資 源輸出国として存在感を高めているモンゴルと日本を結ぶ物流網を構築しようと、中国を含む3カ国が整備計画を進める構想が浮上している。新たな物流網計画 「東方大通道プロジェクト」は、モンゴル東部チョイバルサンから中国東北部の吉林を通過し、ロシア極東地域の日本海に面するザルビノ港まで鉄道で資源物資 を運搬、同港から海上輸送で日本海側の秋田や新潟、舞鶴などに運ぶ。2012年の完成を目指す。(坂本一之)

≪中国含む3カ国≫

資源価格の高騰で地下資源の豊富なモンゴルが脚光を浴びているが、内陸国のため輸送容積の大きい鉱物資源などの港湾までの輸送ルート確保がカギ となっている。同構想では、チョイバルサンから中国との国境まで約500キロの鉄道を新たに敷設し、国境からロシアのザルビノ港までは既存の中国の鉄道を 活用。直行ルートを作る。総事業費は約500億円を見込む。

モンゴル政府側が医療器具などの寄付活動を展開していた大阪の中小企業の団体に輸送ルート確保で協力を求め、日本側で同構想が動き始めた。モンゴルにとって中国は主要貿易相手国だが、依存度の拡大を懸念する声も強く、日本の参加を希望してきたという。

一方、モンゴルから日本海など東側の港に抜けるためには、地理的に中国の協力が不可欠。また、中国も急増する国内需要への対応で国家政策で国外 の資源獲得に乗り出している。モンゴルとの物流網に構築によって東北地方の経済発展にもつながるとみて、同構想参加に積極的な姿勢を打ち出したとみられて いる。

≪ウランなど豊富≫ 

モンゴルはすでに銅や特殊鋼製造に用いられるモリブデンの生産・輸出を手がけ金や石炭などの資源も持つ。さらに、地球温暖化対策で導入の動きが加速する原子力発電用燃料のウランも豊富にあるとされる。

モンゴルの主要輸出品は鉱物資源や牧畜産品で、2007年輸出額は18億8900万ドル(速報値)。05年実績の主要輸出先の国別シェアでは隣 国の中国向けが45・4%でトップ。米国は11・9%、英国は3・9%などとなっている。日本とモンゴルの貿易額は少ないものの、資源開発に関して大手商 社が動きを見せており、外交筋は「モンゴルは友好国。モンゴルの経済の底上げを支援することが日本の資源確保につながるだけでなく、北東アジアの安全保障 上も重要だ」と指摘する。新たな物流網が実現すれば、環日本海経済圏の構築を含め、日本とモンゴル、中国東北部との経済交流拡大が加速しそうだ。