【日本の安全保障は、日米軍事同盟に代わり、アジア諸国による集団安全保障体制によって守られるべきであること、その実現のためアジア諸国との友好・協力を第一義とする新党が設立されるべきことについて】

日本の安全保障は、日米軍事同盟に代わり、アジア諸国による集団安全保障体制によって守られるべきです。そして、その実現のため、アジア諸国との友好・協力を第一義とする新党が設立されるべきです。以下、ご説明させて下さい。

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1. 激化する米中対立と日米軍事同盟の帰結

現在、アメリカは、急速に経済力・軍事力を拡大している中国への対抗心をむき出しにしています。

中国は、2020年には、GDPでアメリカを追い越すと言われています。購買力平価を勘案した場合、すでに中国の経済規模はアメリカを追い越しているという試算もあります。

経済力の拡大にともない、中国の軍事力も急速に拡大しています。すでに中国の軍艦の数は300隻を超え、アメリカの軍艦数を超えています。地上発射型の中距離ミサイルは1000発を超え、日本本土から南シナ海、グアム島までを射程に収めています。アメリカの空母は、中国に近づけません。[1]

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中国は、次世代の戦略兵器である極超音速飛翔体の実験に成功しています。そして、自前のGPS衛星も確立し、超音速の巡航ミサイルを配備済みです。アメリカは、極超音速飛翔体の実験に一度も成功していません。超音速巡航ミサイルも、いまだに開発段階です。

中国は、自由貿易体制の堅持を主張し、アジアからヨーロッパまでを結ぶ「一帯一路」政策を強力に押し進めています。ユーラシア経済を統合した場合、中国の経済力は、さらに数倍に拡大することが予想されます。

このまま、自由貿易体制が続き、中国の経済力・軍事力が年々拡大して行けば、アメリカは、中国に圧倒され、二度とスーパーパワーとしての地位を得ることが出来なくなります。



そのため、現在、アメリカは、中国に対し貿易戦争を仕掛け、ファーウェイを排除し、香港デモを扇動し、台湾にF-16戦闘機を提供し、経済・政治・軍事・諜報・情報のあらゆる分野で中国を抑え込もうとしています。

しかしながら、たとえアメリカが高関税を課しても、中国は世界各国との貿易を拡大します。たとえアメリカが政治工作・諜報工作を行っても、中国はアジア・アフリカ諸国との連携を強めます。中国の経済力・軍事力の拡大をとどめることは出来ません。

そのため、最終的に、アメリカは中国に対して軍事手段に訴えることになるでしょう。アメリカは中国に対し軍事紛争を仕掛けることになるでしょう。台湾危機や南シナ海での軍事衝突がきっかけになると思われます。

ただし、アメリカは、アメリカ自らが中国と戦うのでなく、地域の同盟国を中国と戦わせ、自らは後方から指令を出す、いわゆる「オフショア・バランシング戦略」をとることになります。[2]

その具体化として、本年、アメリカのシンクタンクCSBAが、レポート「Tightening The Chain」を発表し、「エアシーバトル戦略」を補充・発展させた、「インサイド-アウト防衛戦略」を提言しました。

これまでの「エアシーバトル戦略」によると、アメリカと中国の間で軍事紛争が起こった場合、アメリカ軍の空母など主要な海上戦力および航空戦力は、中国の弾道ミサイルによる攻撃を避けるため、日本本土を離れ、グアム島やパラオ諸島に退避することになっています。そして、遠距離から海上封鎖を行うことになっています。[3]



今回提言された「インサイド-アウト防衛戦略」は、これをさらに補充・発展させ、新たに、中国の弾道ミサイルの射程範囲内にとどまり、いわゆる第1列島線(日本列島-台湾-フィリピンを結んだ線)の内側で活動する戦力が構想されています。第1列島線の内側で活動する戦力をINSIDE-FORCEと呼び、第1列島線の外側で活動する戦力をOUTSIDE-FORCEと呼んでいます。[4]

