【集団的自衛権行使・後方支援活動拡大にともなうリスクの客観的評価について】
5月20日に行なわれた党首討論において、そして、5月27日より開始された衆院平和安全法制特別委員会において、安倍首相も、中谷防衛大臣も、安保法制に基づき集団的自衛権が行使されても、また、後方支援活動が拡大されても、自衛隊のリスクは増えないと繰り返し繰り返し強弁しました。したがって、安倍内閣の立場は、きわめて明確になったと思います。集団的自衛権が行使されても、後方支援活動が拡大されても、自衛隊のリスクは増えない、これが安倍内閣の立場です。安倍内閣は、リスクを考慮せず、自衛隊を出すことばかり考えています。
そのため、このタイミングで、自衛隊の統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長を、国会の特別委員会または野党の部門会議に召喚し、集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、客観的に自衛隊のリスクが増えるか否か証言させるということが考えられると思います。
民主主義の下、軍人(自衛隊員)は、選挙で選ばれた政治家(文民)に対し、取りうる軍事的オプションや戦略、戦術、想定されるリスクなど、軍事に関するアドバイスを行ないます。そして、政治家が行なった決定を軍人(自衛隊員)は遂行します。
客観的なリスクの評価は、あらゆる軍事行動の基本であり、前提です。軍事行動にともなう客観的なリスクの評価は、最も基本的な、自衛隊の職務であり責任です。
もし仮に統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長が、集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、自衛隊のリスクが増加すると証言した場合、内閣提出法案である安保法制を取りまとめる過程において、最高責任者の首相も、担当大臣も、各幕僚長の助言を得ず、リスクを認識していなかったということになります。
言い換えると、安保法制は、客観的なリスクを考慮に入れていない欠陥法案であるということが明確になり、安保法制を叩き潰すことが出来ます。
逆に、もし仮に統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長が、集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、自衛隊のリスクは増加しない、あるいは、判断出来ないと証言した場合、自衛隊の組織自体が崩壊します。部下の命を預かる自衛隊のトップが、部下の負うリスクについて、浅薄な認識しか有していないことが明確になるからです。隊員のモラルは地に堕ち、除隊希望者が増加し、志願者数は激減するでしょう。部下のリスクを評価出来ないトップの下、自衛隊の海外派遣は不可能です。
さらに、リスクが増大するのは、自衛隊だけではありません。集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、沖縄を含む日本本土、日本国民へのリスクが飛躍的に増大します。沖縄を含む日本本土への攻撃、テロ、破壊工作のリスクが増大します。自衛隊基地、米軍基地に対する攻撃、テロ、破壊工作のリスクが増大します。原発など脆弱な施設に対する攻撃、テロ、破壊工作のリスクが増大します。無差別テロのリスクも増大します。また、これにともない、通商や経済活動へ及ぶ悪影響、株式市場や国債に及ぶ悪影響など、経済的リスクも増大します。
集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともなう、これら全てのリスクを洗い出すことからやり直すべきです。特別委員会で、全てのリスクを洗い出す必要があります。これは数週間・数ヶ月で終わる作業ではありません。何年もかかる作業です。
国民の前で集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともなうリスクの増大が明らかになるにつれ、軍事よりも外交が優先されるべきことが明らかとなるでしょう。
安倍政権が進めている憲法違反の安全保障政策は、特定利益だけを利し、日本国民の利益を損ないます。アジアの平和も損ないます。
野党は、安倍内閣を倒すため、内閣不信任案を提出し、国会の外で、国民の先頭に立って、倒閣運動を開始すべきです。
そして、国民のために、新しい内閣を樹立し、憲法遵守の下、本当の安全保障政策を始める必要があります。
日本における政権交代ののち、憲法に反する、集団的自衛権に関する閣議決定、安保法制、ガイドラインは、全て廃棄される必要があります。
また、憲法に反する、集団的自衛権および安保法制の推進に携わった官僚は、全て更迭・懲戒免職処分される必要があります。
軍事よりも外交・経済が優先されるべきです。軍拡競争ではなく、軍縮が提案されるべきです。
国民は、それぞれの立場で、安倍内閣を倒すために出来ることを、直ちに始めるべきです。
参照資料:
(1) "U.S. Forces: Challenges Ahead", Colin L. Powell, Foreign Affairs, Winter 1992/93
(2) "Powell Doctrine", Wikipedia as of June 1, 2015
