【台中関係の平和的推移が、アジアの平和と日本の平和につながることについて】

3月17日、中国が、西アフリカの国ガンビアと国交を回復しました。ガンビアは、台湾を承認する数少ない国のひとつでしたが、すでに2013年、台湾との国交を閉ざし、いつでも中国と国交を回復出来る状態でした。しかし、中国は、中国に友好的な台湾の馬政権に配慮し、これまでガンビアと国交の回復をしていませんでした。[1]

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今回の中国とガンビアの国交回復は、5月に新総統に就任する独立派の蔡英文・民進党主席に対する、中国の先制パンチであり、警告と考えられます。台湾を承認する国が少なければ、台湾は独立に近づけないからです。

3月16日、中国の李克強首相は、全国人民代表大会の記者会見において、台湾が1992年合意を維持することが、台中間の良好な経済関係の前提であると述べました。

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言い換えると、仮に台湾の蔡英文新総統が、1992年合意で確認された「ひとつの中国」という原則を破棄し、「ふたつの中国」という立場を主張、台湾独立に近づけば、中国は、その報復として、台湾との経済関係の縮小も辞さないということになります。[2]

一方、台湾は、3月17日、フィリピンとの間で、両国の排他的経済水域を侵犯する外国漁船に対し、協力して厳しい取締りを行っていくことで合意しました。[3]

去る3月15日、アルゼンチンの警備艇が、アルゼンチンの排他的経済水域に侵入した中国の漁船を撃沈しました。仮に中国の漁船が、台湾の排他的経済水域に侵入、台湾の警備艇によって撃沈されれば、台中関係は一気に緊迫することとなります。

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日本は、中国・台湾に働きかけ、台中関係が平和的に推移するよう、常に最大限の外交努力を行うべきです。なぜなら、もし仮に台湾が独立を宣言し、中国が独立を阻止するために軍事的に介入、台湾危機が発生した場合、日本が、台湾危機に巻き込まれるからです。

3月末に施行される安保法制の下では、仮に台湾危機が発生し、台湾およびアメリカから要請があれば、日本は、台湾・アメリカとともに中国に対し攻撃を加えることになります。その場合、中国は、必ず、日本の自衛隊に対し反撃を加え、さらに、日本本土にある在日米軍基地や自衛隊基地へ攻撃を加えるでしょう。

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現在の与党政権は、中国との外交関係が良好ではありません。日中首脳会談さえままなりません。台中関係の平和的推移を醸成する能力がありません。むしろ、与党政権は、台中関係の緊迫を口実に、安保法制の正当化と憲法改正・憲法9条破棄を進めようとするでしょう。

これに対し、野党の民主党は、習近平主席と安倍首相の首脳会談が行われないときも、党の代表団を中国に派遣し、中国との対話に努めてきました。

来たる7月の参議院選挙、そして、それに続く衆議院選挙において野党が勝利し、安保法制を破棄するとともに、台中関係の平和的推移を促進出来る意思と能力を兼ね備えた政権を樹立することこそが、アジアの平和と日本の平和につながります。


参照資料:
(1) "With Gambia move, China ends diplomatic truce with Taiwan", Reuters, March 17, 2016

(2) "China's Li warns Taiwan trade ties need political stability", Reuters, March 16, 2016

(3) "Taiwan, Philippines to cooperate in striking at illegal fishing", Focus Taiwan, March 17, 2017