そして、このINSIDE-FORCE(第1列島線内戦力)の中核を担うのが、「同盟国」日本の自衛隊です。日本全土はすでに中国の弾道ミサイルの射程範囲に入っており、退避しようにも退避しようがありません。そのため、アメリカは、日本の自衛隊に第1列島線内戦力としての役割を割り当てました。日本の自衛隊は中国の弾道ミサイルの射程範囲内にとどまり、弾道ミサイルにさらされながら、使い捨てにされる駒として利用されるわけです。


[第1列島線とINSIDE-FORCEおよびOUTSIDE-FORCE(出典: Tightening The Chain)]

「いずも」や「かが」などの自衛艦にF35戦闘機が搭載され、まさに捨て身の特攻部隊として投入されることになります。

自衛隊の対艦ミサイル・対空ミサイルで要塞化された琉球列島・奄美諸島もINSIDE FORCE(第1列島線内戦力)として利用されます。琉球列島・奄美諸島は、容赦ない弾道ミサイルの攻撃にさらされることになります。さらに横須賀、佐世保、岩国、横田など、アメリカ軍基地のある日本本土も、当然、弾道ミサイルの攻撃にさらされます。

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奄美大島・大熊地区において建設中の自衛隊ミサイル基地
(写真出典: 小西誠さんの2018年9月1日付ブログ記事「軍事要塞に変貌する奄美―種子島(馬毛島)―薩南諸島」)

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奄美大島・瀬戸内町において建設中の自衛隊ミサイル基地
(写真出典: 小西誠さんの2018年9月1日付ブログ記事「軍事要塞に変貌する奄美―種子島(馬毛島)―薩南諸島」)

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宮古島において建設中の自衛隊ミサイル基地
(写真出典: 小西誠さんの2018年9月7日付ブログ記事「政府は、自衛隊全体を「災害派遣部隊」として根本から再編成せよ」)

一方、アメリカ軍の空母などの主要な海上戦力および航空戦力は、OUTSIDE-FORCE(第1列島線外戦力)として、中国の弾道ミサイルの射程範囲外に退避し、安全な遠方から海上封鎖を実施することになります。

そして、中国が日本本土・琉球列島・奄美諸島・自衛隊への弾道ミサイル攻撃を行い、戦力を消耗したあと、アメリカ軍は、アメリカ本土から増強部隊として、地上発射型中距離弾道ミサイルを九州・琉球列島・奄美諸島に派遣し、中国本土に対してミサイル攻撃を加えるとされています。


[九州・琉球列島・奄美諸島から中国本土に対する中距離弾道ミサイル攻撃(出典: Tightening The Chain)]

アメリカは、今月、ロシアとの間で締結していた中距離核全廃条約を離脱し、地上発射型の中距離ミサイルを配備することが可能となりました。


[今月、アメリカが実施した地上発射型中距離ミサイル発射実験]

今後、米中の対立はますます激しくなります。日米軍事同盟を維持し続ければ、近い将来、「インサイド-アウト防衛戦略」が発動され、日本の自衛隊が捨て駒とされ、日本本土が戦場となるでしょう。それが、日米軍事同盟の帰結です。

日米軍事同盟は。すでに日本を守るためではなく、日本を犠牲にして中国を攻撃するための体制に変容しています。


2. 日米軍事同盟ではなくアジア諸国との集団安全保障による日本の安全保障実現

このような状況の下、日本の安全保障を実現するためには、日米軍事同盟に代わる新しい体制の構築が必要です。日米軍事同盟に代わり、アジア諸国との集団安全保障体制により、日本の安全保障を実現して行くべきです。

日本は、中国、韓国、北朝鮮、ASEAN諸国、インドを始めとするアジア諸国と協力し、アジア諸国との集団安全保障体制によりアジアの平和と安定を実現し、それを通じて、日本の安全保障を実現すべきです。

