【小型のアメリカ化する日本 ー 日本版共和党と日本版民主党形成の可能性について】

メディアではほとんど報道されず、コメンテーターや学者のみなさんも指摘しませんが、日本の政治システムは、2000年代以降大きく変容しつつあります。

かつて戦後の日本政治においては、霞が関の官僚が絶大な権限を有し、事実上、日本の政治・行政の決定権を有していました。予算や法案の成立を含め、重要な決定は、各省の事務次官によって構成される事務次官会議で行われ、政治家は、単に官僚が決定した政策を追認し、国民に発表するという役割を果たしていました。国会において、政治家はほとんど答弁せず、事実上全ての答弁は官僚が行っていました。各省庁の人事権も官僚が有しており、大臣や与党は、各省庁の人事に介入出来ませんでした。官僚は絶大な権限を背景に、退官後、民間企業への天下りを行っていました。


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この官僚支配のシステムが変わり始めたのが、バブル崩壊以降の90年代であり、決定的な変化が生じたのが民主党による政権交代が実現した2009年以降でした。天下りに対する批判が高まるとともに、事務次官会議が廃止され、国会答弁も原則として政治家が行うようになりました。さらに、自公政権が成立したのち、2014年に内閣人事局が設置され、ついに各省庁の人事権も官僚から政治家に移りました。

その結果何が起こったかというと、アメリカ保守派の意向がよりダイレクトかつ迅速に反映される政治システムの成立でした。官僚が絶大な権限を有していた当時は、アメリカの意向は官僚制度を通じて実現されていました。そのプロセスは、複雑かつ曖昧で、非常に時間がかかりました。しかしながら、安倍政権の下、決定権は内閣に移り、アメリカは一握りの政治家を通じて、よりスピーディーかつダイレクトに、その意向を実現することが出来るようになりました。かつて絶大な権限を誇った官僚たちは、いまや首相の意思を忖度し、首相に気に入られるために認可や補助金を調整し、虚偽答弁や証拠隠滅まで行う下僕となりました。


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安倍政権下で、これまでアメリカ保守派が長年要求し続けていた集団的自衛権やスパイ防止法(特定秘密保護法、共謀罪法)が、次々と実現している背景もここにあります。

しかしながら、安倍政権も永久には続きません。現在の安倍政権は、日銀の株購入による人工的な株価釣り上げによって支えられており、そのバブルがはじけたとき、深刻な経済危機と通貨危機が生じるものと思われます。そして、その時に、政権交代が起こるものと思われます。

現在の野党は、今後、3つのグループに分かれて行くものと思われます。ひとつは、自公政権の補完勢力です。もうひとつは、官僚の勢力復活を目指すグループです。そして、もうひとつは、実質的には外国金融資本の利益を実現させるグループです。この中で、今後、3つ目のグループが主導権を握って行くものと思われます。

政権交代後の新政権は、財務省主計局が担ってきた予算編成権限を奪うため、アメリカ政府の行政管理予算局に相当する部局を内閣の直属機関として発足させるでしょう。内閣を構成する一部の政治家だけによって予算編成が行えるようになります。

その結果、日本は、「小型のアメリカ化」して行くことになります。自民党を中心とする「日本版共和党」と野党を中心とする「日本版民主党」の二大政党化が進むでしょう。

「日本版共和党」政権下では、アメリカ保守派=アメリカ軍産複合体の利益が実現され、「日本版民主党」政権下では、外国金融資本の利益が実現されることになります。

その場合、日本は、全てが小型のアメリカとなります。日本は、アメリカのコピー国家となります。


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ヘリコプター母艦を中心とする「小型の空母打撃群」が編成され、中東や南シナ海へ派遣されます。

「小型のNSA」が組織され、共謀罪法に基づき、国民のメールや通話が全て傍受されます。

「小型のカジノ街」が作られます。ただし、ラスベガスのように砂漠の中でなく、都市部の中にカジノ街が作られます。ギャンブルの勝ち負けに見せかけた、不明瞭なお金のやり取りが行われるようになります。

そして、日本企業はアメリカ多国籍企業の下請けとなり、働き方改革法の下、社員は、家畜のように働かされることになります。

自公政権下では、アメリカ保守派の意向がダイレクトに反映されましたが、やがて来る政権交代後の新政権下では、外国金融資本の意向がダイレクトに反映されることになるでしょう。

遅くとも2020年の東京オリンピック終了後、現在のバブルがはじけ、景気後退が始まり、株価下落と円安、金融不安、企業倒産が深刻化するでしょう。その結果、政権交代が起こり、新しい政権の下で、経営不安に陥った企業の救済が行われることになるでしょう。前回のバブル崩壊のときと同様、銀行・証券会社が経営不安に陥り、税金が投入され、救済策として、外国企業による吸収合併が実施されるでしょう。多くの日本企業が外国資本の傘下に入ることになるでしょう。日本は、外国資本による草刈り場となるでしょう。


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いずれにせよ、日本国民のみなさんが、現在のように政治に参加せず、政治に無関心であり続ける限り、現在の自公政権下であれ、あるいは政権交代後の新政権下であれ、外国勢力による支配は進行するでしょう。

たとえ政権交代が起こっても、ひとつの資本から別の資本へ権力のたらい回しが行われるだけでしょう。

日本国民のみなさんが、自由と権利、平和と独立を得たいのであれば、民主主義を進化させ、国民のみなさんが決定権を持つ必要があります。そのためには、ドイツのように、労働組合の活動を活発化させ、各地域に多様で活力のある中小企業を成立させ、地方政府の権限を強めるとともに、再生可能エネルギーを通じた、分散型の経済成長を実現させて行く必要があります。

民主主義は、共同行動です。自分ひとりが得をしようとするのでなく、みんなで協力して権利と自由を獲得して行く。それが、民主主義です。

国民が、自ら真実の情報を集め、自ら議論し、自ら決定する。それが、民主主義です。

日本国民のみなさんが民主主義を進化させ、決定権を持たない限り、たとえ政権交代が起こっても、今後も、官僚であれ、外国勢力であれ、国民のみなさん自身以外の勢力が決定権を持ち続けることになるでしょう。