【国家安全保障に関するワークショップのまとめ文章】
去る1月14日、神奈川県茅ヶ崎市で、安全保障に関する勉強会を開催させていただきましたが、参加者のお一人の方が、2日後の16日、ご自身のSNSに、私のご報告のまとめの文章を掲載して下さいました。同まとめ文章は、私の報告の全体を再現しており、また、ニュアンスも、非常に正確に再現されています。そのため、引用をお願いさせていただいたところ、こころよくご承諾をいただきました。心より感謝申し上げます。つきましては、同まとめ文章を、下記の通り、引用させていただきますので、みなさま方におかれましては、ご参照をいただけましたら、幸いと存じ上げます。
なお、同まとめ文章は、1月14日時点での私のご報告のまとめであり、それ以降の事態の変化・進展にともない、私のご報告は時々刻々変化しておりますこと、ご了解下さい。
ありがとうございます。
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一昨日、安全保障についての勉強会に参加してきました。
20名ほどの参加者で、中には小さいお子さん連れの方も。
内容はわかりやすくて明確。講師は、大手総合商社に勤めた後、アメリカの大学院で民主主義と国家安全保障を学んだ、松崎宣明さんでした。
その内容は、アメリカ政府や有名なシンクタンクが公表している事実に基づくもので、
「アメリカの軍事・世界戦略」
「中国の軍事戦略」
「アメリカの対中軍事戦略」
「東アジア・東南アジアの4つの有事」
「神奈川県及び東京都への影響」
に分けてお話をお聞きしました。
この中で、特に興味深かったのは、「中国の軍事戦略」と「アメリカの対中軍事戦略」。
昔、冷戦時代のソ連とアメリカとのにらみ合いは、「対称戦争」と呼ばれ、つまりは「相手が○○の軍備をしたらこちらも○○に対抗する軍備を行う」といったものでしたが、
今、中国とアメリカのにらみ合いは、「非対称戦争」。
相手と同じことをして張り合うのではなく、中国はあくまで「接近阻止、領域拒否(A2AD)」、つまりは何が何でも国土は侵させないぞ、といったスタイルの軍事戦略で対抗するのだそうです。中国は長い歴史の中で、イギリスやドイツ、フランスや日本等から度々侵略を受けた歴史的背景があり、主権と領土を守るという意識がとても強いとのこと。
現在、中国は弾道ミサイルや巡航ミサイルを数百発以上持ち、射程距離に日本列島はすっぽり入る状態。来年には一千発以上となるそうです。嘉手納基地も、今度1兆円かけて作られようとしている辺野古基地も、戦争開始後わずか数時間の内に、弾道ミサイル各4発の着弾で使用不可能になるということです。
そして、それに対するアメリカの軍事戦略は、「エアーシーバトル(AirSea Battle)」。
これは3段階に分けて行われるもので、
まず第一は「退避」。字のごとく、最初の攻撃を耐える(かわす)ため、航空戦力を後方基地のテニアン、サイパン、パラオ等に分散、空母など特に主要な艦船等を、中国のミサイル射程の外に移動させるというものです。
なので当然、今ある日本の米軍基地は「もぬけの殻」となります。
第二に「遠距離から反撃を返す」。まずは相手の通信ネットワーク、レーダー、司令部機能等を破壊するといった、「相手をめくらにする=ブラインディング・キャンペーン」を行います。
また無人攻撃機などを使って反撃します。2023年までに、中国はドローンを4万機配備するので、それを破壊するための費用が少なくて済むレーザー兵器を開発します。
第三に「海上封鎖」。これもミサイル射程外の遠距離で行います。なぜなら、中国から飛んできたミサイルを迎撃できる確率は、今のアメリカの技術では約10~20%程で、ほぼ命中させることができないことがわかっているからです。そもそも退避するということが、迎撃できないことを表しています。迎撃できるなら、とどまって反撃するはずです。今、中国が南シナ海に人工島を作っていますが、それはこの島に軍事基地ではなく病院や学校を作って一般市民を住まわせ(攻撃できない状況を作り)、有事の際のアメリカの海上封鎖を防ぐためと推測されるそうです。
そこでまた先ほどのお話。今日、台湾では総統選が行われ、中国からの独立色の強い民進党候補、蔡英文(サイ・エイブン)候補が当選ほぼ確実となっています。
「接近阻止、領域拒否」の中国は、2005年に「反国家分裂法」を制定し、台湾が独立しようとした際は軍事的に介入しても良いことを明文化しました。
台湾とアメリカの間には「台湾関係法」による軍事協力があるため、台湾有事の時はアメリカが台湾に加勢します。また、実はここが一番驚きだったのですが、「安保法制は国民の注意をそらすための囮作戦だったのかもしれない」との指摘でした。たとえ政権交代が実現し、安保法制が廃棄されても、実は以前から日本に存在している法律が残ります。その名は「周辺事態法(1999年)」です。これがあると、こうした場合のアメリカの後方支援をすることになります。
