【国家安全保障の目的と、その目的を実現するための手段としての外交政策および防衛政策について ー 集団的自衛権に関する法律構成の議論と実態面の議論】
1. 2月の予算委員会における、集団的自衛権に関する野党委員と政府との激しい議論が契機となり、与党内、そして、与党間において、さらに野党からも見解が表明され、国民に見える形で、集団的自衛権に関する議論が行なわれるようになりました。
今後、各党においては、国会の内外において、ぜひ本格的な国家安全保障(NATIONAL SECURITY)に関する議論を展開していただきたいと思っています。
2. 日本の国民のみなさん、とくに若い世代のみなさんは、国家安全保障の議論に慣れていません。そのため、そもそも国家安全保障の目的は何か、そして、その目的を実現する手段は何か、という観点から、国民のみなさんに分かりやすく議論を進めていただきたいと思っています。
残念ながら、現在の各党の議論を見ていると、集団的自衛権を認めるか否かという論点に焦点が当たり過ぎている気がします。目的が明確にされないまま、いきなり手段の議論に入ってしまっているという気がします。そのため、議論に絞りがかからず、「地球の裏側」での集団的自衛権行使にまで言及する方もいるようです。
3. 一般的に、そもそも国家安全保障の目的は、「平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守る」ということにあります。国家安全保障の目的は、敵を殲滅することではありません。
このため、国家安全保障の手段は、軍事だけでなく、外交や諜報活動(情報収集)を含みます。平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守るという目的を実現するため、外交、諜報活動、軍事、等々の手段を的確に選択し、行使することが必要となります。
4. 今後の議論においては、まず国家安全保障の目的が、「平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守る」ことであるということを、しっかり確認し、国民のみなさんの前で明確にすることが大切だと思います。
目的を明確にしないまま、いくら手段の議論をしても、正しい決定に至ることは、論理的に不可能です。手段の正しさは、目的の実現性に照らしてのみ、合理的に、判断・評価することが可能だからです。
なお、この目的については、与野党間で認識の共有が可能だと思います。目的に関する与野党間の共通認識を基盤にして、次に、その目的を実現するための手段として、何がもっとも好適か、という議論に移るべきだと思います。
5. 一方、手段に関して言えば、私は、まず各党は、中国との対立を解決し、平和を維持するために、日本は外交的手段を十分尽くしているのか、という議論を行なうべきであると思っています。
報道によると、台湾の馬英九総統は、深刻化しつつある日本と中国の対立状態を憂慮し、領土問題に関し、いわゆる棚上げ論への回帰を提案したそうです。
そして、その馬英九総統の主張を、中国の新華社通信(XINHUA)が報道しました。このことは、中国が棚上げ論への回帰を望んでいるということを表していると思います。
そのため、私は、国家安全保障の目的を実現するための手段のうち、まず外交による問題の解決を徹底的に追求すべきであると思っています。日本側から、尖閣諸島問題の棚上げ論を含む具体的提案があれば、中国は必ず話し合いに応じます。
3月下旬、民主党から、中川正春、渡辺周両幹事長代行と細野豪志前幹事長が中国へ派遣され、また、岡田克也前副総理が上海市を訪問し、野田佳彦前首相が香港で講演を行ないました。
報道によると、中川、渡辺両幹事長代行と細野前幹事長は、北京で中国の唐家璇・元外相や劉建超外務次官補らと相次いで会談したと伝えられています。そして、その際、中国側は、安倍首相の靖国神社参拝を批判した上で、「神社への参拝自体ではなく、首相が(神社に合祀〈ごうし〉された)A級戦犯を参拝することを懸念している」と主張したと伝えられています。
また、双方は、尖閣諸島をめぐって不測の事態が起きないよう、日中間で「危機管理メカニズム」が必要だとの認識で一致し、今後は中国共産党の外交を担う中央対外連絡部を通じ、政党間交流を活発にしていくことで合意したと伝えられています。
