【秘密裡のTPP交渉は、特定利益のみを利することについて】

国会においてTPPに関する議論が始まりました。しかしながら、野党が求めた資料要求に対し、政府は真っ黒に塗りつぶされた資料しか示しませんでした。これでは、どういう経緯を経て、現在の結論に至ったのか、議論することすら全く不可能です。これまでのTPP交渉過程が明らかにされない限り、国会における本格的な議論、国民の理解は不可能であると思います。

政府が、TPP交渉についてさえ、ここまで秘密主義を採るとすれば、国家安全保障に関しては、まさに完全な秘密主義が貫かれるでしょう。これは、事実上の独裁であり、ファシズムです。

かつて、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は、ファシズムを次のように定義しました。

“The first truth is that the liberty of a democracy is not safe if the people tolerate the growth of private power to a point where it becomes stronger than their democratic state itself. That, in its essence, is fascism – ownership of government by an individual, by a group, or by any other controlling private power. ”
(もし人々が、私的所有に基づく経済力が民主主義国家よりも強力となることを許容すると、民主主義は危機に陥る。それは、本質的にファシズムである。個人、グループ、その他の私的力が、政府を所有することになるからである。)

TPPに関し、政府が交渉過程を明らかにしないということは、一部特定利益のために交渉が行われたということを示しています。富める者がますます富むために、交渉が行われたということを示しています。国民全体の福利のために交渉が行われたのであれば、国会・国民に対して公開して全く問題がないはずです。

そもそも現代において、外交は、より民主化されるべきです。かつての帝国主義の時代や冷戦時代のように、戦争が常態化していた時代においては、外交官や一部政治家に外交交渉の権限を集中させて、秘密裡に交渉を進める必要がありました。

しかしながら、冷戦が終わり、世界中の国々が市場経済とオープンな政治システムを採用する21世紀においては、より多くの国民が、国会を通じ、外交過程に参加・参画すべきです。外交に関し、情報が公開され、より多くの国民の声が、外交過程に反映されることを通じてこそ、国民全体の福利と平和が実現されます。

たとえば気候変動対策や再生可能エネルギー普及に関する交渉は、より多くの国民の声が交渉に反映されることで促進されると思われます。

また、日本が台中関係の平和的推移を側面支援し、アジアの平和を維持・実現するためにも、国民の声が外交に反映されるべきです。

ちなみに、私は、個人的に、TPPは、ISD条項等を含む、現在の内容のままでは、ブロック経済化を招く危険があると感じています。TPP参加国がアメリカを中心とする経済圏に糾合されるのに対し、AIIB(アジア・インフラ投資銀行)参加国が中国を中心とする経済圏に糾合される可能性があります。

実は、世界の貿易システムに関しては、すでに1995年にWTO(世界貿易機関)が設立され、自由貿易を原則とし、もし貿易上の紛争が起これば、紛争解決機関において解決される体制が確立しています。この現行のWTO体制ではなぜ不十分なのか、TPPがなぜ必要なのか、政府から十分な説明がありません。

日本は、中国、アメリカを始め、世界中の全ての国々との自由な貿易で成り立つ国です。性急かつ秘密裡のTPP交渉は、特定利益を利し、国民全体の福利を害すると思います。