この一連の流れを整理すると、
台湾独立運動→
中国の反発・武力行使→
中国・台湾戦争→
アメリカの参戦エアシーバトル(退避・遠距離攻撃・海上封鎖)→
日本がアメリカ軍の後方支援→
中国が日本にミサイル攻撃→
嘉手納基地・辺野古基地、神奈川だと横須賀・厚木・座間・相模原基地等に着弾、壊滅。
いつも日本の基地に駐屯している米兵は「退避」して、日本人を守るどころか、もはや影も形もない…。
アメリカは台湾有事をきっかけに中国共産党を揺さぶり、体制崩壊させるのが目的だし、中国はとにかく国土を失うことに絶対の拒絶感がある。
ここで今日の台湾総統選挙。結果は「独立」の勝ち。
何だか、怖いシナリオが着々と進んでいるようです。
「でも」と松崎さんは言いました。
「もし日本が市民力で民主主義を取り戻し、中国共産党の敵である『ファシズム』や『軍国主義』の復活を抑えることができたら、必ず中国に影響をもたらす。それを見せていくことが大切」
「戦争しなくてもポーランドのように時間をかければ、ラウンドテーブル方式(共産党政権と労働者・市民との間での話し合い)で必ず民主化はできる」
「日本はアメリカに従属して戦争参加してもミサイルから逃げることはできない。だったら、外交手腕を発揮して中国と台湾の関係改善に力を入れる方が絶対良い!」
なるほどです。今までは理屈じゃなくて本能的に叫んでいた自分自身の「反戦」が、リアルな世界情勢に裏打ちされるような手ごたえを感じた勉強会でした。
戦争は前よりずっと近くに迫っているように感じるけれど、それを防ぐんだという意識は、以前の数倍も目覚めてきたような気がしています。
企画してくださった方々、お誘いくださった方々、本当にありがとうございました!
以上
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参考資料
(1) The US-China Military Scorecard - RAND Corporation, 2015
(2) AirSea Battle - Center for Strategic and Budgetary Assessments, 2010

去る1月14日、神奈川県茅ヶ崎市で、安全保障に関する勉強会を開催させていただきましたが、参加者のお一人の方が、2日後の16日、ご自身のSNSに、私のご報告のまとめの文章を掲載して下さいました。同まとめ文章は、私の報告の全体を再現しており、また、ニュアンスも、非常に正確に再現されています。そのため、引用をお願いさせていただいたところ、こころよくご承諾をいただきました。心より感謝申し上げます。つきましては、同まとめ文章を、下記の通り、引用させていただきますので、みなさま方におかれましては、ご参照をいただけましたら、幸いと存じ上げます。
なお、同まとめ文章は、1月14日時点での私のご報告のまとめであり、それ以降の事態の変化・進展にともない、私のご報告は時々刻々変化しておりますこと、ご了解下さい。
ありがとうございます。
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一昨日、安全保障についての勉強会に参加してきました。
20名ほどの参加者で、中には小さいお子さん連れの方も。
内容はわかりやすくて明確。講師は、大手総合商社に勤めた後、アメリカの大学院で民主主義と国家安全保障を学んだ、松崎宣明さんでした。
その内容は、アメリカ政府や有名なシンクタンクが公表している事実に基づくもので、
「アメリカの軍事・世界戦略」
「中国の軍事戦略」
「アメリカの対中軍事戦略」
「東アジア・東南アジアの4つの有事」
「神奈川県及び東京都への影響」
に分けてお話をお聞きしました。
この中で、特に興味深かったのは、「中国の軍事戦略」と「アメリカの対中軍事戦略」。
昔、冷戦時代のソ連とアメリカとのにらみ合いは、「対称戦争」と呼ばれ、つまりは「相手が○○の軍備をしたらこちらも○○に対抗する軍備を行う」といったものでしたが、
今、中国とアメリカのにらみ合いは、「非対称戦争」。
相手と同じことをして張り合うのではなく、中国はあくまで「接近阻止、領域拒否(A2AD)」、つまりは何が何でも国土は侵させないぞ、といったスタイルの軍事戦略で対抗するのだそうです。中国は長い歴史の中で、イギリスやドイツ、フランスや日本等から度々侵略を受けた歴史的背景があり、主権と領土を守るという意識がとても強いとのこと。
