【第1回「友愛政治とコミュニタリアニズム研究会」ー 新しい政治理念の確立を目指して】

6月4日、東京都文京区の鳩山会館(旧鳩山邸)で、第1回「友愛政治とコミュニタリアニズム研究会」が開催されました。

研究会は、東アジア共同体研究所理事長・元内閣総理大臣の鳩山友紀夫(由紀夫)さんと、市民政治バンド代表・元衆議院議員の首藤信彦さんが主宰し、千葉大学教授の小林正弥さんが講師を務められます。

研究会の目的は、混迷を深める日本政治、国際政治を打開するべく、日本の個人、社会、地域、アジアと世界を包含する新しい政治の理念と運動を作り出すことです。

その際、参考になるのが1990年代からアメリカで、混迷するリベラリズムに対して出現したコミュニタリアニズムです。これは、古い共同体への回帰を目指すものではなく、国家を超えた共同体の構成員として、「善い生き方」の実現も含めて正義を考え、新しい政治の理念を創り出す思想だそうです。

研究会では、講師の講義、そして、参加者の議論を通じ、新しい友愛政治を創建し、現実の状況の中から新たな活路を切り開いて行くことを目指しています。


photo.JPG
(写真出典: 首藤信彦さんの6月5日付FACEBOOK記事)


第1回の研究会では、冒頭、鳩山さんから研究会発足の趣旨についてのスピーチがありました。

鳩山さんのスピーチは、まず、2009年に政権交代が実現したにもかかわらず、その後、政権を維持出来なかったことが、現在の自公長期政権とその横暴を生み出すこととなり、責任を感じているという反省の言葉から始まりました。

その上で、鳩山さんは、それにしても、現在の自公政権の横暴は、もう見過ごしていられない、もう黙っていられない、何とかしなければならないという気持ちになってきたとおっしゃいました。

そのような状況の折、元衆議院議員の首藤信彦さんから、いつまで寝てるんですかと焚き付けられ、私も長い眠りから覚め、この研究会を発足させることにしました、と鳩山さんはおっしゃっていました。

鳩山さんのスピーチをすぐ間近でお聴きすると、やはりきわめて力強く、論理的で、説得力があると感じました。時折ユーモアも混じえつつ、何よりもひとつひとつの言葉に心がこもっています。ぜひ今後も公の場で、政府批判、そして、あるべき政治の姿を我々国民に訴えていただければと思います。

研究会では、小林教授から、友愛と正義、コミュニタリアニズムの政治哲学について講義があり、コミュニタリアニズムの大きな特色と他の政治思想との関係、「善き政治」の考え方、日本政治との関係、正義と友愛との関係、日本という文脈に沿ったコミュニタリアニズムの展開について説明がありました。

とくに、小林教授から、現在の日本は、安倍政権の下、民主主義の危機にあるが、逆に、危機を克服することを通じ、民主主義が大きく成長するチャンスでもあるとの指摘がありました。


photo.JPG
(写真出典: 首藤信彦さんの6月19日付FACEBOOK記事)


講義のあと、参加者から質問カードが提出され、小林教授から回答がありました。私からは、下記3点の質問をお尋ねしました。

1. 民主主義の機能不全の最大の原因として、国民一人一人が民主主義の原則を理解していないことがあると思います。国民一人一人が、「法の支配」「政府の説明責任」「司法の独立」「多数決の原則と少数者の権利の保護」「自由で公正な選挙」「立憲主義」「文民統制」「地方分権」「言論の自由」「国民の知る権利」「報道の自由」「刑事手続上の基本的人権」などの民主主義の諸原則を理解することが、民主主義を復活させると思います。

2. ドイツの市民政治教育センター(The Federal Agency for Civic Education: bpb)を含め、ドイツが民主主義のモデルとなると思います。

3. 欧米の民主主義の基盤には、他者を幸せにすることが自分の幸せであるというキリスト教の精神があると思います。

小林教授の講義のあと、鳩山さんから総括のスピーチがあり、鳩山さんは、個人的に、コミュニタリアニズムが国際社会に適用された場合、どう実現されて行くのかという点に関心があるとおっしゃっていました。

鳩山さんは、東アジア共同体研究所を発足させ、かねてより東アジア諸国がヨーロッパのEUのように共同体を形成することを提唱していらっしゃるので、その観点からのご関心と拝察いたしました。小林教授から、そのテーマについては、次回の第2回研究会で議論しますとの回答がありました。

今後も研究会は、おおよそ月1回のペースで開催されるそうです。

日本政治だけでなく、国際政治の混迷をも打開する、新しい政治理念と運動が、この研究会から生まれることが期待されます。