一方、報道によると、公明党の山口那津男代表は、4月4日、テレビ番組収録の中で、安倍首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認に関連し、関係が冷え込む中国や韓国を念頭に、「環境改善に向けてもっと外交的な努力をする。そっちの方が先だ。」と指摘したそうです。「集団的自衛権ばかりが注目されているが、外交や経済、人の交流などいろいろなことを重ねるべきだ。」と発言したそうです。
また、公明党の山口代表は、集団的自衛権の行使容認について、「海外での武力行使を認めることにつながる。」とも発言しています。
私は、民主党と公明党は、与野党の違いはありますが、国家安全保障の分野において、政策的に協力出来る部分があると思います。
今後、野党は、集団的自衛権の容認を進めようとする政府に対し、各党間の幅広い連携を追求し、中国との間の「危機管理メカニズム」の構築など、外交的手段による問題の解決を、強く主張して行っていただきたいと思っています。
6. そして、その上で、それを踏まえて、万一の場合に備え、国家安全保障の目的を実現するための、他の手段である、防衛政策についても、議論を行なう必要があると思います。そして、集団的自衛権に関する議論は、ここに位置付けられます。
防衛政策を考える上で、もっとも重要な概念は、バランス・オブ・パワー(BALANCE OF POWER)です。たとえどんなに友好的な国でも、政権交代や政変により、敵対的となる可能性があります。そのため、万一の場合に備え、軍事力の面で、客観的なバランス・オブ・パワーを常に維持しておく必要があります。
周辺国に対する、日本およびアメリカの、東アジアにおけるバランス・オブ・パワーが、今後どう推移するかについての、冷静で、客観的な議論が必要です。
集団的自衛権に関する、これまでの各党の議論を見ていると、そのほとんどが、集団的自衛権容認のための「法律構成」に関する議論に終始しています。現在、自民党が主張している集団的自衛権の限定的容認は、非常に幅のある概念だと思います。また、今後は、日本周辺における、いわゆる「米艦防護」の事例などについて、個別的自衛権で、対応出来るのではないかという点も議論する必要があると思います。
しかしながら、法律構成とともに、そして、それ以上に重要なのが、実態面として、国家安全保障の目的である「平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守る」ため、軍事的に日米の協働を必要とする、差し迫った、切迫した状況がはたして存在するのか、という議論であると思います。残念ながら、この点に関する議論は、現在、ほとんど行なわれていません。
自民党の高村正彦副総裁は、中国の軍事予算が年々増加しているという事実を指摘していました。しかしながら、軍事予算の増加という一般的な事実の指摘だけでは不十分です。具体的に、東アジア、東シナ海における、バランス・オブ・パワーを、緻密に、詳細に、客観的に検証する必要があります。
そのためには、選挙で選ばれた政治家のみなさんを補佐し、軍事の面でアドバイスを行なうことを職務とする、自衛隊の統合幕僚監部、あるいは、海上幕僚監部に対し、水陸機動団の創設など、最新の自衛隊の編成状況を含め、国会での意見陳述を求めることも考えられるかも知れません。
さらに、今後のアメリカの防衛予算の推移に関し、また、日本とアメリカとの協働の必要性の有無に関し、アメリカのシンクタンク、あるいは、アメリカ軍の在日米軍司令部ないし太平洋艦隊司令部に対し、国会での意見陳述を求めることも考えられるかも知れません。
ちなみに、日本が尖閣諸島を国有化したことに対抗し、中国は防空識別圏を設定しました。そのため、私は、仮に日本が憲法解釈の変更により、集団的自衛権の行使を容認すれば、中国は、必ずこれに対する対抗措置を取ると予想しています。それは、日本の予想を超える非常に厳しい対抗措置になるかも知れません。
この点、報道によると、防衛省の附属機関である「防衛研究所」は、4月4日、東アジアの安全保障情勢に関する年次報告書=「東アジア戦略概観」を発表し、日本と中国の関係などを念頭に「自国の安全を高めようとする国防力の増強や対外的な安全保障関係の強化が、他国にとっては脅威や懸念と見なされ、対抗的な政策を引き起こす」と分析しています。さらに、「結果的に軍事的緊張関係が高まり、安全保障環境の悪化を招く」という悪循環の危険性を指摘したうえで、「首脳レベルの戦略対話」や「危機管理メカニズムの構築」「防衛交流」といった外交交渉の必要性を強調しています。
