郵便受けに入っていた西濃運輸㈱和光支店からのご不在連絡票。ご連絡事項に記載されている
文字、それは「ロデオボーイ」代引20,626円…そっと捨ててみました。
犬嫁日記#14:「ファースト・コンタクト」の巻
人との出会いは不思議なものです。
僕は今、東京で俳優をやっていますが、大学に入る前は学校の先生になろうと思っていました。
そして東京になんか来るつもりはこれっぽっちもありませんでした。
それもこれもみんな、人との出会いによってもたらされた変化なのです。
ましてや結婚なんてするつもりは毛頭ありませんでした。というかできると思っていませんでした。
こんな不安定な仕事してる人間と結婚しようと思う女性がいるとは思っていなかったからです。
でも僕は今、嫁さんと東京で暮らしていて、俳優をやっています。…なんて不思議な人生だろう。
嫁さんと出会ったのは、僕が芝居のユニットを作るために、役者募集のチラシを配ったのが
きっかけでした。
それは募集を締め切り、明日はいよいよメンバーとの顔合わせという日の午後、一本の電話が
鳴りました。
結婚前の嫁:「チラシを見たんですけど、まだ募集はしていますか?」
僕:「一応、締め切らせて頂いたんですけれど。」
結婚前の嫁:「チラシを見て、私のやるべき事はこれだと思ったんです!私も参加させてください。」
僕:「じゃ明日、中ノ島の中央公会堂に来れますか?」
結婚前の嫁:「どこだか場所がよく分からないですけど…」
僕:「大阪市役所分かります?」
結婚前の嫁:「ああ、なんか知ってるような気が…なんとか行きます。」
次の日、分かりやすいようにと施設の外で待っていたが、一向に現れる様子がない。
あきらめかけて建物に入ろうとすると、向こうから走ってくる女性が。
結婚前の嫁:「犬飼さんですか?初めまして!」
メンバーの自己紹介が終わり、役者としての個性を見るためにエチュードをやってもらう事に。
結婚前の嫁:「私はそういうのはちょっと。」
僕:「えっ?でも何か演じてもらわないと役者さんとしては採用できませんよ。」
結婚前の嫁:「役者さんなんてとんでもないです!私にはできません。」
僕「でも、じゃあなんで応募してきたんですか?」
結婚前の嫁:「なんだか楽しそうと思って…ピンときたんです。他に仕事はないんですか?」
僕「うーん、後は制作とかになりますけど、」
結婚前の嫁:「じゃ、制作ということでお願いします。」
僕:「分かりました。」
制作というのは、劇場の手配をしたり、チラシを作ったり、当日の受付をやったりと結構
大変な仕事です。
しかし、第1回公演の本番直前にそれはやってきました。
本番の数時間前、受付ロビーに行くと、そこにはタバコを吸っている結婚前の嫁さんの姿が。
僕:「どうしたの?仕事もしないでタバコなんか吸って?」
結婚前の嫁:「なにか文句でもあるんですか?」
僕:「え?…いや、本番直前だから様子を見に来たんだけど。」
結婚前の嫁さん:「わたし、やっぱりできません。」
僕:「できないって何が?」
結婚前の嫁さん:「こんな仕事やってられるか!」
僕:「何かあったの?」
結婚前の嫁さん:「どいつもこいつもわがままばっかりいいやがって!」
僕:「性格変わってるけど大丈夫?」
結婚前の嫁さん:「むかつくんじゃ、ボケ!」
僕:「何があったの?説明してくれないと分からないでしょ?」
結婚前の嫁さん:「役者が、パンフレットに自分の名前が載ってないって
言うから、今さら無理って言ったらブーブー文句言うんですよ。
名前くらいでガタガタ言うな!小さい男!」
僕:「腹が立つのは分かるけど、ここは堪えて仕事をしてもらえるかな?」
結婚前の嫁さん:「こんな劇団つぶれてしまえ!」
僕:「まだ始まってもいないのにそういう事言わないの!」
結婚前の嫁さん:「だっておつりの計算が苦手で
上手くできないんだもん!」(号泣)
苦難は次回へ続きます。犬