夫婦喧嘩は犬も食わないと言いますが、

当人たちにとってはとても深刻な事態を招くこともあります。

何年も一緒に暮らしているのだから、

お互いのことはよく理解しているはずなのに、

何故か気がつくと喧嘩が始まっていて…


              犬嫁日記#31:『亡くしたパーツ』の巻


僕:『ねえ、プリンターの部品知らない?』

嫁さん:『は?プリンターの部品てなによ?』

僕:『プリンターにはめてDVDのタイトル印刷するやつだよ。』

嫁さん:『知らないけど。』

僕:『知らないはずないよ。押入れのいつものところに入れといたけど、

今見たらないんだもん。』

嫁さん:『だから、知らないって。』

僕:『俺はいつも同じところにしまっているんだから、あとはお前がどこかにやったとしか

考えられないだろう?』

嫁さん:『知らないって言ってるでしょ!』

僕:『ほんとに知らない?』

嫁さん:『ほんとに知らないよ。』


しばらく押入れの中を捜すが、目当てのものは一向に見つからない。

だんだん意地になってきて、押入れの中のものを全部出してみる。

すると、奥のほうから、捜しているプリンターの部品の一部が出てきた。


僕:『ああ!これ部品の一部だ!やっぱりお前がどこかにやったんだろう?』

嫁さん:『人のせいにしないでよ!自分でどこかにやったんでしょ?』

僕:『俺がこんなずさんなしまい方するわけないだろう!どこにやったんだよ?』

嫁さん:『このあいだ私のビデオカメラ貸した時にグチャグチャにしたんじゃないの?』

僕:『あれは全然関係ないだろ!俺は押入れをグチャグチャにしたりしないよ!

いつも適当にモノ詰め込んでグチャグチャにしてるのはお前じゃないか!

もういい加減にしろよ!何回片づけてると思ってんだよ!』

嫁さん:『ああ、もういいわ。そんなに疑うんなら出て行くわ!』

僕:『二言目には出ていく出ていくって、それ言ってりゃ済むと思うなよ!』

嫁さん:『よく分かったわ。もう離婚じゃ。』

僕:『こっちこそじゃボケ!』

嫁さん:『言うたな?ほんまに別れてやる。』


数分後ドアを閉め、出ていく嫁さんの靴音


プリンターの部品は押入れの一番奥の奥のホットプレートの箱の裏側に

落ちていました。


たぶん、世の中の夫婦が離婚するおおかたの理由は

このちいさなプリンターの部品が出てこないからなんだと思います。



その6時間後


嫁さん:『ただいま。ご飯食べた?』

僕:『……』

嫁さん:『お惣菜買ってきたけど食べる?』

僕:『……』

嫁さん:『なんか嫌なことでもあったの?』


うちが離婚しないのは、

嫁さんが忘れっぽい性格だからだと思います。


                       苦難は次回へ続きます。犬


犬嫁日記-忘却の彼方