いつも当ブログをご覧いただきまして、ありがとうございます。先日来記事にさせていただきました、地域猫活動DIYのお話ですが、ひとつ大切な物を思い出しましたので、それを番外編としてお届けいたします。
皆様、「ディバイダー」という器具をご存じでしょうか。ただ、通常この名前で調べてみると、今の時代ならネットで検索しても、製図用器具の「ディバイダー」つまり、コンパスの両側が針になっているものしか出てこないのが普通だと思います。
ところが、地域猫活動や保護猫活動で言うところのディバイダーは、巨大な食器のフォークの先のような形をしたものです。
こんな感じのものですが、正式なものは獣医師の先生や動物保護団体が所有しているはずで、上の写真は自作のものです。これこそ、なかなか売っていないもので、通常捕獲器をネット通販などで買い求めようと思っても、一緒に販売されているというのを見たことがありません。それほど、専門的で特殊な道具なのかも知れませんが、実は地域猫活動で使いそうな場面があるんです。
捕獲作戦をやったことがある方でしたら、「あるある」という話になりますが、ひとつの捕獲器に親子の猫が入ったり、餌に向かって我先にと、飛びついてきた猫が複数入ってしまうことも珍しくありません。しかし、通常は動物病院で手術を依頼する際に、ひとつの捕獲器に1頭というのがルールだと思います。でも、こうなった場合、どちらかを逃がすわけにもいかず、困ることがありますね。
そんな時、捕獲器の形式によっては、背中合わせに寄せてどちらかを移動させて1頭ずつにすることもできます。しかし、それができない場合にほしくなるのが、このディバイダーです。
最初に紹介した写真のこちらの形のものは、はっきり言って失敗作です。これだと、丈夫さは絶大な面がありますが、すべて市販の部材をほとんどそのまま使ったため、格子の間隔がちょっと広すぎて、しかも微調整ができないこと。また、建築資材の鉄筋を使ったので、デコボコ、ギザギザが引っ掛かって使いにくいことがわかりました。後でデコボコを削って改良するつもりですが、これが結構しんどいです。
市販されている、長さ1メートル、直径6ミリの鉄の棒材です。
さすがにこういう素材は木材と違って、のこぎりではなく、このようなワイヤーカッターを使い、切り口は怪我防止のためサンダーで削ります。
このままでは、ネジが使えないので、ダイスでネジ切りをします。
捕獲器の網目の間隔を調べてから、あらかじめ木材に6ミリの穴を開けておきます。ここで使用した木材は、ローズウッドという、非常に堅い木です。
鉄の棒材をこのように取り付けます。捕獲器は、形式にもよりますが、サイズがほぼ30㎝ぐらいです。1メートルの棒材から33㎝ぐらいの棒材3本が取れて、それにネジ切りをしてあるので、およそ30㎝ぐらいの有効長が使えることになります。
ところで、動物病院に避妊手術で猫を預ける場合、飼い主のいない猫(俗に言う野良猫)の場合、必ず捕獲器に入れて持ち込むように指示されると思います。これは、次に示すような理由があるからです。
本物の猫で説明するわけにはいかないので、ここからは、ぬいぐるみを使って説明いたします。
こんな状態だと、猫は捕獲器の中を好き勝手に動き回ったり暴れたりします。それでは、手術に先立って施す麻酔ができなくなります。
獣医師の先生は、こんな感じでディバイダーを巧みに使って、猫を捕獲器の隅の所まで一時的に追い込み、身動きが取れないようにして、危険のない場所に麻酔注射をします。それから鎮静したのを確認して手術を開始するのです。これと違うやり方の獣医師の先生もいらっしゃるようですが、基本的には同じです。
これがもしも、キャリーケース(形や材質による)や布袋などで持ち込むと、上記のような手順で作業ができなくなります。まして、外生活をしていた猫ならば、逃げるためなら何でもやります。噛みつく、引っ掻く、暴れるなど、動物病院のスタッフも危険になることがあります。そのためにも、捕獲器で持ち込むことが必要なのです。また、必死になった猫が、布製のキャリーバッグを爪で破いたという事例も報告されています。これは私にも経験があるのですが、体が大きく凶暴なオス猫などを捕獲した場合、猛獣並みに激しく暴れることがあり、かなりの力で捕獲器を押さえつけることがあるのですから、普通の布袋など簡単に破いて逃げることは想像できるかと思います。もちろん、飼い猫で人に慣れている猫を、わざわざ捕獲器に入れて持って行ったというのは、逆に聞いたことがありませんが、猫はいつもと違う環境に激しく反応することがある動物であることは、飼い主の方なら、今更私が説明する必要などないと思います。
と言うわけで、本日も最後までご覧いただきまして、ありがとうございました。