アメリカの統合参謀本部議長を務め、その後、国務長官を務めた、コリン・パウエル(COLIN POWELL)は、ベトナム戦争の苦い経験に基づき、アメリカが軍事的行動を検討する際の要件として、パウエル・ドクトリンを定式化しました。同要件は、より一般的に、防衛政策を議論・検討する際の指針としても、有効と思われますので、ご参考まで、ご紹介させて下さい。
ひとつひとつの要件を当てはめていくと、現在の日本の安全保障に関する議論が、いかに不十分であるか、ご理解いただけると思います。
「The Powell Doctrine (パウエル・ドクトリンの8要件)」
The Powell Doctrine states that a list of questions all have to be answered affirmatively before military action is taken by the United States:
(国家が軍事的行動を行なう際は、以下の全ての要件を充たすことが、必要である。)
(1) Is a vital national security interest threatened? (きわめて重大な国家安全保障上の利益が脅かされているか?。)
(2) Do we have a clear attainable objective? (明確かつ達成可能な目的が定められているか?。)
(3) Have the risks and costs been fully and frankly analyzed? (軍事的行動にともなう、リスクおよびコストは、十分かつ率直に分析されたか?。)
(4) Have all other non-violent policy means been fully exhausted? (他の全ての非軍事的政策手段は、徹底的に追求されたか?。)
(5) Is there a plausible exit strategy to avoid endless entanglement? (際限のない軍事的関与を避けるための、実行可能な出口戦略は存在するか?。)
(6) Have the consequences of our action been fully considered? (軍事的行動がもたらす結果・影響は、十分に検討されたか?。)
(7) Is the action supported by the American people? (軍事的行動は、国民の支持を得ているか?。)
(8) Do we have genuine broad international support? (軍事的行動は、国際社会の、広範かつ真の支持を得ているか?。)
以上
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
5月20日に行なわれた党首討論において、そして、5月27日より開始された衆院平和安全法制特別委員会において、安倍首相も、中谷防衛大臣も、安保法制に基づき集団的自衛権が行使されても、また、後方支援活動が拡大されても、自衛隊のリスクは増えないと繰り返し繰り返し強弁しました。したがって、安倍内閣の立場は、きわめて明確になったと思います。集団的自衛権が行使されても、後方支援活動が拡大されても、自衛隊のリスクは増えない、これが安倍内閣の立場です。安倍内閣は、リスクを考慮せず、自衛隊を出すことばかり考えています。
そのため、このタイミングで、自衛隊の統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長を、国会の特別委員会または野党の部門会議に召喚し、集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、客観的に自衛隊のリスクが増えるか否か証言させるということが考えられると思います。
民主主義の下、軍人(自衛隊員)は、選挙で選ばれた政治家(文民)に対し、取りうる軍事的オプションや戦略、戦術、想定されるリスクなど、軍事に関するアドバイスを行ないます。そして、政治家が行なった決定を軍人(自衛隊員)は遂行します。
客観的なリスクの評価は、あらゆる軍事行動の基本であり、前提です。軍事行動にともなう客観的なリスクの評価は、最も基本的な、自衛隊の職務であり責任です。
もし仮に統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長が、集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、自衛隊のリスクが増加すると証言した場合、内閣提出法案である安保法制を取りまとめる過程において、最高責任者の首相も、担当大臣も、各幕僚長の助言を得ず、リスクを認識していなかったということになります。
言い換えると、安保法制は、客観的なリスクを考慮に入れていない欠陥法案であるということが明確になり、安保法制を叩き潰すことが出来ます。
逆に、もし仮に統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長が、集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、自衛隊のリスクは増加しない、あるいは、判断出来ないと証言した場合、自衛隊の組織自体が崩壊します。部下の命を預かる自衛隊のトップが、部下の負うリスクについて、浅薄な認識しか有していないことが明確になるからです。隊員のモラルは地に堕ち、除隊希望者が増加し、志願者数は激減するでしょう。部下のリスクを評価出来ないトップの下、自衛隊の海外派遣は不可能です。