それは、憲法9条の趣旨にも沿うこととなります。憲法9条は次のように規定しています。

日本国憲法 第九条 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」



憲法9条で戦争を放棄し、交戦権を否定した日本が平和を維持して行くためには、最大限の外交努力を通じ、能動的・積極的に諸外国、とくに周辺アジア諸国と友好関係を築いて行く必要があります。

これを日本を取り巻く現在の安全保障環境に基づき具体的に考えてみた場合、日本は、まさに中国を始めとするアジア諸国との間で良好かつ永続的な友好関係を築き、これを維持・発展させる必要があるということを意味します。それが、憲法9条を守るということの具体的・実質的な中味です。

国連憲章第52条においても、国連が提供する集団安全保障を補完するものとして、各地域の国々により構成される地域的な集団安全保障の構築が想定されています。

集団安全保障の具体例としては、国際連合やOSCE(欧州安全保障協力機構)、ASEAN地域フォーラムなどをあげることが出来ます。集団安全保障においては、「加盟国の中に」地域の安全を脅かす国が現れた場合、他の加盟国が協力して、その対処にあたることになります。[5]

ちなみに、集団安全保障と区別すべき概念として、集団防衛があります。集団防衛においては、「加盟国の外に」脅威を想定します。たとえばNATOが集団防衛の例です。冷戦時代にアメリカと西ヨーロッパ諸国により創設されたNATOは、ソ連を仮想敵国とし、加盟国のひとつがソ連に攻撃された場合、他の全ての加盟国がソ連に対し反撃するとしていました。

集団安全保障は、NATOのような集団防衛と異なり、「加盟国の中に」地域の安全を脅かす国が現れた場合、他の加盟国が協力して、その対処にあたることになります。

アジアの平和を維持し、多極主義に基づく共存共栄の世界を実現するため、アジアの安全保障については、冷戦時代に結ばれた軍事同盟に代わり、アジア諸国が参加する集団安全保障体制を構築すべきです。

では、具体的にどのようにアジア諸国による地域的集団安全保障体制を構築して行くべきでしょうか?。

本年6月中旬、CICA(The Conference on Interaction and Confidence-Building Measures in Asia: アジア相互協力信頼醸成措置会議)第5回会議がタジキスタンで開催されました。会議には、CICA加盟国27カ国が参加しました。


[CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)第5回会議]

首脳会議には、中国の習近平主席、ロシアのプーチン大統領、イランのロウハニ大統領、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、ウズベキスタンのミルズィヤエフ大統領、カザフスタンのトカエフ大統領、キルギスのジェーンベコフ大統領、トルクメニスタンのベルディムハメド大統領、タジキスタンのラフモン大統領、バングラデシュのハーミド大統領、スリランカのシリセーナ大統領、アフガニスタンのアブドラ行政長官、トルコのエルドアン大統領が出席しました。

インドや韓国、パキスタン、タイ、ベトナムも、CICAの正式加盟国です。

会議には、サウジアラビアやアラブ首長国連邦も参加しました。さらにアメリカや日本の代表も、オブザーバーとして参加しました。国連やOSCE(欧州安全保障協力機構)も、オブザーバーとして参加しました。

CICAは、集団安全保障機構であるOSCE(欧州安全保障協力機構)のアジア版とも言われています。


[CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)第5回会議]

アジアの安全保障は、日米安全保障条約や米韓安全保障条約のような冷戦時代に結ばれた軍事同盟に代わり、アジア諸国による集団安全保障体制により実現されるべきです。

具体的には、CICAをベースに、そこにASEAN地域フォーラムを合体させ、アジア地域の集団安全保障の仕組みを構築すべきです。

すでに、アメリカも日本も、CICAにオブザーバーとして参加しています。アメリカ及び日本は、CICAに正式に加盟し、集団安全保障の一翼を担うべきです。

そのような集団安全保障の仕組みが、アジア諸国の協力とアメリカの参加により構築された場合、集団安全保障機構の総会あるいは理事会における決議に基づき、たとえば、域内のテロ組織や海賊を撲滅するために、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して対処することになります。



