父は7月の誕生日で、91歳になった。
母は8月生まれで、今年87歳になる。
二人とも昨年5月、一緒に介護施設へ入った。
昨年9月、私は両親に会うために帰省し、
弟の車で二人が暮らす施設へ行った。
ガラス越しだったが、15分ほど両親と話をした。
そのあと二人は、施設のベランダから見送ってくれた。
施設の近くには雑木林があり、蝉が鳴いていた。
帰るとき、弟の車の中で、ビル・エヴァンスのアルバム、
『From Left to Right』を聴いた。
1曲目の「これからの人生」が、胸に沁みた。
両親は、いつかこの施設で人生の終わりを迎える。
そして自分も、20年後、もし生きていれば、
どこかの施設にいるのかもしれないな。
車の中で「これからの人生」を聴きながら、
そんなことを思った。
今年の晩夏は、蝉の声を聞くたびに、
「これからの人生」の切ないメロディが、
私の頭の中に流れてきて、ベランダから手を振る
両親の姿が思い浮かぶだろう。 🦋