『風のセールスマン』
[晴れ シアタートラム C列]

別役実さん脚本、柄本明さん一人舞台「風のセールスマン」

バス停の横にベンチがあり
ひょうひょうと舞台上に現れて歌を歌うように話初める。吹いたら飛んでいきそうな調子で。
意味の分からないことを話したり、そんな話を聞きながら客席も笑いに包まれる。そんな風景はまるでお笑いの舞台のよう。
セールスマンは自分のすることすべてを説明せずにはいられない。ベンチに座るも、自分が笑っていることさえも説明する。それは一人芝居だからだろうか?

笑い話のような嘘のような話をしながら笑いに包まれるが、セールスマンはそのなかで不意に意味深な言葉を発する。
それは何でもないように聞こえて、恐ろしい言葉。
セールスマンが話をしていくなかでだんだんとセールスマンの素性が垣間みえてくる。どうやら妻がいるらしい、一人娘もいるらしい、娘は養子らしい、事故で死んだらしい。苦しんだ妻も風呂場で自殺したらしい。首を切りつけたナイフをセールスマンは握りしめ自分が犯人になろうとした。そうすれば、牢屋に入れる、名前を呼んでもらえる。自分がそこにいるんだってことが分かる。セールスマンはこのバス停で警察が来るのを待っているのだ。
けれども警察はこない。

何者にもなれず、住まうこともできずに。
最後ファーストシーンに戻る。「雨も降っていないのに雨傘をさすとゆうのはどういうことか」
その時にこれは繰り返されるのだ、と気づくことになる、これまでの話も嘘なのかもしれない、それほどまでに危うい。

「登るよりも降りる方が難しいんだ。だから登ったら落ちるのがいい。でもそれは怖いから、降りる。降りることは、ゆっくりと落ちることだ。」といった用な台詞がありましたが、恐ろしくもあり、非常に刺さってきました。

気を抜いていると自分の足下まですくわれる。
そんな舞台です。