マルサとアランを見送り、

みんなと一緒に泣き腫らして

迎えた週明け月曜日。


晴れてレベル3の教室へと向かいました。


それが前回ブログに書いた

ニコルの授業音譜



レベル3の授業はレベル2ののんびりほんわかな授業進行とは

真逆のとっても刺激的な授業風景でした目


というよりも、私を含め、レベル二のクラスでは、言葉を自在に操れる語学力が無かったため、それぞれ会話が成り立たなかったとも言えるけど汗


レベル3の生徒達は14人もいて、私がクラスに行ったときには

すでに世界各国の留学生たちが揃っていました。


教室はホワイトボードを中心にコの字に机が配列されていて、

私はリイコとようやく一緒のクラスになれたことが嬉しくて

彼女をすぐさま見つけて駆け寄りました。


と、座った向かいの机から手を振る生徒が目に入り、

みるとロベルトが手を挙げて

「へい! おはよう!」

と隣で朝からぐったりしている健吾の隣でとても元気そうに

満面の笑顔でくるくる天然パーマを揺らしていました。



そのうちニコルがやって来て授業が始まりました。

が、始まってまず驚いたのは、みんな自分の思いを伝えるのが上手いということ。


ニコルがまず、授業に入る前の導入で、

週末何したか? という問いかけにまぁ一人一人

話す、語る状態。

こんなに話せてもレベルは学校で二番目に低い3なんだぁという感じでした。

それにニコルも

「Nothing Special・・・・・・(特に何も)」

と答える生徒にはあれこれ引き出そうと興味深く人懐っこく話しかけていて

一番人気というのも分かるなぁってくらい

魅力的な先生でした。



導入質問が全員終わると、

比較級についての授業が始まりました。

挨拶レベルでつまづいているレベル2から

ひとつ上がっても授業内容は中学英語。

比較級とかは分かるわ、

と自分は思っていると他の生徒ももちろん分かっている様子。

語学学校だからとにかく英語を話すことができない

恥ずかしい生徒が多いだけで文法は分かっている、

というのが多いのも特徴だなって思いました。


一通りの説明を終えた所でニコルが言いました。

「それじゃあ、mostを使って例文を一つ出してくれるかしら」

クラス内を見渡して、ニコルは窓際の一番前に位置していた韓国人のウソンを当てました。


彼は25歳のソウル大に通っている院生とのことでした。

間違いなく秀才の部類で、その分厚い眼鏡は

勉強頑張りました、という自信もみなぎっています。


ニコルの問いかけに眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げながら、

「韓国は世界で一番、技術の発達した国です」

と通る声で一発答えました。


 そこにはみなぎる自信たっぷりでしたが、

教室内の空気は一瞬さっと静まり返りました。

そしてすぐに他の生徒たちが別の答えを求めるようにざわつき出しました。


「ホワッツ? ホワッ? フォアッツフォワワワ・・・・・・ 」

開口一番、声と共に立ち上がったのはロベルトでした。


おいおいおい、そりゃ違うだろー

という日本の芸人さんのツッコミみたいな

切り口で、口元もこんがらがっちゃって

言葉にならない言葉を発し、


「ヘイヘイヘイ! 何言っちゃってんだ。

なんで韓国が一番なんだよ。

日本なら分かるよ。技術が世界一だから。でもお前の国は

違うだろー!

僕達メキシコと同等でアメリカが隣だから自分達もそれなりっていう感じで。

だから韓国が一番ならメキシコも一番だろうが」


常にスペイン風味のある英語が抜けないロベルトが

今習っている対等の例文とか交えながら反論する姿に

みながぽーっと見惚れていると、


「何言ってんだ。メキシカンが。韓国と一緒にすんな。メキシカンが」


と異に介さずという感じで冷静に

言い返したウソンに、



見る見る赤く頬を染め上げ、くるくるとした巻き毛が盛んに揺れだし、


「お前らが一番な訳ないだろむかっ


とロベルトの声が教室中に響き渡りました。


で、口々に韓国人はウソンに、

メキシカンやブラジリアンたちは

ロベルトの応戦に加わり、もう教室はわんさか状態にメラメラ


「ヘイ! ケンゴ、なんとか言えよ。日本が一番だって言えよ!」


と、隣でぼんやり頬杖ついてる健吾の肩をバシバシロベルトが

叩く様子を私とリイコぼんやり眺めていました。


たまらず、


「いつもこうなの?」

とリイコに訊ねると、

うん、そう

との答えが。


刺激的すぎるあせる


って感じでした。


と、ホワイトボードにウソンの例文を書き終えたニコルが

しばらく

この様子を手に持ったペンとペンのキャップを入れ抜きして眺めていましたが、


「もう、分かったわ。これは例文なの。

例文だから、ね」


と言い、ご丁寧に『ex.』という例文の意を示す文字まで

つけてしまいましたドクロ


と、これに再び激怒するウソン。

それまでロベルトにどんなに

反論されようと、ウソンは

背筋をピンと伸ばし、小型犬が吠えまくるのを

冷めた目で見る大型犬のようだったのに、


「なぜだ! なぜ例文なんだ。おかしいだろ。韓国は世界一だ。なんだって世界一なんだ。例文じゃない。これは事実だ」

と喚き出す始末。

はたまた韓国人の生徒も抗議しだし、

他のメキシカンもブラジリアンも

思い思いの自己主張を始めてしまいました。


ロベルトに至っては机の上に立ち上がって

大声を張り上げている。。。



もうクラスめちゃくちゃ・・・・・・



「なんでもいいから早く授業進めてよ」


 今まで黙っていた健吾がむっくり顔をあげ、口を開きました。生徒の視線が

健吾に集まったけど、健吾は全く異に介さず、

どうでもいいからさ

と一言。


ニコルは静まった生徒に大げさに息を吸うと、

「これは例文です」ともう一度はっきりと告げ、授業は再開しました。



その後、授業を共にすることになる

ホンジュラス出身のホワンから、


「(国がどう思われているか、その位置づけがどういうものなのか、

それが)どうでもいい、って思えるのは日本がすでに

認められて、満たされているからなんだよ」


そうじゃない国は簡単に引くことなんてできない


と私たちは知りました。


そうして

当たり前だと思っている日本の位置づけは

当たり前のものなんかじゃなくて

なんでもかんでも当たり前なんかじゃないんだと

彼らの毎度のやり取りを見て

そう思うようになりました。

もちろんそれぞれ良い所があるんだから

それに誇りを持てばいいのに

って思うけどそれもまた満たされているから

出る言葉なんだよ

ってことでした。


ただ、意外だったのは健吾くん。

初めての出会いは自動販売機いたぶっていたけど

あれから一度もそんな場面を見ることもなく、

争いごともお好きではないようで

授業がその後も滞るたびに

やめようやー

って感じで止めにはいること。


不思議な人だなぁと

つくづく思うと

色々学んだ1日目でもありました。




日本のしてしまった

二度と繰り返してはいけない過去もあるけれども、

これまた出会った

カナディアンに言われた言葉。


欧米人は今を見る

日本人は未来を見る

中韓人は過去を見る


あながち間違いじゃないって思いました。