私は新品のリールを入手する時はなるべく、状態の悪いものを入手する

理由は簡単、そこから様々なことを学ぶからである。しかし

最近のリールはそれほど深刻な状態の悪いものが少ないように思え

元々のプラットフォームがしっかりしていて、そこそこの整備でも

まずまずの仕上がりになる場合も多く、そう言った理由から

昨今はリール整備の業者が増えてきたように思える

 

 

いや、私の初めた時代でも整備業者は居たのは居たが

多くは廃業しているのである、理由は様々に考えられるが

それほど昔のリールは新旧状態の良くないものが多かった

私が整備を初めた頃の95ステラなど、新品であっても

巻きは異常に重くてほとんどのリールがゴロゴロしていた

さらにダイワのトーナメントと言われる、 TD系の前身のリールも

これもステラに劣らずゴロゴロが普通で、TD- Zなど

22ステラやイグジスト真っ青の8万円近くしていたが

エリアやストリームの自営業のエキスパート達はこぞって

トーナメントやTD系を溺愛していた、その理由は

ステラも持ってるんだけど、ステラは水の中のルアーの動きがわからんと言う

TD系は状態が良くない。だけど釣りやすい。これが当たり前の時代だったので

私は毎日毎日ダイワのリール整備依頼が来て、嫌というほど格闘した

当時は実にリールメーカーが乱立していた時代で

国産の他、ABUなど舶来ものと言われるリールは憧れの存在と言われたが

当時の私は手頃な大森製作所のマイコンが気に入っていて

銀山湖や丸沼や加賀フイッシング、そしてバスなどに愛用していたし

重くて使えないABUや高いだけでゴロゴロしていたステラやTDの興味はなかった

 

 

 

来る日も来る日もTD系の整備をしていると、様々な改善策が見出された

まさしく不具合の宝庫は逆に言えば優秀な教材とも言える

誰にも教わることなく、メーカーからも見放されたリールを整備し

絶体絶命のどん底から自力で這い上がることで、多くの知識を得て

それを昨今のリールにも反映させる。これがリール整備の苦しみと思ってやめたら

それで負け、なのでどうにか這い上がって、ついに壁を突き破るが

進んでくとさらに分厚い壁があるのがリール整備なのである

 

 

おそらく昨今の若い整備業者は状態の良いリールを好む傾向にあるようだが

むしろ状態の悪いTD系をみっちりとやり込むことで

そこで経験したことが骨身に染み渡り、血となり肉となり

内外からのプレッシャーやメンタリティにも相当に強くなって

一皮剥けた整備の仕事ができるはずだと断言できる