『レ・ミゼラブル』4★

英題:『LES MISERABLES』@Rollberg Kinos

監督:ラジ・リ

製作国:フランス(2019)

http://lesmiserables-movie.com/

 

現在は犯罪多発地区の一部となっているパリ郊外のモンフェルメイユを舞台に、現代社会が抱えている闇をリアルに描いたドラマ。2019年カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。監督・脚本は、本作が初長編作品のラジ・リ監督。

 

世界中が憧れる花の都パリからたった十数キロ離れた町での話。モンフェルメイユで生まれ育ち、今でもモンフェルメイユで暮らす監督自身の体験を基に、現在社会に潜む問題を鮮明に描き、観るものに極度の緊張感を与えた。とても一言で”ギャング映画”とは表せない。

 

日々巻き起こる黒人とジプシー間の揉め事、仲裁する警察官も敵視され誰も統率できない状態。権力者の横暴は留まることがない。

 

奮闘の末、ついに事態が終息を迎え一日の終わりが近づく。柔らかな夕日が差し込み、穏やかな音楽が流れ、映画始まって初めて心に平穏が訪れた。しかし、その安堵は最後の最後で再び緊張に変わった。

 

誰より怒っていたのは子供たち。不平等な環境で育ち分別を知らない彼らの攻撃に見境はない。止まらない怒りの連鎖。激しい感情のぶつかり合い。報復の応酬。そして最終最後のターンで、初めて”信頼”という感情に小さな火種がついた。

 

最後の瞬間まで、エンドロールの直前まで、文字通り息をのんだ。ものすごい疲労感。これが本監督の初長編作品とは、驚きを隠せない。次回作も期待大。しかしこの作品で燃え尽きてはいないか心配。そのぐらいの疲労感。