シビリアン・コントロールに関する古典的名著である、「THE SOLDIER AND THE STATE」の中で、SAMUEL P. HUNTINGTONは、本来の、あるべきPROFESSIONAL SOLDIER(職業軍人)は、軍事に関し、好戦的ではなく、抑制的に行動すると述べていますが、中国の対抗的措置を予測し、外交交渉の必要性を強調した、防衛研究所の今回の報告は、その意味で、まさにPROFESSIONAL SOLDIERの名に値するものであると思います。彼らを、ぜひ国会に呼んで、意見陳述させるべきであると思います。
外交的手段による対立関係の解消が可能であるにもかかわらず、また、実態面において、差し迫った、切迫した状況が存在しないにもかかわらず、日本が前のめりに集団的自衛権の行使を容認すれば、かえって中国の厳しい対抗措置を誘引し、結果として、日本の国家安全保障を大きく損なう危険性があります。
7. 国家安全保障という大きな議論の下、平和の維持と国民の生命・権利・自由を守るという目的を実現するために、まず外交を通じた問題の解決を徹底的に追求し、その上で、それを踏まえて、あくまでも、万一の場合に備え、客観的に戦力のバランスを保つという位置付けの下で、集団的自衛権の議論を冷静に行なうことが大切だと思います。
参考資料:
1. 「馬英九総統が『3つの主張』、中国本土と日本に東シナ海問題の『棚上げ』呼び掛ける―中国メディア」2014年2月27日付XINHUA.JP配信記事
2. 「民主党議員団が訪中 元外相らと会談」2014年3月21日付日本経済新聞記事
3. 「公明代表『外交努力が先だ』 集団的自衛権の行使容認」2014年4月4日付産経新聞記事
4. 「『海外での武力行使に…』集団的自衛権、公明は慎重」2014年4月14日付テレビ朝日系(ANN)配信記事
5. 「防衛研『防衛力増強が相手の対抗策引き起こす』」2014年4月5日付TBS(JNN)配信記事
6. 「東アジア戦略概観 2014」防衛省 防衛研究所
(国防力の増強や対外的な安全保障関係の強化が、他国の対抗的な政策を引き起こす危険性については、「序章 2013年の東アジア」の中に、その記述があります。)
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。
1. 2月の予算委員会における、集団的自衛権に関する野党委員と政府との激しい議論が契機となり、与党内、そして、与党間において、さらに野党からも見解が表明され、国民に見える形で、集団的自衛権に関する議論が行なわれるようになりました。
今後、各党においては、国会の内外において、ぜひ本格的な国家安全保障(NATIONAL SECURITY)に関する議論を展開していただきたいと思っています。
2. 日本の国民のみなさん、とくに若い世代のみなさんは、国家安全保障の議論に慣れていません。そのため、そもそも国家安全保障の目的は何か、そして、その目的を実現する手段は何か、という観点から、国民のみなさんに分かりやすく議論を進めていただきたいと思っています。
残念ながら、現在の各党の議論を見ていると、集団的自衛権を認めるか否かという論点に焦点が当たり過ぎている気がします。目的が明確にされないまま、いきなり手段の議論に入ってしまっているという気がします。そのため、議論に絞りがかからず、「地球の裏側」での集団的自衛権行使にまで言及する方もいるようです。
3. 一般的に、そもそも国家安全保障の目的は、「平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守る」ということにあります。国家安全保障の目的は、敵を殲滅することではありません。
このため、国家安全保障の手段は、軍事だけでなく、外交や諜報活動(情報収集)を含みます。平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守るという目的を実現するため、外交、諜報活動、軍事、等々の手段を的確に選択し、行使することが必要となります。
4. 今後の議論においては、まず国家安全保障の目的が、「平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守る」ことであるということを、しっかり確認し、国民のみなさんの前で明確にすることが大切だと思います。