また、域内で地震や津波などの災害が発生した場合、中国の人民解放軍、日本の自衛隊、アメリカ軍が協力して災害救助活動を行うことになります。

さらに、域内に、核保有を進めようという独裁国が現れた場合、その抑制のため、中国、日本、アメリカが協力することになります。



この集団安全保障の仕組みが構築されれば、アメリカは、財政的制約から今後縮小して行くアメリカ軍の不利を補いつつ、アジアにおける経済的・政治的権益を可能な限り守ることが出来ます。一方、中国も年々拡大する軍事費の膨張を抑え、産業構造の転換や国民の社会保障、あるいは「一帯一路」政策のために、より多くの予算を投入することが可能となります。

アジア諸国による地域的集団安全保障のベースとしてCICAが用いられるべきです。CICAをベースに、そこにASEAN地域フォーラムを合体させ、新しいアジア地域の集団安全保障の仕組みを構築すべきです。

日本は、アジア諸国と協力して集団安全保障体制を構築し、その過程で、日米安保条約への依存を徐々に薄めて行くべきです。


3. 日本の政党政治の現状とアジアとの友好・協力を第一義とする新しい政党設立の必要性

では、日本の政党政治を前提とした場合、アジア諸国による集団安全保障体制の構築は、どの政党によって担われ得るでしょうか?。

自民党は、対米盲従であり、現在、韓国・北朝鮮との対立を利用して、憲法改定に突き進んでいます。まさにアメリカのオフショア・バランシング戦略およびインサイド-アウト戦略を遂行するための道具です。アジア諸国による集団安全保障体制構築に猛反対するでしょう。

野党はどうでしょうか?。

大阪維新は、自民党の補完勢力であり、改憲勢力です。自民党よりさらに強い反韓・反中姿勢を持ちます。アジア諸国による集団安全保障体制構築に反対するでしょう。

国民民主党は、党代表も、代表代行も財務省出身であり、財務省の意向を受けながら、官僚の勢力復活を目指す政党と思われます。国民民主党は日米安保条約維持の立場であり、財務省とアメリカとの深い関係を考えると、アジア諸国による集団安全保障体制構築に積極的になるとは思えません。

立憲民主党は、一見リベラルの様相を見せることからリベラル派有権者の支持を受け、現在、野党第一党となっていますが、今後、アメリカの民主党のように国際金融資本の利益を代弁する勢力となっていく可能性があると予想されます。

立憲民主党の党公式ツイッターを見ると、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)をはじめとするセクシュアルマイノリティを擁護するツイートが異常に多いです。少数者の権利保護は、アメリカにおいて、民主党がヨーロッパ系の国際金融資本の影響力を拡大する際に使った手法です。黒人やヒスパニック、LGBTなど少数者の権利の保護を進めることは、間接的にユダヤ人の権利の保護につながるからです。


[LGBTパレードに参加する立憲民主党枝野代表、国民民主党玉木代表]

また、立憲民主党は、党の方針として日米安全保障条約の堅持を掲げています。これも、国際金融資本の利害と一致します。国際金融資本は、日本と中国が対立することを望んでいるからです。

立憲民主党の枝野代表は、2018年に訪米し、アメリカの民主党議員や保守系シンクタンクの研究員と会談しています。しかしながら、枝野代表は、中国を始めとするアジア諸国には一度も訪問していません。アメリカ重視・アジア軽視の姿勢です。


[訪米時、米国民主党議員と会談した際の立憲民主党枝野代表]


[訪米時、保守系シンクタンク外交問題評議会の研究員と会談する立憲民主党枝野代表]

また、立憲民主党幹事長の福山哲郎さんが、2年前、まだ民進党に所属していた頃、神奈川県の「安保法制に反対するママの会」の集会に、講師として参加されたことがありました。その質疑応答の際、私から福山さんに、尖閣諸島の問題を棚上げし、日中間の友好関係を回復すべきではないかと質問をさせていただいたことがありました。私の質問に対し、ママの会のみなさんからは同意の拍手が起こりました。ところが、福山さんは、巧妙に論点を外し、尖閣諸島問題の棚上げについては回答を避け、全く別の福祉の話をし始めました。

