【次世代を担うみなさんへの民主主義の教育について】

私は、アメリカの大学と大学院で民主主義について学ぶ機会がありました。

ハーバード大学政治学部のセミナーでは、最新の民主主義理論について、学ぶことが出来ました。

ボストンにある外交専門の大学院フレッチャースクールでは、民主主義の理論と各国の民主主義の現状について学ぶことが出来ました。

そのため、そこで学んだ最新の民主主義の理論を、分かりやすく、次世代を担う日本の学生(中学生・高校生)のみなさんに、ボランティアでお伝えすることにしています。

先週の日曜日は、浜松市の中学生に、民主主義の原則と制度についてお伝えしました。



[浜松市の授業で使ったホワイトボードの板書]


先週日曜日の授業の主な内容は、次の通りです。

民主主義を支える2つの柱が、「多数決の原則」と「少数者の権利の保護」であること。

多数決の原則は、選挙、国会、内閣(内閣総理大臣の指名)に反映されていること。

国会は、国民が選挙によって選ぶ国会議員によって構成されるため国民に一番近く、そのため国権の最高機関とされること。「法の支配」の原則により、内閣(行政府)は、国会(立法府)が決定した法律に基づいてのみ、行政行為を行うことが出来ること。国会は、法律と予算を通じ、内閣を統制すること。

「政府の説明責任」の原則の下、内閣は、自らの決定と行動に関し、国会と国民に説明する責任を負うこと。説明に納得しない国民は、次の選挙で政治家を落選させることが出来ること。

多数者は、自分たちの利害のみを追及し、少数者を抑圧する「多数の横暴」におちいる危険があるため、少数者の権利を保護する必要があること。

少数者の基本的人権は、たとえ多数者が法律や行政行為で奪おうとしても奪えないこと。それが”基本的”人権の意味であること。

多数者が少数者の基本的人権を制限する法律や行政行為を制定・実行した場合、少数者は、これらの法律や行政行為が憲法に違反し無効であるとし、裁判所に訴えを提起出来ること(「立憲主義」の原則)。

裁判所は、基本的人権を制限する法律や行政行為を無効にする判決を通じ、少数者の権利を守ること。裁判所が、国会および内閣の政治的圧力に屈することなく、法律を事実にあてはめ、判決を下すことが出来るよう、裁判官の地位が保障されていること(「司法の独立」の原則)。

選挙で選ばれた政治家(文民)が、軍(日本では自衛隊)を統制する必要があること(「文民統制」の原則)。戦前・戦中は、軍が国会・内閣の統制に服しておらず、独走してしまったこと。

これらの内容について、歴史上の事例を豊富に引用しながら、中学生のみなさんにお伝えいたしました。

中学生のみなさんは、非常に真剣に、集中して聴いて下さいました。

中学生のみなさんは、NHKのニュースや永田町政治の報道に汚染されていない分、素直に民主主義の原則とその有効性を理解して下さいます。

むしろ、大人のみなさんの方が、ニュースや報道で目にする永田町政治を政治と考えるため、本来の民主主義や民主主義の原則についての理解が困難のようです。


ちなみに、ドイツでは、ファシズムに対する反省から、1963年に、連邦政府の内務省が管轄する官庁として「連邦政治教育センター」が設置され、学生・市民・メディアに対し民主主義に関する教育と知識の普及を行っています。[1]



[ドイツ・ボン市内の「連邦政治教育センター」本部]


そのため、私は、かねてより、日本でも同様の官庁を創設すべきであると考えています。文科省・総務省・外務省など各省庁の民主主義に関する部局を統合し、新たに「民主主義省」を創設すべきだと思っています。

民主主義省は、学生・市民・メディアに対する民主主義の教育・理解の深化・拡大を担います。

また、民主主義省は、立法、行政、司法の活動が、より民主主義的になるよう、提言を行い、その実施を徹底します。


来週は、浜松市の中学生に、平等権・自由権を始めとする基本的人権の内容と地方自治について、お伝えする予定です。


参照資料:
(1) The Federal Agency for Civic Education (Bundeszentrale für politische Bildung; bpb) Home Page


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。