Sキングの「ゴールデンボーイ」を意識したような、心に漆黒な闇を持つ好青年が実はサコキラーだというお話です。
それがキャスティングの妙で、あえて爽やかな青年である海猿の伊藤英明が生徒から絶大な人気を誇り、職員やPTAの間でも信頼の厚い高校教師を演じます。
そのアンバランスを製作者が狙った訳でしょうし、伊東英明は良くこのオファーを受けたな、とその意味では楽しいキャスティングでした。

人を殺すことに快楽を覚えるようなサイコキラーの教師が、良き先生の仮面を被り、裏で殺人を繰り返します。
やがて、その細工に行きづまり、クラス全員皆殺しを図る訳です。
その殺し方も残虐を極め、伊東演じるハスミン先生は、三文オペラのマッキーの歌の口ずさみながら淡々と殺しを続けるのです。

このへんから映画は、「バトルロアイヤル」を意識した生き残りのバトルロイヤルを意識したような作りのように思えます。
でもしかし、バトルのようなカタルシスはなく虚しさだけが残る後味の悪い映画になりました。
それは、やはり主人公がサイコキラーであり、どこかに理性のある生徒の印象が薄いせいなのかな、というのが僕の印象。

ちなみに「バトルロワイヤル」の小説は僕が読んで、当時の中学生だった息子に勧め、やがてその本が息子のクラスでまた貸しのブームになった事があります。
それが父兄の間でちょっとした問題になったようですが、僕は知らんふりを決め込みました。ハハハ・・・。

最後にブレヒトの三文オペラの主題歌「マッキーの歌」の歌詞を記します。
いやあ、これも凄いね、サイコだわ。


マッキーの哀歌

貪欲な歯を持つ、恐ろしいやつ
サメは殺すよ 容赦なく
ポケットの底にはナイフ
完璧さ、そいつはマッキー

テームズの川のほとり
宵闇に血が流れる
命を落とすやつのポケットは空っぽ
ポケットを膨らませ、誰かが逃げる

ジェニー・トゥロウラーは死に瀕す
ナイフが胸に刺さり
川岸では 濁った水で
マッキー氏が手を洗う

また 若い後家さんを
彼女のベッドで強姦し
すぐさまトンずらする
その紳士、それはマッキー

街なかで火事だ
火が燃えさかる、死がやって来る
みんなは驚く、みんなは尋ねる
ああ だがマッキーの知ったことか

血がアゴを伝い落ちる
でっかいサメのお食事時
手には手袋、白いテーブルクロス
マッキー氏はかぶりつく 次の…に
貪欲な歯を持つ、恐ろしいやつ
サメは殺すよ 容赦なく
ウムムム…そいつはマッキー