立憲民主党代表の枝野幸夫さんのツイートによると、福山さんこそ、立憲民主党を体現する政治家だそうです。

元々、旧民主党が2009年に政権交代を実現したのも、2009年にアメリカで民主党のオバマ政権が成立した直後でした。これに対し、2017年にアメリカで共和党のトランプ政権が成立したあとに実施された2017年衆議院選挙では、旧民主党を引き継ぐ民進党がわざわざ選挙直前に分裂して自民党を勝利させました。

今月、立憲民主党と国民民主党は、統一会派を形成することで合意しましたが、これは2020年のアメリカ大統領選挙で民主党候補が勝利することを見越しての動きであると思います。要するに、アメリカが共和党政権のときは日本では自民党政権、アメリカが民主党政権のときは日本では旧民主党系政権という暗黙のルールがあるようです。立憲民主党も国民民主党もアメリカのいいなりということです。

これらのことから推察すると、立憲民主党の役割は、一見リベラル派の様相を示すことで、日本のリベラル派有権者層の票を取り込みつつ、実質的には、国際金融資本の利害を代弁していくところにあると思われます。立憲民主党は、国際金融資本と同じく日米安保条約維持の立場であり、アジア諸国による集団安全保障体制構築に積極的になるとは思えません。

ちなみに、私は、反ユダヤ主義者でもありませんし、国際金融資本がグローバリズムにおいて大切な役割を果たしていることも理解しています。ただ、もしいずれかの政党が国際金融資本の利害を代弁するなら、その党は、そのことを明示すべきであると思います。それが自由で公正な選挙のために必要なことだからです。

共産党は、日米安保条約に反対の立場です。しかしながら、過去の確執から、日本共産党は、中国共産党と良好な関係にありません。志位委員長は、南シナ海の領有権をめぐり中国と敵対的なベトナムを訪問したことはありますが、中国を訪問したことはありません。アジア諸国による集団安全保障体制構築に積極的になるとは思えません。

このような状況から、既存政党の中で、中国や韓国、北朝鮮、インドなどのアジア諸国と協力し、アメリカの妨害・反対を押し切って、アジア諸国による集団安全保障体制を構築して行く政党は存在しないと言わなければならないと思われます。

そのため、アジア諸国との友好・協力を第一義とし、アジア諸国による集団安全保障構築を政党目的とする全く新しい政党を設立する必要があると思います。

経済界においては、アジア諸国との協力を重視する企業が多数存在します。中国の自動車販売台数は2800万台で、1700万台のアメリカよりも1000万台以上も多くなっています。また、次世代の主力である電気自動車の販売でも、中国105万台に対し、アメリカ36万台と3倍の開きがあります。このため、中国市場を重視するトヨタを始めとする自動車メーカーや電気自動車用のモーター生産に集中投資している日本電産などの企業は、アジア諸国との協力を重視する新党を応援するはずです。

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また、再生可能エネルギーの分野でも、中国は、太陽光発電所の設置数、風力タービン設置数で世界一であり、再生可能エネルギー分野に注力しているパナソニックなどの企業が、アジア諸国との協力を重視する新党を応援するはずです。

現在、中国では消費市場が急速に拡大しています。中国のネット通販大手アリババグループは、中国の地方都市に張り巡らせた流通網を日本企業に開放する取り組みを始めており、「LST(零售通:Ling Shou Tong)」と呼ばれる販売ネットワークを通じ、600万店以上ある店舗への販路を提供するそうです。

これまで、日本の地方の中小企業は、東京の大企業を経由するしか中国市場に参入する方法がありませんでしたが、アリババグループのネットワークを使えば、地方の中小消費財メーカーが、14億人の巨大市場に直接アクセス出来ることになります。ちなみに、中国のネット通販市場規模(2017年)は122兆円で、なんと日本(10兆円)の12倍です。中国が進める「一帯一路」によりユーラシア経済が統合されれば、市場規模はさらに拡大します。

