【香港デモの背景には、アメリカ・イギリスの情報機関の扇動活動があること、中国政府はアメリカ・イギリスに対し報復を行うであろうことについて】

(私は、アメリカの外交専門の大学院フレッチャースクールで民主主義と安全保障を学び、ハーバード大学のセミナーで民主主義について学ぶ機会がありました。以下の記事は、そこで得られた知見をベースにしています。)


1. 香港デモとアメリカ・イギリス情報機関の扇動活動

香港におけるデモが過激化・長期化しています。その背景には、アメリカ・イギリスの情報機関の扇動があると思われます。

今回の香港デモのきっかけは、香港政府が、いわゆる逃亡犯条例を提出したことですが、反対運動を主導する黃之鋒氏(JOSHUA WONG)、羅冠聰氏(NATHAN LAW)らは、世界各地で反政府活動を支援するアメリカNGOのNED(全米民主主義基金)と深い関係にあります。


[本年6月、香港立法会前で、逃亡犯条例に反対する記者会見を行う香港デモ指導者、黃之鋒氏(JOSHUA WONG)(中央)および羅冠聰氏(NATHAN LAW)(左)]


[逃亡犯条例に反対して行われた香港のデモ]


[全米民主主義基金(NED)代表のカール・ガーシュマンと肩を組む羅冠聰氏(NATHAN LAW)(左)]

NED(NATIONAL ENDOWMENT FOR DEMOCRACY 全米民主主義基金)は、アメリカ連邦議会の出資により運営されており、実態は従来CIAが非公然に行ってきた外国政治団体・政治活動への資金提供を、CIAに肩代わりして行う組織です。その目的は、諸外国のレジームチェンジ(体制崩壊)です。

NEDは、これまで中央アメリカ、南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジアなど世界各地で反政府活動を支援してきました。

報道によると、NEDは、香港においても、デモを支援するため、複数のデモ参加団体に潤沢な資金提供を行っているそうです。[1]

また、在香港米国総領事館のJULIE EADEHは、中東各国や中国などの赴任先で様々な政治工作を担当してきたと噂される人物ですが、今月、香港のマリオット・ホテルで、香港デモ指導者たちと接触していたことが目撃されています。[2]


[今月、在香港米国総領事館のJULIE EADEHと会合する黃之鋒氏(JOSHUA WONG)(中央左)および羅冠聰氏(NATHAN LAW)(中央右)]


[2017年、日本記者クラブで記者会見を行った際の黃之鋒氏(JOSHUA WONG)(右)]

今回の香港デモのきっかけは、香港政府が、いわゆる逃亡犯条例を提出したことですが、条例の本来の目的は中国からの資金流出につながる中国本土の金融犯罪や脱税を取り締まることにあったようです。[3]

しかしながら、香港の人口の4分の1は、中国共産党政権の成立後に香港に逃げてきた人たちと言われており、何らかの嫌疑で自分も中国本土に引き渡されるのではないかという多くの香港市民の不安が今回の大規模な反対運動につながったようです。

いずれにせよ、逃亡犯条例への人々の不安を煽り、それに乗じて香港政府への反対運動を激化させている背景には、アメリカ・イギリスの扇動活動があります。NEDによる香港デモに対する支援は、民主化支援に名を借りた、内政干渉であり、侵略行為です。中国共産党政権に対する揺さぶりが目的であり、若き指導者たちは、見せかけです。

そもそも、今回、香港政府が逃亡犯条例を提出する直接のきっかけとなった、香港人カップルによる台湾での殺人事件と犯行後の香港への逃亡も、実はアメリカ・イギリスによる巧妙な仕込みだったのかも知れません。


2. 香港デモに対する中国政府の対応

現在、香港デモは、議会占拠や空港占拠など、過激化の一途をたどっています。





このまま香港の反政府運動が過激化し、香港警察で対処出来なくなれば、中国軍による制圧もあるかも知れません。



香港デモの過激化は、アメリカ・イギリスの指示による可能性があります。もし仮に中国政府が天安門事件のときのように、力で香港の反政府運動を制圧した場合、アメリカは、民主化運動への弾圧を理由に、各国に中国への経済制裁を呼びかけるでしょう。アメリカの呼びかけに応じて、ヨーロッパ諸国や日本を始め、世界各国が中国への経済制裁をかけることになるかも知れません。

