『Exil』3.5★

英題:『Exile』

部門:パノラマ(@Zoo Palast 1)

監督:Visar Morina

製作国:ドイツ、ベルギー、コソボ

https://www.berlinale.de/en/programme/programme/detail.html?film_id=202003279

 

ドイツに住むコソボ出身の男性Xhaferhが職場で陰湿ないじめにも屈せず立ち向かう社会派ドラマ。

 

上司はメーリングリストからXhaferを除外し、わざと会議の時間変更を知らせず、同僚から豚肉は食べられるのかと聞かれ、ドイツ人である妻の義母はいつもよそよそしい態度。海外で暮らす人なら少なからず身に覚えがあるだろう。

 

しかし話が進むにつれて思い直す。いじめというがどれも些細なことばかり。本当に出身地による差別なのか。単に上司とは折が合わず、無知な同僚が無神経な質問をし、義母は人付き合いが苦手なXhaferを敬遠しているだけでないのかと。そう思い直すとたしかにXhaferは被害者意識が強いタイプ。自分は同じコソボ出身の清掃婦と浮気しているにも関わらず、帰宅して家の便座が上がっているだけで妻を咎める身勝手な男。職場いじめという触れ込みから、先入観を持って観ていただけではないかと。

 

作品自体はどちらかに寄せるように作られてはおらず、明確に答えを出しているわけでもない。捉え方は人それぞれだし、感じ方も人それぞれ。いじめられた本人がいじめだと感じればそれはいじめなのだろう。ただ外国人が感じる疎外感は、時に被害妄想でもある。それが募ると相手にも伝わってしまい、徐々に距離が開き悪循環になる。

 

差別ではなく思い込みじゃないかな、そう思わせる大きな理由として本作はドイツ映画。私がここベルリンに来て感じた居心地の良さ。他のヨーロッパ諸国のコスモポリタンな大都市と比べて、外国人を異質なものとして見ることは稀だった。コロナが流行りそうなこの時期に空港からスーツケースを持ったアジア人に対しても、敬遠することも好奇な目で見ることもなかった。作品中にあった差別ともとれるセリフにも会場のドイツ人からは笑いが漏れていた。差別なんて意識が皆無なのかと。

 

私がベルリン映画祭に浮かれすぎて過大評価してるだけか。はたまた、やはりホロコーストの教訓が人々の根底にあるからか。