滑空する動物と言えば何を思い浮かべるだろうか?多くの人はムササビやモモンガを思い浮かべるのではないだろうか?


レアな所でトビトカゲという肋骨が大きく広がり、樹から樹へ飛び移る変わり種もいる。


昨今人気なのはやはりフクロモモンガではないだろうか?

私がよくタイから輸入していた30年ぐらい前は今で言うノーマルカラーのフクロモモンガぐらいしか輸入されず、あまり懐かないアダルトばかり来ていた。


荷物を取りに空港へ行くと、大きな木箱からこれでもかと言うほどジージージージージー!!!という威嚇の声がけたたましく聴こえるので、アレが自分の荷物であることは一目で判った。


「はい。犬バカさんねぇ。中身はーフクロモモンガかな?」


税関検査でも直ぐわかる程お馴染みになっていた。


しかし昔から輸入する度にフクロモモンガは良く売れる。馴れていようがいまいが良く売れるのだ。顔が可愛いに他ならない。


私はハッキリ言ってフクロモモンガは五月蠅いから大嫌いな動物なのだが、意に反して売れるから輸入しているようなものだ。今はカラーバリエーションが増えて一般的になっているが、このように色遊びが始まった10年ほど前からフクロモモンガは輸入しなくなった。


ムササビも飼育したことがある。オオアカムササビとカオジロムササビである。どちらも中国経由で輸入したものだったが、アダルトだったので物凄く凶暴だった。

木に穴を開けて巣穴を造るのだ。そんな奴に噛まれようものなら大変なことになるのは明らかだ。


実際取引先のスタッフの女性はムササビに咬まれて中指の神経までやられて動かなくなった。私も皮手袋をして扱ったが、それでも咬まれたときは痛かった。


最終的にはどちらも1年ぐらいしたら馴れたのだが、こういう大型齧歯類は扱いに注意が必要だ。

放し飼いが理想だが、家中穴だらけにされてしまう。それでもいいという奇特な人が飼う生き物だろう。


抱くと猫程ある。重さはそれ程でもないが、大きさはかなりある。

これが凶暴な個体が咬み付いて来るんだからたまったもんじゃない。


餌は野菜や果物、九官鳥の餌などを与えていた。若葉の新芽を与えると良いと聞いたことがあるが、与えたことはない。


ムササビのいくつかの個体は狂ったように死んでいったのがいる。

ケージの中を飛び回り、バタバタと暴れまわって死ぬのである。

もしかしたらその若葉の新芽を与えなかったのが原因だろうか?良くは分からないが、あまりにもバタバタ死んでいくので輸入はしなくなった。原因を追求するのも大変な作業だし、失敗して学ぶと言っても命がかかっている。徒に生命を翫ぶのはいけないと思い飼うことを止めた。


一方、同じく滑空する動物でヒヨケザルという生き物がいる。

東南アジアに生息していて一属二種。マレーヒヨケザルとフィリピンヒヨケザルの二種類がいる。

サルと名付いてはいるが、サルではなく皮翼目という珍しい動物である。


餌は葉っぱや果実や花を食べると言われている。

動物園での飼育も最長で6ヶ月程度しか飼育記録がなく、原産世界でもヒヨケザルを見られる動物園はない。


ヒヨケザルも例に漏れず突然狂ったように死ぬらしい。

やはり木々を滑空して飛び回り、様々な植物を食べている動物を狭いケージに閉じ込めるのはストレスになるのだろう。それと様々な種類の植物を食べまわっているような動物だからこそ人間が与えるだけの食べ物だけでは栄養が足りないのだろう。


かつて25年ほど前にマレーヒヨケザルのオファーが海外からあって、面白いから飼いたいと思ったのだが、当時の値段が確か80万円ぐらいだったと記憶しているが、直ぐ死んでしまうような未知の動物を輸入するのに80万円はかなりリスキーな勝負だと思い止めたことがある。


しかし飼いたい気持ちは今でもある。あるが死なせては元も子もないので、いつか現地で本物が滑空している姿を見てみたいと常々思っているのだ。