目的を明確にしないまま、いくら手段の議論をしても、正しい決定に至ることは、論理的に不可能です。手段の正しさは、目的の実現性に照らしてのみ、合理的に、判断・評価することが可能だからです。
なお、この目的については、与野党間で認識の共有が可能だと思います。目的に関する与野党間の共通認識を基盤にして、次に、その目的を実現するための手段として、何がもっとも好適か、という議論に移るべきだと思います。
5. 一方、手段に関して言えば、私は、まず各党は、中国との対立を解決し、平和を維持するために、日本は外交的手段を十分尽くしているのか、という議論を行なうべきであると思っています。
報道によると、台湾の馬英九総統は、深刻化しつつある日本と中国の対立状態を憂慮し、領土問題に関し、いわゆる棚上げ論への回帰を提案したそうです。
そして、その馬英九総統の主張を、中国の新華社通信(XINHUA)が報道しました。このことは、中国が棚上げ論への回帰を望んでいるということを表していると思います。
そのため、私は、国家安全保障の目的を実現するための手段のうち、まず外交による問題の解決を徹底的に追求すべきであると思っています。日本側から、尖閣諸島問題の棚上げ論を含む具体的提案があれば、中国は必ず話し合いに応じます。
3月下旬、民主党から、中川正春、渡辺周両幹事長代行と細野豪志前幹事長が中国へ派遣され、また、岡田克也前副総理が上海市を訪問し、野田佳彦前首相が香港で講演を行ないました。
報道によると、中川、渡辺両幹事長代行と細野前幹事長は、北京で中国の唐家璇・元外相や劉建超外務次官補らと相次いで会談したと伝えられています。そして、その際、中国側は、安倍首相の靖国神社参拝を批判した上で、「神社への参拝自体ではなく、首相が(神社に合祀〈ごうし〉された)A級戦犯を参拝することを懸念している」と主張したと伝えられています。
また、双方は、尖閣諸島をめぐって不測の事態が起きないよう、日中間で「危機管理メカニズム」が必要だとの認識で一致し、今後は中国共産党の外交を担う中央対外連絡部を通じ、政党間交流を活発にしていくことで合意したと伝えられています。
一方、報道によると、公明党の山口那津男代表は、4月4日、テレビ番組収録の中で、安倍首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認に関連し、関係が冷え込む中国や韓国を念頭に、「環境改善に向けてもっと外交的な努力をする。そっちの方が先だ。」と指摘したそうです。「集団的自衛権ばかりが注目されているが、外交や経済、人の交流などいろいろなことを重ねるべきだ。」と発言したそうです。
また、公明党の山口代表は、集団的自衛権の行使容認について、「海外での武力行使を認めることにつながる。」とも発言しています。
私は、民主党と公明党は、与野党の違いはありますが、国家安全保障の分野において、政策的に協力出来る部分があると思います。
今後、野党は、集団的自衛権の容認を進めようとする政府に対し、各党間の幅広い連携を追求し、中国との間の「危機管理メカニズム」の構築など、外交的手段による問題の解決を、強く主張して行っていただきたいと思っています。
6. そして、その上で、それを踏まえて、万一の場合に備え、国家安全保障の目的を実現するための、他の手段である、防衛政策についても、議論を行なう必要があると思います。そして、集団的自衛権に関する議論は、ここに位置付けられます。
防衛政策を考える上で、もっとも重要な概念は、バランス・オブ・パワー(BALANCE OF POWER)です。たとえどんなに友好的な国でも、政権交代や政変により、敵対的となる可能性があります。そのため、万一の場合に備え、軍事力の面で、客観的なバランス・オブ・パワーを常に維持しておく必要があります。
周辺国に対する、日本およびアメリカの、東アジアにおけるバランス・オブ・パワーが、今後どう推移するかについての、冷静で、客観的な議論が必要です。
集団的自衛権に関する、これまでの各党の議論を見ていると、そのほとんどが、集団的自衛権容認のための「法律構成」に関する議論に終始しています。現在、自民党が主張している集団的自衛権の限定的容認は、非常に幅のある概念だと思います。また、今後は、日本周辺における、いわゆる「米艦防護」の事例などについて、個別的自衛権で、対応出来るのではないかという点も議論する必要があると思います。