社会保障の分野でもアジア諸国との連携は、日本に恩恵をもたらすと思われます。少子高齢化の下、日本の年金制度は破綻しつつあり、希望者に最低限の衣食住を保障するベーシック・インカムの導入が必要となりつつあります。ベーシック・インカムの最大の課題は財政負担ですが、現物支給のベーシック・インカムにすれば、制度コストを最大限抑えることが出来ます。衣食の分野でアジア諸国と協力すれば、制度コストをさらに引き下げることが出来ます。

アジア諸国との連携は、税負担を軽減することにもつながります。現在、日本経済は、日銀の国債・株買い入れにともなう官製バブルでもっている状態ですが、拡大するユーラシア経済の実需に基づいた経済成長を実現すれば、官製バブルに頼ることなく、企業業績も回復します。その結果、過度の法人税軽減は必要なくなり、法人税の増税と消費税の軽減が可能となります。また、アジア諸国との平和で安定的な関係構築は、防衛予算の削減も可能にします。

さらに、アジア諸国との友好関係・平和構築は、日本国内の民主主義も回復させる効果があります。現在の日本は、特定秘密保護法、共謀罪法、安保法制が次々と成立し、政府のメディア統制の下、戦争準備が進んでいますが、軍事紛争や戦争、周辺諸国との対立は、中央政府への権限集中につながり、自由と基本的人権の制限を生み出します。健全な民主主義は、平和な環境の中でこそ成立し、成長します。

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新しく設立されるアジア諸国との友好・協力を第一義とする政党の名称は、たとえば、「アジア友好協和党: PRO-ASIA COOPERATION PARTY (PAC)」が良いかも知れません。

政党本部は、TOKYO以外の場所に置くべきです。地理的に日本の中央に位置する名古屋が良いかも知れません。あるいは、アジアに最も近い北九州が良いかも知れません。

ちなみに、元首相の鳩山由紀夫氏は、東アジア共同体構想を主張していますが、東アジア共同体構想はEUを範としており、また、中国、日本、韓国、北朝鮮を構成国としている点で、アジア諸国による集団安全保障体制とは性格を異にするようです。昨年、鳩山氏の勉強会に出席した際、鳩山氏にアジア諸国による集団安全保障体制の重要性について何度お話してもご理解をいただけないようでした。

また、韓国の文大統領は、韓国と北朝鮮を結ぶ鉄道建設を進める国際共同体を設立し、それを将来的に地域的な安全保障の共同体へ発展させる構想を持っていますが、これも東アジアに限定されている点で、アジア諸国による集団安全保障体制とは異なります。

アジア諸国による集団安全保障体制構築については、CICAをベースとし、そこにASEAN地域フォーラムを合体させ、アメリカと日本を正式参加国とさせることが、最も適切と思われます。

アジア諸国との友好・協力を第一義とする政党が、広範な国民の支持を得れば、既存政党の中からも、アジア諸国による集団安全保障体制構築への賛同が生まれてくるかも知れません。

もし上記の新党構想ご賛同いただける方、ご協力いただける方がいらっしゃましたら、ご連絡下さい。日本の方に限らず、アジア諸国のみなさんも歓迎いたします。

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(試案)アジアとの友好・協力を第一義とする政党の政党綱領

1. 安全保障政策

米中の経済的対立・軍事的対立が年々激化・先鋭化して行く状況の下、冷戦時代の安全保障体制である日米軍事同盟を維持することは、米中軍事紛争の際、日本の自衛隊が捨て駒となり、日本本土が戦場となることを意味します。

日本の安全保障は、冷戦時代の安全保障体制である日米軍事同盟に代わり、アジア諸国による集団安全保障体制により実現されるべきです。

アジア諸国による集団安全保障体制を、CICA(The Conference on Interaction and Confidence-Building Measures in Asia: アジア相互協力信頼醸成措置会議)をベースに、そこにASEAN地域フォーラムを合体させ、アメリカおよび日本が正式参加することで、構築すべきです。