アメリカは、中国軍による香港デモ鎮圧を、手ぐすね引いて待っていると思われます。在香港米国総領事館のJULIE EADEHが、わざわざマリオット・ホテルのような目立つ場所で香港デモの指導者たちと会ったのも、中国政府を挑発して、中国軍による鎮圧を引き出すためだったのかも知れません。

しかしながら、中国政府は天安門事件とは異なる形で香港デモの制圧を図っているようです。

まず、中国政府は、香港を代表する主要企業のひとつであるキャセイ航空に対して圧力をかけました。キャセイ航空の社員が香港デモに参加したことを強く非難しました。その結果、キャセイ航空のCEOが辞任に追い込まれています。[4]



それを見て、香港の多くの企業では、社員に対し、デモに参加しないように社内規制をかけることになるでしょう。デモ参加者の数は大きく減少するでしょう。

そして、アメリカが内政干渉を止めない場合、中国政府は、次に、中国本土で営業するアメリカ企業に対し、様々な規制を強め、事実上の制裁をかけるかも知れません。

また、8月16日、アメリカ各地の空港で入国管理局のコンピューターにシステム障害が生じ、手続きを待つ人々が長い行列を作るという事態が起こりました。中国が、アメリカの内政干渉に対する報復としてサイバー・アタックをかけたのかも知れません。アメリカが内政干渉を止めない場合、アメリカに対し、より大規模かつ深刻なサイバー・アタックが行われるかも知れません。[5]



さらに、中国が、保有するアメリカ財務省証券を大量に売却することで、アメリカに報復することも考えられます。

ちなみに、すでに中国本土では、CIAのエージェント(協力者・情報提供者)が中国当局によって摘発され、CIAのスパイ・ネットワークが壊滅状態に陥っているそうです。今回の香港デモで、香港では誰がアメリカ政府と協力しているのか、どのような活動を行っているのか、実態が明らかになったと思います。中国当局は、今後、香港で、徐々に多くの活動家を摘発し、検挙して行くことになるでしょう。[6]


3. 中国への内政干渉は、中国の民主化を遅らせることについて

イギリスとアメリカは、アヘン戦争以来、様々な形で中国への内政干渉と侵略を行ってきました。フランスやドイツも、中国への侵略を行いました。そして、日本は、日清戦争・日中戦争で、中国を軍事的に侵略し、多くの中国のみなさんを苦しめてきました。内政干渉と侵略行為は、二度と行われるべきではありません。



私は、個人的に、中国も将来的に民主化されるべきであると思っています。しかしながら、中国の民主化は、中国人自身の手で、中国のペースで行われるべきです。外国勢力が、情報機関や軍隊を使い、謀略や軍事的侵略を通じて、中国民主化を行うべきではありません。

ソ連は、性急な民主化を進めた結果、体制が崩壊しました。それを見た中国は、民主化に慎重です。

また、中国は、日本の沖縄・嘉手納基地を始め、周辺の多くのアメリカ軍の基地から常に軍事的威嚇・脅威を受けています。そのような状況では、中国は、ますます共産党政権に権力を集中し、国家防衛に努めることになります。



香港デモを通じたアメリカ・イギリスの内政干渉・侵略行為は、中国の民主化を何十年も遅らせることになります。

中国の民主化は、アジアに平和と安定が訪れ、外国勢力による内政干渉・侵略行為がなくなったときに、初めて進むことになるでしょう。


参照資料:
(1) "American Gov’t, NGOs Fuel and Fund Hong Kong Anti-Extradition Protests", June 13th 2019, MintPress

(2) "U.S. organization accused of funding violent HK protesters", August 8th 2019, CGTN

(3) 「香港の逃亡犯条例改正の『真の目的』」、2019年6月19日、WEDGE Infinity

(4) "Cathay Pacific C.E.O.’s Resignation Shows China’s Looming Power Over Hong Kong Unrest", August 16th 2019, The New York Times

(5) "US customs outage delays thousands of travelers in airports across country", August 17th 2019, The Guardian

(6) "China killed CIA sources, hobbled U.S. spying from 2010 to 2012: NYT", May 21st 2017, Reuters


註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
私自身は、いずれの政党・政治団体にも所属していません。あくまでも一人の市民として、個人として発言しています。民主主義と平和を実現するために発言しています。