「怖い?何で?」とヤマダは言った。

「何でって、離れてても殺せるんだぜ?お前みたいな奴はすぐ怒らせて、心臓を握りつぶされて終わりだろ?」とヨシュア。

「ああ、そうかあ・・それじゃあ嫌だな、そんな女。やっぱりさー女はいざって時は・・優しくないとなあ。」ヤマダは誰かを思い浮かべている、だから非常にだらけた表情で言った。

 

「これで後は地球軌道に着くのを待つだけかー」小惑星帯を出発し、加速を終えたヨシュア達を乗せたチャンク号。アルテミスにどうやって会うか、なんて考えていないが、地球に近づいたら通信を送れば思い出してくれるだろう。ヨシュアはそんな風に考えていた。とても安易なのだが、まあ、安易がいつも悪いわけではない。しかし今回アルテミス達は木星へ出発した後なのだ。

     

     サバンナ

 

ここはテティスの中の動物園。地球や宇宙植民島の動物園から、病気や老齢の動物達をアルテミスは、ここに連れてきたのだ。足の悪い虎がアルテミスに寄りかかったり、加減してじゃれたりしていた。虎に寄りかかられても、人間だったら出血してしまいそうなくらい噛まれても、アルテミスは全く傷つかない。体表面をある程度の硬さの見えない膜で覆っているのだ。

「ほんとに可愛いわ。」アルテミスにお腹を撫でられへそ天になる虎。

そこへ、羨ましいと思ったのか、年老いた象がゆっくりと歩いてきた。鼻でアルテミスを触る。

多分、自分も構って、そう言っているのだろう。何を望んでいるのかが分かるアルテミスは、虎と一緒に浮き上がり、象の額か、人間で言えば鼻筋のところを優しく撫でた。