「鉄塔のそばまで」
そう言ってきみは
靴のかかとを鳴らして走り出した
鴇色の空が
その向こうまで続いている
きみに続く僕は
踊るシュシュを見つめながら
その背中を追いかける
日が長くなって
宵闇にはまだ早い
息を切らしながら
ふたりで堤防沿いを走った
「アオハルだよ」
きみを追い抜きざまにそう言って
鉄塔下までたどり着くと
「モラトリアムとも言うよ」
笑いながらきみが言った
汗ばんだ髪を風が払い
荒い息のままコーラを飲んで
夕陽を浴びながらふたりで笑った