まだ子どもだった頃。
夏休みの自由研究に
「空想旅行記」
という作品を 妹が制作しました。
まだ子どもだから
今は ひとりで旅には行けないけれど
もし、旅することができたなら
私はこんなことがしてみたいし
こんなところにも行ってみたいの。
その「行ってみたい場所」についての
地理や 歴史を研究し
観光地や その土地の美味しいものも
たくさん調べて
本当に旅してきたかのように
その 夢の旅行記を
せっせと 制作していたのです。
今のようにパソコンで
どこの どんなことでも
調べられる時代ではなかったから
図書室で借りてきた、
その土地の
資料となるような本だけでは足りないと
「行ってみたい場所」にある、
県庁や市役所、町役場の観光課に
どうか資料を送ってくださいと
願いを書いた手紙を送りました。
それから数日後。
ある役場の 職員の方から
その町のパンフレットや冊子が
どっさりと 届きます。
一緒に、職員の方の
手紙も添えられていました。
そこには
どんなにこの町が良いところなのか
その職員の方が
どんなにこの町のことが好きなのかが
綴られており、
あなたが大人になったとき
ぜひこの町に遊びにに来てくださいね、と
この資料を夏休みの宿題に役立てて
すてきな作品を作ってくださいね、と
書いてありました。
そんな 優しい手紙に
家族みんなで感謝して、
行ったことのない
その すてきな 遠い町に 思いを馳せました。
おかげさまで
詳しい情報が盛り沢山となった、
妹の 空想旅行記は
まるで本当に 旅してきたかのような
とても楽しい作品となって 無事に完成し、
賞を戴く出来となったのです。
あのとき、
たくさんの資料をくださったのは
東北地方の ある町でした。
頂戴した、資料と手紙は
今も実家で 大切に保管しています。
ずっと 忘れずにいます。