雨が上がったすぐ後のこと。俺は、友人と二人で歩いていた。
並木道に差し掛かると、彼が、「このゾーンは雨だからな」と言って、傘を広げた。
「あぁ、なんて言うんだっけ、こう言うの。樹雨(きさめ)だったかな」
俺は、別に傘を広げるコトもせず、そのまま歩く。
「へぇ、名前とかあるの」
「んー、自信ねーけど、多分合ってると思う」
葉雨(はさめ)だったかもしれないな…とか思いながら、そのまま、傘は差さないで歩く。
「日本ってさ、雨の名前すげー多いっしょ」
「んー、そうなの?」
「ほら、霧雨とか、にわか雨とか、時雨とか……」
「そうだな、多いのかもしれないなー。他の国がどうかは知らないけどね」
「まぁ、俺も覚えちゃねーが、強さで分けて季節で分けて、30くらいは言い方あったと思うな」
「へぇ。雨ごときの名前をそんなに付けるって、先人はさぞ暇だったんだねぇ」
木の葉から零れ落ちる滴は、普通に降る雨のそれよりも遥かに大きい。水滴が傘の上に落ちる度に、ボタッと気の抜けるような音がした。
「俺が言いたいのは、日本人が風流人だって話なんだけどね」
「よほど娯楽に飢えていたと見るがね、俺は」
感じ方は人それぞれってトコかね……そう思って、しかし言葉には出さず、そのまま歩いた。
並木道を抜けたが、彼は、そのまま傘を差していた。別に雨が降っているワケでもないのに。
「でも、分からんでもないな」
何が、と俺が聞こうとする前に、彼が続けた。
「俺も傘差すのは嫌いじゃないし。雨の日にしか出来ないからかね」
「……ほぉ。それは、『雨も楽しむに値する』的な話かな」
「んー、……30も名前を付けるのは如何なものかと思うんだけどねー」
雲間から太陽が顔を覗かせた。
程なくして、彼が傘を閉じる。
「やっぱり雨よりは晴れのがいいけどな」
空の方に目をやって、彼がそう言う。
「まぁ、そりゃそうかねぇ」
目的地の駅に着いて、俺たちはそこで分かれた。
空に目を向けると、日は雲の後ろに姿を隠していた。
しかしもう一雨来ることは無さそうだし、おそらくすぐに晴れるだろう。
数分して、電車が着いた。もう一度空を見たが、日は隠れたまま。
少し期待していたらしい自分を軽く笑って、傘を持った人で溢れている電車に身を乗り込ませた。
んー。
いまいちの出来!
あ、ちなみに樹雨で合っています。