しかしながら、法律構成とともに、そして、それ以上に重要なのが、実態面として、国家安全保障の目的である「平和を維持し、国民の生命・権利・自由を守る」ため、軍事的に日米の協働を必要とする、差し迫った、切迫した状況がはたして存在するのか、という議論であると思います。残念ながら、この点に関する議論は、現在、ほとんど行なわれていません。
自民党の高村正彦副総裁は、中国の軍事予算が年々増加しているという事実を指摘していました。しかしながら、軍事予算の増加という一般的な事実の指摘だけでは不十分です。具体的に、東アジア、東シナ海における、バランス・オブ・パワーを、緻密に、詳細に、客観的に検証する必要があります。
そのためには、選挙で選ばれた政治家のみなさんを補佐し、軍事の面でアドバイスを行なうことを職務とする、自衛隊の統合幕僚監部、あるいは、海上幕僚監部に対し、水陸機動団の創設など、最新の自衛隊の編成状況を含め、国会での意見陳述を求めることも考えられるかも知れません。
さらに、今後のアメリカの防衛予算の推移に関し、また、日本とアメリカとの協働の必要性の有無に関し、アメリカのシンクタンク、あるいは、アメリカ軍の在日米軍司令部ないし太平洋艦隊司令部に対し、国会での意見陳述を求めることも考えられるかも知れません。
ちなみに、日本が尖閣諸島を国有化したことに対抗し、中国は防空識別圏を設定しました。そのため、私は、仮に日本が憲法解釈の変更により、集団的自衛権の行使を容認すれば、中国は、必ずこれに対する対抗措置を取ると予想しています。それは、日本の予想を超える非常に厳しい対抗措置になるかも知れません。
この点、報道によると、防衛省の附属機関である「防衛研究所」は、4月4日、東アジアの安全保障情勢に関する年次報告書=「東アジア戦略概観」を発表し、日本と中国の関係などを念頭に「自国の安全を高めようとする国防力の増強や対外的な安全保障関係の強化が、他国にとっては脅威や懸念と見なされ、対抗的な政策を引き起こす」と分析しています。さらに、「結果的に軍事的緊張関係が高まり、安全保障環境の悪化を招く」という悪循環の危険性を指摘したうえで、「首脳レベルの戦略対話」や「危機管理メカニズムの構築」「防衛交流」といった外交交渉の必要性を強調しています。
シビリアン・コントロールに関する古典的名著である、「THE SOLDIER AND THE STATE」の中で、SAMUEL P. HUNTINGTONは、本来の、あるべきPROFESSIONAL SOLDIER(職業軍人)は、軍事に関し、好戦的ではなく、抑制的に行動すると述べていますが、中国の対抗的措置を予測し、外交交渉の必要性を強調した、防衛研究所の今回の報告は、その意味で、まさにPROFESSIONAL SOLDIERの名に値するものであると思います。彼らを、ぜひ国会に呼んで、意見陳述させるべきであると思います。
外交的手段による対立関係の解消が可能であるにもかかわらず、また、実態面において、差し迫った、切迫した状況が存在しないにもかかわらず、日本が前のめりに集団的自衛権の行使を容認すれば、かえって中国の厳しい対抗措置を誘引し、結果として、日本の国家安全保障を大きく損なう危険性があります。
7. 国家安全保障という大きな議論の下、平和の維持と国民の生命・権利・自由を守るという目的を実現するために、まず外交を通じた問題の解決を徹底的に追求し、その上で、それを踏まえて、あくまでも、万一の場合に備え、客観的に戦力のバランスを保つという位置付けの下で、集団的自衛権の議論を冷静に行なうことが大切だと思います。
参考資料:
1. 「馬英九総統が『3つの主張』、中国本土と日本に東シナ海問題の『棚上げ』呼び掛ける―中国メディア」2014年2月27日付XINHUA.JP配信記事
2. 「民主党議員団が訪中 元外相らと会談」2014年3月21日付日本経済新聞記事
3. 「公明代表『外交努力が先だ』 集団的自衛権の行使容認」2014年4月4日付産経新聞記事
4. 「『海外での武力行使に…』集団的自衛権、公明は慎重」2014年4月14日付テレビ朝日系(ANN)配信記事
5. 「防衛研『防衛力増強が相手の対抗策引き起こす』」2014年4月5日付TBS(JNN)配信記事
6. 「東アジア戦略概観 2014」防衛省 防衛研究所
(国防力の増強や対外的な安全保障関係の強化が、他国の対抗的な政策を引き起こす危険性については、「序章 2013年の東アジア」の中に、その記述があります。)
註記: 上記の見解は、私個人のものであり、いかなる団体あるいは政党の見解をも反映するものではありません。