さらに、リスクが増大するのは、自衛隊だけではありません。集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともない、沖縄を含む日本本土、日本国民へのリスクが飛躍的に増大します。沖縄を含む日本本土への攻撃、テロ、破壊工作のリスクが増大します。自衛隊基地、米軍基地に対する攻撃、テロ、破壊工作のリスクが増大します。原発など脆弱な施設に対する攻撃、テロ、破壊工作のリスクが増大します。無差別テロのリスクも増大します。また、これにともない、通商や経済活動へ及ぶ悪影響、株式市場や国債に及ぶ悪影響など、経済的リスクも増大します。
集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともなう、これら全てのリスクを洗い出すことからやり直すべきです。特別委員会で、全てのリスクを洗い出す必要があります。これは数週間・数ヶ月で終わる作業ではありません。何年もかかる作業です。
国民の前で集団的自衛権の行使および後方支援活動の拡大にともなうリスクの増大が明らかになるにつれ、軍事よりも外交が優先されるべきことが明らかとなるでしょう。
安倍政権が進めている憲法違反の安全保障政策は、特定利益だけを利し、日本国民の利益を損ないます。アジアの平和も損ないます。
野党は、安倍内閣を倒すため、内閣不信任案を提出し、国会の外で、国民の先頭に立って、倒閣運動を開始すべきです。
そして、国民のために、新しい内閣を樹立し、憲法遵守の下、本当の安全保障政策を始める必要があります。
日本における政権交代ののち、憲法に反する、集団的自衛権に関する閣議決定、安保法制、ガイドラインは、全て廃棄される必要があります。
また、憲法に反する、集団的自衛権および安保法制の推進に携わった官僚は、全て更迭・懲戒免職処分される必要があります。
軍事よりも外交・経済が優先されるべきです。軍拡競争ではなく、軍縮が提案されるべきです。
国民は、それぞれの立場で、安倍内閣を倒すために出来ることを、直ちに始めるべきです。
参照資料:
(1) "U.S. Forces: Challenges Ahead", Colin L. Powell, Foreign Affairs, Winter 1992/93
(2) "Powell Doctrine", Wikipedia as of June 1, 2015
アメリカの統合参謀本部議長を務め、その後、国務長官を務めた、コリン・パウエル(COLIN POWELL)は、ベトナム戦争の苦い経験に基づき、アメリカが軍事的行動を検討する際の要件として、パウエル・ドクトリンを定式化しました。同要件は、より一般的に、防衛政策を議論・検討する際の指針としても、有効と思われますので、ご参考まで、ご紹介させて下さい。
ひとつひとつの要件を当てはめていくと、現在の日本の安全保障に関する議論が、いかに不十分であるか、ご理解いただけると思います。
「The Powell Doctrine (パウエル・ドクトリンの8要件)」
The Powell Doctrine states that a list of questions all have to be answered affirmatively before military action is taken by the United States:
(国家が軍事的行動を行なう際は、以下の全ての要件を充たすことが、必要である。)
(1) Is a vital national security interest threatened? (きわめて重大な国家安全保障上の利益が脅かされているか?。)
(2) Do we have a clear attainable objective? (明確かつ達成可能な目的が定められているか?。)
(3) Have the risks and costs been fully and frankly analyzed? (軍事的行動にともなう、リスクおよびコストは、十分かつ率直に分析されたか?。)
(4) Have all other non-violent policy means been fully exhausted? (他の全ての非軍事的政策手段は、徹底的に追求されたか?。)
(5) Is there a plausible exit strategy to avoid endless entanglement? (際限のない軍事的関与を避けるための、実行可能な出口戦略は存在するか?。)
(6) Have the consequences of our action been fully considered? (軍事的行動がもたらす結果・影響は、十分に検討されたか?。)
(7) Is the action supported by the American people? (軍事的行動は、国民の支持を得ているか?。)
(8) Do we have genuine broad international support? (軍事的行動は、国際社会の、広範かつ真の支持を得ているか?。)
以上
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。