現在、中国は弾道ミサイルや巡航ミサイルを数百発以上持ち、射程距離に日本列島はすっぽり入る状態。来年には一千発以上となるそうです。嘉手納基地も、今度1兆円かけて作られようとしている辺野古基地も、戦争開始後わずか数時間の内に、弾道ミサイル各4発の着弾で使用不可能になるということです。
そして、それに対するアメリカの軍事戦略は、「エアーシーバトル(AirSea Battle)」。
これは3段階に分けて行われるもので、
まず第一は「退避」。字のごとく、最初の攻撃を耐える(かわす)ため、航空戦力を後方基地のテニアン、サイパン、パラオ等に分散、空母など特に主要な艦船等を、中国のミサイル射程の外に移動させるというものです。
なので当然、今ある日本の米軍基地は「もぬけの殻」となります。
第二に「遠距離から反撃を返す」。まずは相手の通信ネットワーク、レーダー、司令部機能等を破壊するといった、「相手をめくらにする=ブラインディング・キャンペーン」を行います。
また無人攻撃機などを使って反撃します。2023年までに、中国はドローンを4万機配備するので、それを破壊するための費用が少なくて済むレーザー兵器を開発します。
第三に「海上封鎖」。これもミサイル射程外の遠距離で行います。なぜなら、中国から飛んできたミサイルを迎撃できる確率は、今のアメリカの技術では約10~20%程で、ほぼ命中させることができないことがわかっているからです。そもそも退避するということが、迎撃できないことを表しています。迎撃できるなら、とどまって反撃するはずです。今、中国が南シナ海に人工島を作っていますが、それはこの島に軍事基地ではなく病院や学校を作って一般市民を住まわせ(攻撃できない状況を作り)、有事の際のアメリカの海上封鎖を防ぐためと推測されるそうです。
そこでまた先ほどのお話。今日、台湾では総統選が行われ、中国からの独立色の強い民進党候補、蔡英文(サイ・エイブン)候補が当選ほぼ確実となっています。
「接近阻止、領域拒否」の中国は、2005年に「反国家分裂法」を制定し、台湾が独立しようとした際は軍事的に介入しても良いことを明文化しました。
台湾とアメリカの間には「台湾関係法」による軍事協力があるため、台湾有事の時はアメリカが台湾に加勢します。また、実はここが一番驚きだったのですが、「安保法制は国民の注意をそらすための囮作戦だったのかもしれない」との指摘でした。たとえ政権交代が実現し、安保法制が廃棄されても、実は以前から日本に存在している法律が残ります。その名は「周辺事態法(1999年)」です。これがあると、こうした場合のアメリカの後方支援をすることになります。
この一連の流れを整理すると、
台湾独立運動→
中国の反発・武力行使→
中国・台湾戦争→
アメリカの参戦エアシーバトル(退避・遠距離攻撃・海上封鎖)→
日本がアメリカ軍の後方支援→
中国が日本にミサイル攻撃→
嘉手納基地・辺野古基地、神奈川だと横須賀・厚木・座間・相模原基地等に着弾、壊滅。
いつも日本の基地に駐屯している米兵は「退避」して、日本人を守るどころか、もはや影も形もない…。
アメリカは台湾有事をきっかけに中国共産党を揺さぶり、体制崩壊させるのが目的だし、中国はとにかく国土を失うことに絶対の拒絶感がある。
ここで今日の台湾総統選挙。結果は「独立」の勝ち。
何だか、怖いシナリオが着々と進んでいるようです。
「でも」と松崎さんは言いました。
「もし日本が市民力で民主主義を取り戻し、中国共産党の敵である『ファシズム』や『軍国主義』の復活を抑えることができたら、必ず中国に影響をもたらす。それを見せていくことが大切」
「戦争しなくてもポーランドのように時間をかければ、ラウンドテーブル方式(共産党政権と労働者・市民との間での話し合い)で必ず民主化はできる」
「日本はアメリカに従属して戦争参加してもミサイルから逃げることはできない。だったら、外交手腕を発揮して中国と台湾の関係改善に力を入れる方が絶対良い!」
なるほどです。今までは理屈じゃなくて本能的に叫んでいた自分自身の「反戦」が、リアルな世界情勢に裏打ちされるような手ごたえを感じた勉強会でした。
戦争は前よりずっと近くに迫っているように感じるけれど、それを防ぐんだという意識は、以前の数倍も目覚めてきたような気がしています。
企画してくださった方々、お誘いくださった方々、本当にありがとうございました!
以上
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参考資料
(1) The US-China Military Scorecard - RAND Corporation, 2015
(2) AirSea Battle - Center for Strategic and Budgetary Assessments, 2010