朝鮮半島については、早期の朝鮮戦争終結宣言、北朝鮮と米国との平和条約締結、朝鮮半島および日本の非核兵器地帯化が必要です。

2. 外交政策

日本の外交は、対米盲従ではなく、全方位外交を目指すべきです。アジア諸国を始め、北米・中米・南米諸国、ヨーロッパ諸国、アフリカ諸国、オセアニア諸国、全ての地域の国々との友好・連携・協力を目指すべきです。

3. 民主主義政策

民主主義は、平和な環境の下でこそ発展します。アジア諸国との集団安全保障体制により日本の安全保障を実現し、その下で、日本の民主主義を発展させることが必要です。

政府・官僚中心の政治を改め、国会を中心とするオープンで活発な議論に基づく政治が実現されるべきです。

法の支配を徹底すべきです。首相であれ、一市民であれ、法の上に立つことは許されません。国会が選任する特別検察官の制度を設け、首相、大臣、検察の犯罪を訴追し、処罰すべきです。

国民が選挙で選出した政治家が自衛隊をコントロールする文民統制を徹底すべきです。国会が中心となり、自衛隊の予算・編成を統制します。

日本国民の民主主義の理解を深め、日本の民主主義を成長・発展させるため、新たに民主主義省を設置すべきです。民主主義の原則、歴史、実践についての情報・知識を普及・拡散するとともに、中央政府の立法・行政・司法および地方政府における民主主義を徹底させ、促進します。

報道の自由を徹底するため、記者クラブは廃止されるべきです。NHKは解体し、報道部門は廃し、教育・教養部門のみを残します。

4. 経済産業政策

今後、急速に拡大・成長するユーラシア経済圏との連携を強化すべきです。経済産業省を解体し、ユーラシア経済圏との連携および再生エネルギー普及拡大を促進する官庁として再編します。

5. エネルギー政策

脱原発と再生可能エネルギーの普及拡大を実現するため、エネルギー部門は国有化すべきです。国家の強制力により、地域電力会社による寡占・原子力村の横暴・連合および電気労連の抵抗を排します。

6. 社会保障政策

少子高齢化の下、年金制度は崩壊しつつあります。年金制度を補完するため、希望者に対して最低限の衣食住を提供するベーシックインカムを打ち出すべきです。現物支給のベーシックインカムにすれば、制度コストを極限まで抑えることが出来ます。

7. 税制政策

拡大するユーラシア経済の実需に基づいた経済成長を実現すれば、官製バブルに頼ることなく、企業業績も回復します。その結果、過度の法人税軽減は必要なくなり、法人税の増税と消費税の軽減が可能となります。また、アジア諸国との平和で安定的関係の構築は、防衛予算の削減も可能にします。

8. 労働政策

労働組合は、国民の自由と権利を守り、民主主義を促進するダイナモです。企業への忠誠を強制する御用組合でなく、ひとりひとりの労働者を大切にし、そのために皆が協力・共闘する健全な労働組合活動が拡大すべきです。

9. 教育政策

勉強するのは自分のためではなく、他者を幸せにするためという価値観の下、グループ学習・協力学習を拡大します。小中高の教育課程において、民主主義の諸原則および世界史を必修科目とします。

10. 科学政策

人類運命共同体への貢献に資する基礎研究部門の充実を実現すべきです。

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参照資料:
(1) The US-China Military Scorecard, RAND Corporation, 2015

(2) "The Case for Offshore Balancing - A Superior U.S. Grand Strategy" by John J. Mearsheimer and Stephen M. Walt, Foreign Affairs, July/August 2016 Issue

(3) AirSea Battle, Center for Strategic and Budgetary Assessments, 2010

(4) Tightening The Chain, 2019, CSBA

(5) "Collective Security Is America's Only Hope", David Santoro, October 15th 2017, The National Interest


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。