数年前。
まだ 熟女じゃない頃。
ステキ!と一目惚れして
とあるメーカーの服を買いました。

シンプルだけれど 計算されたシルエット。
縫製も 素材も クオリティ高く、
なにより その
ブランドコンセプトにも共感していて
デザイナーさんも 素敵で。
私にとっては
あらゆる面で 背伸びをしなくてはいけない、
オトナのブランドでは ありましたが。


「服、 本との出会いは 一期一会」
という格言を掲げていた
我が母の教えの通りに 購入を決めて、
あまりに 好きだったので
ええぃ、儘よ!と
そのシーズンに出ていた色味
ホワイト、ネイビー、ブラックと
思い切って 大人買いしてみたのです。

うれしくて、うれしくて
急いで家に帰り さっそく着てみたけれど。

やっぱりなんだか おかしいのです。
なんとなく しっくりこない。
着られているというか
無理しているというのか。

とてもステキな服なんだけど
その頃の私に 似合っていない。
体型とか、年齢とか、
それは もしかしたら「格」みたいなものが
まだまだ全然 足りてないみたいで。

その服を着る資格が
きっと まだ無いのです。

あぁ、すごく残念。
悲しくなりました。
ワタシって・・・ワタシって・・・


それでも 見ているだけ
ときめいて 嬉しくなるくらいに
その服はステキで、
どんなに断捨離しようとも
「いつか この服にふさわしくなりたい」と
手放さず
手元に残しておきました。

この服が 
このブランドが
いつか 無理なく似合うようになったなら
ワタシも少しくらい 良い感じに
歳を重ねられたんじゃないだろうかと
ちょっとは 思える気がするなんて
目安、みたいに位置づけて。

あれ以来
毎年 袖を通してみるも
鏡にうつる自分を見ては
いや、今年も まだまだダメだなと
がっくりため息、うなだれる。

毎年 繰り返し繰り返し、
今年はどうかと
袖を通して。




バッチリ完璧、ではないにせよ
1着くらいは 着ても大丈夫かも。
ちょっとだけ
たとえば 年齢、だけなのかもしれないけれど
やっと今 
追いついて その裾をつかんだような。


完全な自己満足なのだけれど
しみじみうれしく、噛みしめました。

その1着を着て
出掛けた今日1日を
きっと忘れないと思うのです。