【与党政権の安全保障政策が無知無策であることについて】

報道によると、自民党の菅官房長官は、衆議院の解散総選挙にともなう自民党の公約について、北朝鮮対策を最優先にすべきとの考えを示したそうです。

また、北朝鮮情勢については「話し合いでは物事は進まなくなっている」と述べ、北朝鮮に対し圧力をかけ続けていくことを強調したそうです。[1]

まったく客観的状況を理解していない、無能・無責任な発言であると思います。

圧力をかけ続けて、もし北朝鮮が暴発したらどうするのか、北朝鮮が日本にミサイルを打ち込んできたらどうするのか、それに対する回答がありません。

アメリカといっしょになって、日本が北朝鮮を挑発し、戦闘になった場合、北朝鮮のミサイルは、アメリカ本土にはほとんど到達しません。北朝鮮のミサイルが飛来するのは日本です。[2]

実際、北朝鮮が日本にミサイルを打ち込んだ場合、日本には守る手段がありません。

ミサイル防衛システムは、機能しません。パトリオット・ミサイルは、射程距離がわずか20キロしかなく、ごく狭い地域しかカバー出来ません。

また、イージス艦による迎撃も、北朝鮮が多数のミサイルを発射した場合、対応が不可能です。[3]

完全破壊されるのは、逆に、日本の首都機能であると思います。

仮に北朝鮮が核ミサイルだけでなく、炭疽菌などを搭載した数十発の生物兵器ミサイルを使用すれば、東京にある日本の官僚機構、保守派政党、大企業本社、メディア、広告代理店、金融システム、宗教法人、教育機関、等々を、全て抹殺し、破壊することが出来ます。日本が、その破壊から立ち直るには数十年かかるでしょう。永久に立ち直れないかも知れません。[4]

菅官房長官の発言は、いかに日本の政治家が、安全保障について無知無策であるかの証左であると思います。

言い換えると、彼らが、国民の命と安全を真剣に考えていないということであると思います。戦前・戦中と全く変わりません。そのような政治家・政権を支持する有権者も、無責任です。

アメリカが、世界各地の安全保障について責任を持つ時代は終わりつつあります。

2020年には、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国となると予想されています。アメリカは、やがて経済力でも、通常兵力でも、中国に叶わなくなります。また、国連総会におけるトランプ大統領の北朝鮮を完全破壊(TOTAL DESTRUCTION)するという、きわめて野蛮で残虐な演説により、アメリカは道義的にも正当性を失いました。アメリカは、北朝鮮の女性や子供も殺戮するつもりなのでしょうか?。

たとえアメリカが、北朝鮮を攻撃し、その戦闘能力を失わせても、アメリカには地上軍を派兵する力はありません。韓国軍も、自衛隊も、兵力不足です。

したがって、中国の人民解放軍が北朝鮮に進撃し、制圧することになるでしょう。

その結果、北朝鮮には、中国の事実上の傀儡政権が成立することになります。すでに中国の政治的・経済的な影響力が拡大している韓国と合わせて、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶでしょう。

そして、その後長期間にわたり、北朝鮮によるテロが、アメリカおよび日本に対し加えられるでしょう。

北朝鮮の完全破壊の可能性に言及したトランプ大統領に対し、ドイツのメルケル首相が明確に反対の立場を表明、北朝鮮問題は外交を通じた解決が唯一の解決であると明言しました。

中国の王毅外相は、国連総会で一般討論演説を行い、北朝鮮の核問題について、「交渉が唯一の解決策だ。当事者は互いの懸念に取り組むことで、歩み寄るべきだ」と述べ、対話解決を改めて訴えました。[5]

各地域の安全保障に関し、ドイツと中国、ロシアが主導権を取る時代に移り始めています。

日本は、民主主義を徹底しない限り、安全保障に関し、自立的に責任を持つことはないでしょう。仮に東アジアの覇権がアメリカから中国に移れば、今度は、中国にへつらう政権が生まれるでしょう。


参照資料:
(1) 「自民公約『北朝鮮対策を最優先に』」、FNNニュース、2017年9月21日

(2) "How North Korea Plans to Survive a U.S. Attack" by Daniel L. Davis, The National Interest, September 20th 2017

(3) "Could America Really Stop a North Korean Nuclear Missile Attack?" by Dave Majumdar, The National Interest, August 12th 2017

(4) 「金正恩ミサイルに日本の死者186万人のシミュレーション エスカレートする挑発行動」、週刊新潮、2017年4月20日号

(東京に北朝鮮の核ミサイルが着弾すれば42万人が死亡し、生物兵器(炭疽菌)を搭載したミサイルが着弾すれば186万人が死亡するというシュミレーションが示されています。)

(5) 「交渉が唯一の解決策」=北朝鮮問題で譲歩訴え-中国外相、時事通信、2017年9月21日