『Domangchin yeoja 』3.5★

英題:『The Woman Who Ran』

部門:コンペティション(@Friedrichstadt-Palast)★銀熊賞(監督賞)

監督:ホン・サンス

製作国:韓国

https://www.berlinale.de/en/programme/programme/detail.html?film_id=202011933

 

結婚してから一度も夫と離れて過ごしたことのない女性が、夫の出張中に3人の知り合いに会いに行く物語。『それから(2017)』のホン・サンス監督の24作目。主演は彼の作品の常連であり、恋人でもあるキム・ミニ。

 

ホン・サンス作品は独特な間と会話と長回しとカメラワークが特徴。その場の空気をじわじわと画面からこちらに侵食させる。また今回の作品にはズームイン・アウトが多用されていた。どうにも一昔前のアメリカ映画を彷彿とさせるが、ここまで頻発すると次はいつかと待ってしまう。

 

こちらのデジャブかと思い違いするほどに、会いに行った3人に同じ話を繰り返す。結婚二年目の夫に愛されておりとても幸せである、と。3日目には元恋人がイベントを開催していると知ってた上で知人の映画館を訪れる。そこでようやくタイトル『逃げた女』を思い出した。彼女は平穏な幸せに物足りなさを感じ、何かを求め外に飛び出した。ここまでのストロークがなんとも秀逸。

 

主演のキム・ミニを初めて観たのは、なんとなくWOWOWで観たクライム・アクション作品。内容はいまいちだったが、正統派美人とは言えない彼女になぜか釘付けになり、一挙手一投足に目が離せなかった事を覚えている。今では彼女の不思議な魅力をホン・サンス監督が十二分に引き出す。

 

今回コンペの中で一番に楽しみにしていた作品。ヨーロッパ民には日本以外のアジア作品はまだ認知度が低く、上演直前までチケットの空きがちらほら。ここでは長年小津安二郎、北野武、最近では言わずもがな是枝さんが崇められているが、韓国映画や中国映画はあまり人気がない。しかしながら映画業界からの評価は高い。今回もなんと、銀熊賞(監督賞)受賞。とても嬉しい。