小説:ブリッジヘッド | インベントリのペット

小説:ブリッジヘッド


ブリッジヘッドの町並み

 ブリッジヘッドは、さびれた港町です。
 もともとはこの世界の唯一の港町でしたが、いまはシュトラセラトににぎわいをうばわれ、はなやかなりし日の思い出にしがみつく女商人や、夢やぶれた流れ者、港町特有の力仕事に従事する暴れん坊などが、むなしく時を過ごす町になってしまいました。
 この町のまずしいラーメン屋にかくれるように住むようになって、もう何日たったことでしょう。
 わたしも他の人から見れば、ふるさとから出てきたはいいけれど、どこで何をしたらいいのかわからずに立ちすくむこの町のロマの人たちと、きっと同じように見えるにちがいない。
 客の来ないラーメン屋のカウンター席に座り、活気のない商店街の通りをボンヤリとながめながら、ため息をつく。
 なんとなく、カウンターの端に放り出してある回覧板を手にとってみた。
「ブリッジヘッド通信、商店街要注意人物リスト2008年版か。ずいぶん分厚いリストだなあ。どれどれ?」
 パラパラっとページをめくると、見覚えのある顔写真発見。
「おっ、神明。悪名高いインベントリファミリーの一員?なにこれ!一時小金持ちだった経験から、無理な借金をしようとする傾向あり。うんうん、いえてる。えーと、去年はニコニコ動画でトカチゴールドにはまり、通常価格2億5千万のまぼろしアイテムがスペシャル価格で放出されるといううわさにおどらされ、ブリヘ金融に借金の申し込みに駆け込んだ。結局その話しはただのイタズラであることがわかり、事なきを得たが、この人物がインベントリファミリーであることがあとでブリヘ金融調査部の調べで判明。一歩間違えたらタイヘンなことになるところであった。要注意人物である、か。現在は、メインクエ2の仕事を請け負いファウンティンスハイランドへ向かった模様であるが、バヘル川カルスト洞窟で消息を絶つ。ううむう」
 わはは、神明遭難中か。
 いやそんなことより、トカチゴールドにはまって借金申し込みに駆け込みってなに。とんでもないやつだなあ、神明。
 いやいやそんなことより、悪名高いインベントリファミリーってなんのことだっ。神明のほかにもわたしのファミリーに、もっと悪いことをしてる人がいるのかな?
 いやな予感がしたけど、商店街要注意人物リスト2008年版のページを、さらにパラパラとめくってみる。
「あっ、あった。わたしだよ!」


インベントリ(重点的要注意人物)
2006年4月、お金もないのに古都郊外に小さな一軒家を購入。ブリヘ金融に多額の借金を作る。当初は返済のためにいろいろな仕事をこなすが、8月に突然姿をくらます。ブリッジヘッドシーフギルドブラックリストに初登場。
ほどなくふらりと帰ってくるが、9月になってアリアン傭兵ギルドのきたない口車にのりクエスト内容を勝手に拡大解釈、借金は返済しないと宣言。
その後、クエストにかこつけてはシーフギルドの各地の拠点をたびたび襲撃。
2007年4月には、ブリッジヘッド商人ギルド会館から、レッドストーンのかけらを盗み出す暴挙。
家は当然債務不履行で差し押さえるが、ファミリーは居住権をたてに居座り、ここは借家じゃないから家賃は払わないと、大家を認める気配なし。
2007年11月に、インベントリンエンターテイメントをひっそりと設立。
会社名義の借金申し込みにだまされたブリヘ金融から多額の資金を引き出し、かねてからの念願の特撮映画「インベントリvsメカインベントリ」の撮影を開始するが、インベントリ3Dの製作のむずかしさにプロジェクトは中止になる。なお、この会社自体がブリヘ金融をだますために設立されたダミー会社であった疑いも濃厚である。
2007年12月、ボーカロイド人気にあやかってファミリーの反対を押し切って再三歌を発表していたが、クリスマスにはついにファミリー全員を招集して撮影したクリスマスソング動画をリリース、ひんしゅくを買う。
お正月に年賀の挨拶をブログに発表するが、現在行方不明。
なお、年末にかけて何回かブログにあらわれたファミリーの一員と名乗るリトルウィッチは、その言動とたびたびシーフギルド倉庫Cを襲撃する行動から、別人を装ってはいるが本当はインベントリ本人の変装ではないかという説もあり。要注意が必要である。


「ううーむ。ブリッジヘッドめ」
 そしてわたしは、くだらない回覧板をカウンターに投げて、ゆっくりと立ち上がる。
 じゃあきょうも奥で着替えて、シーフギルド倉庫Cのやつらに、電撃を浴びせたり石を投げつけたりしてこよう。
 ブリッジヘッドはわかってない。ブリッジヘッドは、ぜんぜん何もわかっちゃいないんだよ。わかるまでわたしがたたく。わかるまでわたしのたましいの歌を、わたしのゴーストのささやきを、聞くがいいのだ!


(この物語は、すべてフィクションです。)