携帯電話による脳腫瘍の発生率【発がん性は「有無」ではなく「強さ」で考えるべき】 | まぁ、こんなもんでえぇんとちゃう?

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≪6/2追記;本文中の神経膠腫と聴神経鞘腫を併せた患者のパーセンテージについて誤記を修正した他、文章の小修正実施≫


昨日付けのWHOのプレスリリースの内容が、ニュースとして多く出廻っているようだ。


その多くが「WHOが初めて携帯電話による脳腫瘍の発生が起きる可能性がある事を認めた」という意味の記事であったと思う。(明日時間があれば収集したい)


その中でも「1日30分のヘビーユーザーが10年間携帯電話を使用すると、脳腫瘍の発生リスクが40%増える」という意味の文章を見かけた。


そこで元のWHOのプレスリリースを読んでみた。


幸いにもマイミクシィの医師の方が、該当する文書のブックマークをチェックされていたので、すぐに見つかった。


此方がWHOの正式のプレスリリースである。


IARC CLASSIFIES RADIOFREQUENCY ELECTROMAGNETIC FIELDS AS POSSIBLY CARCINOGENIC TO HUMANS ’(WHO PRESS RELEASE 31 May 2011


【以下上記文書の「前文」】

Lyon, France, May 31, 2011 ‐‐ The WHO/International Agency for Research on Cancer (IARC) has classified radiofrequency electromagnetic fields as possibly carcinogenic to humans (Group 2B), based on an increased risk for glioma, a malignant type of brain cancer1, associated with wireless phone use.

【文章紹介終了;但し下線は我楽者による】


ざっくりと訳すと、「WHOのIARCはワイヤレス(携帯)電話により悪性の脳腫瘍である神経膠腫(glioma)のリスクが増加する事から、高周波電磁界についてヒトへの発がん性の可能性がある(グループ2B)と分類した。」と言ったところか。


そこで、このグループ2Bについて調べてみた。



‘Group2B’は上から3番目、「発がん性物質に分類されないグループ3」の一つ上の区分で、「発がん性の可能性があるグループ」だろう。


そして前述した「WHOプレスリリース前文」の基となったのが、同プレスリリース2頁目「結果」の文章である。


【同文書2頁目より】

Results
The evidence was reviewed critically, and overall evaluated as being limited2 among users of wireless telephones for glioma and acoustic neuroma, and inadequate3 to draw conclusions for other types of cancers. The evidence from the occupational and environmental exposures mentioned above was similarly judged inadequate. The Working Group did not quantitate the risk; however, one study of past cell phone use (up to the year 2004), showed a 40% increased risk for gliomas in the highest category of heavy users (reported average: 30 minutes per day over a 10‐year period).

【文章紹介終了;但し下線は我楽者による】


上記文章の下線部分のみ意訳。

「携帯電話の使用者における神経膠腫と聴神経鞘腫について限定して、批判的に評価された。」

「作業部会はリスクを定量しなかった。しかし過去携帯電話の使用について神経膠腫のリスクが最も高い区分ではヘビーユーザー(平均して1日30分間10年以上)で40%増大しているという研究(2004年報告)がある。」


ニュースに記されている「1.4倍となる」という数字はこれを指すと思われる


ここで、上のプレスリリースで言及されている2種類の癌について、その発生率を調べてみた。


がん情報サービス・神経膠腫 より】

1.神経膠腫とは
<中略>
国内における脳腫瘍(転移性脳腫瘍を除く)の発生頻度は、人口10万人に対し12人程度とされ、欧米とほぼ同じであるといわれています。
神経膠腫はそのうちのおおよそ30%を占め、最も多い腫瘍です。
【文章紹介終了;但し下線は我楽者による】


がん情報サービス・聴神経鞘腫 より】

1.神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)とは
<中略>
脳にできる良性腫瘍の中では、髄膜腫、下垂体腺腫に次いで3番目に多い腫瘍で、悪性脳腫瘍を含めた脳腫瘍全体の約10%を占めます
毎年、わが国で250~300人に発生します

【文章紹介終了;但し下線と色の修飾は我楽者による】


ここで計算をしてみた。


人口10万人当たり12人の脳腫瘍のうち、30%が神経膠腫と考えられる。

つまり神経膠腫になる確率は10万人中3.6人である。


また同じく(聴)神経鞘腫は脳腫瘍の10%と考えると、人口10万人当たり1.2人。


これ等2つの腫瘍を併せると、人口10万人当たり4.8人となる。


この数値が1.4倍になると、人口10万人当たり6.72人となる。

パーセンテージで考えると…0.0048%が0.00672%に増加

≪6/2追記;0.048%とした誤りを修正し、文章を一部削除≫


一方、我が国のがん罹患率は、生涯累積で男性53.6%、女性40.5%(ほぼ2人に1人)である。

がんの統計 -9. 累積がん罹患・死亡リスク 財団法人がん研究振興財団より)

そして我が国の人口を1億2793万人、男性;6277万人、女性;6566万人(平成23年5月1日現在;総務省統計局人口推計平成23年5月報 )とすると、累積がん罹患者数は男性;3364万人、女性;2659万人となる。


各種報道媒体に記されている「1.4倍に増加」という文字は、これらの数字の意味を理解した上で記されているのだろうか?
自分には記者がその様な背景を知らぬ(調べぬ)ままに、機械的にニュース記事にしているように思えてならない。