乱の鎮圧に動員され、
京での政争に巻き込まれて。
やってくる治承・寿永の乱
たしかにハイブリッドだ
地方と京。
どちらの要素が欠けても、中世の武士の時代はやって来ない。
なので、いちおう今のところ、
この説には共感しております。
おもしろいし
それなりに説得力もある。
専門家の評価、どうか気になりますが。
ハイブリッドなところが今どきです。
古代からずっと
「有閑弓騎」の皇族・貴族・豪族 ・豪農たちは、盛衰しつつも、
他階層と混血しながら、しぶとく生き残り、
地方と京を「都鄙往還」しながら、
マッシュアップとアップデートを繰り返し、
中世の武士として創発された。
ロマンあるな~
初めて知ること、
今ひとつ理解していなかったこと、
たくさん出てきて。
ちょっと解釈として合っているか不安な部分もありますが。
今のわたしに書ける記事はこんなところ
ご参考までに。
長くなりました。
お読みいただき、ありがとうございました。