ジプシーのフラメンコに華やかな舞台装置はない。
手にはカスタネットも扇子もない、生身の人間だけだ。
幅3m奥行20mの横穴の壁に沿って椅子を並べ、
その狭い通路で、身一つの人間が、明日死があるかも
知れず今を生きている流浪のジプシー哲学を見る、
始まりは、なんとなく始まる。
タカタンタカタンタカタンと手慣らし足慣らし
といった風に。
ちょっと強めてタンタカタン!
3秒の静寂の後、ギターの音色と歌が変わり
始まりより少し長い時間、さらに強さを増した
ステップを踏みタンタカタン!
3秒の静寂の後、起承転結の転の妖艶さを手に
表情にお尻に表し、タンタカタン!
3秒の静寂の後、結に向け登りつめていく、人生の
終盤へ向け、体力の限界を前にしても進むのだ、
力いっぱい大地を踏み生を喜び死者をも起こす。
上って上ってタンタカタン!!
ここで大きな拍手と掛け声だ。
グラナダでのショーは約一時間、たいてい3人が踊りを
見せてくれる、
1時間だけですか?と言う人もいるが、闘牛の20分と同じく
計算されたものでありこれ以上もこれ以下もいらない。
ココの狭い空間では、見る側のウンチクはいらない、とにかく
手が痛くなるくらいの大きな拍手をしてもらいたい。
フラメンコは情熱なので、次に踊る者の心を揺さぶらなくては
いけない、
ちょっと今日の客は見てくれているな、と。
私はもっとあなたの気持ちを掴むわよ、という気持ちに
させるのは客の真剣な眼差しと大きな拍手だ。
真剣に見ていると、
あっ、体力の限界を超えたな、という瞬間を見た時、
エクスタシーってこういう感じなのか、と思った。
ココでのフラメンコはその人の人生であり死生観なので
若くてキレイだから、イケメンだから踊れるというのではなく
、10分間でジプシーの生き様を表現できるか、
それにはそれなりの歳がいる。
夜遅いため、不思議なことにフラメンコを見ながら
寝てしまう方がいる、決まってど真ん中にいる方で、
寝るならば端っこで寝ればいいのに、と思うのだが、
たいてい寝る人はど真ん中。
手拍子、歌、演奏にステップが洞窟に響き渡るその音量は
すさまじいものだ。そんな中良く寝られるものだ、と
思っていたら、
どうやら、理由があるらしい。
ツートントンツートントンのあのリズムは人間の鼓動と
重なり合ってとても心地よいんだ、と。
実際に爆音の中、目を瞑ってみると分かるが心地よい。
それを知って以降、寝ている人を観察したら皆一様に、
タンタカタンつるとんたんタン!
の後の3秒の静寂の際、パッと目を覚まし、
またステップが始まると気持ち良く舟をこぎだす。
きっと音が止まった時、心臓が止まっちゃったと思って
目を覚ますのだろう。
寝てもよい、ただ寝た方はリズムが止んだ時に起きるので
その時はオーーーーレッ!というタイミングで
間違いない。
フラメンコについて、長文失礼しました。
