【民進党岡田前代表ブログへのコメント: トランプ次期政権の予想される国内・対外政策と日本のとるべき政策について】

民進党岡田克也前代表の11月10日付ブログ記事に、下記コメントを投稿したところ、掲載されましたので、ご紹介させて下さい。ちなみに、岡田克也事務所の秘書の方のお話によると、岡田前代表は、必ずブログに掲載されたコメントを読んでいらっしゃるそうです。

岡田前代表ブログの2016年11月10日付記事「米大統領選─大方の予想を裏切る結果、今は冷静に見守るしかない」は、こちらでご参照いただけます。

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BUSINESS LIBERALISMこと 松崎宣明
2016年11月20日 11:21 PM
1. 岡田前代表がおっしゃられている通り、アメリカの大統領選挙において、トランプ候補が勝利した背景には、アメリカの中での格差の拡大とグローバル化に対する反発があったと思います。NAFTAを始めとする自由貿易協定の結果、アメリカの製造業が海外に流出し、中間層の地盤沈下と白人貧困層の拡大が進行したことが背景にあると思われます。

そのため、当面、トランプ次期大統領は、国内の製造業の復活と雇用の拡大に専念することになると思われます。トランプ次期大統領は、勝利宣言の中で、大規模な国内のインフラ整備を行う計画を発表しました。

しかしながら、アメリカの連邦予算は、法律ですでに支出が決まっている項目(いわゆるENTITLEMENT)が、その大部分を占めます。たとえば、社会保障費が70%、防衛費が15%を占めます。そして、ここから、国債の利払いに必要な6%を差し引いた、残りの9%で、他の全ての連邦政府の仕事がまかなわれています。政府に大規模なインフラ整備を行う財源はありません。さらに、トランプ次期政権が、公約通り減税を行うとすれば、選択肢の幅はより狭くなります。

また、トランプ次期大統領は、国内の製造業を復活させるため、ドル安誘導政策をとるかも知れません。その場合、日本には円高不況が押し寄せ、日本の景気が悪化すると思われます。

2. 一方、対外政策の面では、トランプ次期政権は、ロシアおよび中国と同時に対抗する姿勢を改め、少なくともロシアとの関係融和を図ろうとすると思われます。ただ、たとえそうしたとしても、アメリカが、中国の経済的・軍事的拡大を抑え込むことは困難です。

そのため、トランプ次期政権は、日本に対し、より多くの軍事的役割と財政的負担を求めてくると思われます。選挙期間中、トランプ候補は、日本が財政的負担に応じない場合、日本に駐留している米軍の規模を縮小すると主張していました。

在日米軍縮小の話は、日本から財政的負担を引き出すための揺さぶりという見方もありますが、実は、全ての在日米軍基地は、すでに中国の中距離弾道ミサイルおよび巡航ミサイルの射程範囲内にあり、中国の先制攻撃による損害を避けるという意味で、アメリカが在日米軍の規模を縮小し、グアムやオーストラリアへ移転させることは、軍事的に合理性があります。

今後、日本の与党政権は、在日米軍の規模縮小の可能性を理由にして、自主防衛力の強化と自衛隊の増強を主張するかも知れません。さらに、その延長線上で、憲法を改正し、自衛隊を軍隊に改編することを主張するかも知れません。その場合、中国の中距離弾道ミサイル・巡航ミサイルに対抗するため、将来的に日本列島および南西諸島に中距離ミサイルが配備されることになるかも知れません。

これに対し、野党は、在日米軍の規模縮小の可能性があるからこそ、日本は中国との友好関係を速やかに回復する必要があると主張すべきです。尖閣諸島の領土問題を棚上げし、中国と正常な外交関係を回復する必要があります。軍事力ではなく、外交によって、日本の安全保障を実現して行く必要があります。

3. なお、エネルギー政策の面では、トランプ次期大統領は、石油・ガス産業および石炭産業の保護優遇政策を打ち出すと思われます。選挙期間中、石油・ガス産業および石炭産業は、トランプ候補を一貫して支援し続けました。その結果、残念なことに、アメリカは、再生可能エネルギー産業および電気・水素自動車関連産業の分野で立ち遅れることになると思われます。

4. 日本は、アメリカのエネルギー政策および対外政策にとらわれることなく、持続的成長につながる再生可能エネルギー産業や電気・水素自動車関連産業を成長の柱とするとともに、中国と良好な外交関係を回復し、拡大する中国消費市場の実需に基づく景気拡大を目指す必要があると思われます。


参照資料:
“The Crisis Nobody’s Talking About: America’s Entitlement Crunch”, Milton Ezrati, October 21, 2016, The National Interest